湘南ライナー日記 SHONAN LINER NOTES

会社帰りの湘南ライナーの中で書いていた日記を継続中

はだしのゲン初版を読む

2009-08-24 23:41:21 | 湘南ライナーで読む


高校生の頃の愛読誌『少年ジャンプ』に連載されていたものが、政治的背景があって集英社からではなく汐文社からコミックスとして発売された。これは、その初版本(昭和51年)である。
『はだしのゲン』(中沢啓治著 汐文社刊 当時380円)は、広島の爆心地近くで被爆した中岡元の戦前・戦中・被爆・そして戦後の人生を描いた壮絶なドラマだ。
すごいのは、著者自身の体験が元になっているところ。しかも、ビジュアルだから活字よりも迫力を伴って伝わってくる。とはいっても、写真ほどのリアルさはないので、どうにか受け入れることができるのだ。
原爆の悲劇が中心に据えられているものの、語られるのは戦争や戦争によって翻弄される人間の弱さ、身勝手さ、醜さ、悲しさといったエピソードだ。戦場は、兵隊が戦う最前線だけではなく、一般市民の生活の場でもあったことがよくわかる。
しかし、戦争の悲惨さだけで終わらないのが、この物語のポイント。主人公ゲンが、父親ゆずりの誠実さと頑固さを発揮するのだ。そして、持ち前の明るさと前向きさでたくましく生き抜き、それどころか関わる人々に勇気を与えていく。
当時は、戦争がどうこうではなく展開の面白さだけで夢中になって読んでしまったような気がする。でも、やはりこれは戦争を描いた作品だと思う。終戦してもなお人間が戦争に翻弄され続けるドラマだ。
何十年ぶりかで読み返してみて、それがよくわかった。