お一人様用のテーブルが4卓ほどある。
その一つに案内され腰をおろす。すると、その前を人が行き来するたびに、明らかに床が波打っていた。
それでもみんな、そんなことなど気にも止めず、食べたり、飲んだり、話したり、新聞やマンガを読んだり、自前のゲーム機やケータイに集中したり。まるで、揺れるのが当たり前であるかのように。
ここは、知る人ぞ知る『九段下ビル』(昭和2年築)で、神保町交差点から靖国通りを西に向かい、首都高のすぐ手前右に建つ存在感たっぷりのビルで、裏側を見るとまるで廃墟のような建物。
僕が昭和の揺れを感じているのは、その1階にある『カリーナ』という喫茶店だ。ビルと共に開業したかは不明だが、足を一歩踏み入れた途端、そこが昭和遺産であることがハッキリと感じ取れる。
となると、頼むのはナポリタンしかないでしょう。3日連続(笑)。たぶん僕の血液はもう赤く染まっているはず。いや、もともと赤なので、ケチャップみたいに赤くドロドロになっているはずだ。
結論から言いますと、この3日で食べた中では断トツの昭和度の高さ。懐かしさ326%(何に対してだかわかんないけど、とにかくそんな印象)。
まあ、店内の雰囲気や、とにかくビルの古さに負うところは大きいのは確かだけどね。
でも、ハネそうでハネないネトネト感、麺の焦げ目もいい具合。また食べたい度481%だ(またかい!)。
ところが、このビル、表にはネットがかかり、しかも端の方は既にシートに覆われており「新築工事」の看板も見える。
となると、この雰囲気でこの味を楽しめるのも、そう長くないということか。
建物は、かなり傷んでいるようで、耐震強度も基準値に満たないのかもしれない。なにしろ、人が歩くだけで、揺れるくらいだからね(笑)。
入口は普通の喫茶店ですね。2階に「写植 版下 デザイン トレス」の文字が…。そういえば、写植屋さんって、あったなあ。
関東大震災の後、燃えない町屋を目指し始まった事業。ところが、共同化が定着せず、この1棟で終わってしまったという。
共同なので、このような普通のお宅も入っているんですね。
裏側に回るとこんな感じ。とてもビルには見えません(笑)。
ちなみに、カリーナのナポリタンは、ミニサラダ、味噌汁、ドリンクが付いて800円!
どんなものであっても味噌汁が付いてくるのが、昭和遺産のお店の基準ですかね。