あるくみるきく_瀬戸内シーカヤック日記

瀬戸内を中心とした、『旅するシーカヤック』の記録

『芸予ブルー』_テーマカラー of 印象派_”瀬戸内シーカヤック日記”

瀬戸内シーカヤック日記: 島根半島&しまなみ海道_3泊4日、日本海&瀬戸内海はしご旅(1)

2010年08月12日 | 旅するシーカヤック
2010年8月9日(月) 連休3日目となる月曜日の朝。 ニヤックを積んだアテンザワゴンは北へ向かう。 今朝の天気予報によると、島根では今日明日とも、沖縄や九州辺りに居る台風の影響はほとんどなく、波も0.5mと良さそうな感じ。

『じゃあ、行ってくる。 今日は猪目にキャンプじゃけど、いつものように明日以降の予定は未定。 11日に帰るかもしれんし、12日か13日になるかもしれん』 『了解。 気をつけていってらっしゃい』

今回は、ここ数年、毎年夏休み恒例となった、島根半島_猪目海岸キャンプツーリングである。
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ここ数年で何度も通った猪目海岸。 まだ早いので、海水浴客は誰もいない。
まずテントを張り、寝床を確保すると、シーカヤックを浜に下ろす。 その頃には、最初の一組がやって来て、浜にタープを張りはじめた。
今朝は少し東寄りの風はあるが、漕ぎ出すのに問題はなさそうだ。
 
小さな湾を出ると、右手には多くの風力発電施設が並ぶウインドファームが見えてくる。 プロペラを見るとしっかり回っており、東寄りの風がそこそこ吹いている事がよくわかる。
 
海は、日本海らしい透明で深い青。 まずは右手の岸沿いを漕ぎ進み、途中でUターンして、猪目の隣にある漁港へも、少しだけ足を延ばしてみる。
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今日の目的はシュノーケリング。
 
良い感じの浜にシーカヤックを引き揚げると、水中眼鏡とシュノーケルを着け、PFDを着用して、プカリプカリと海中散歩。 フグ、ギザミ、そして体長10cm位の小さなイカの子供。

透明な海の上を漂っていると、聞こえてくるのは自分の吐く息と波の音だけ。 華やかな熱帯魚や大きな魚はいないけれど、楽園気分をたっぷりと堪能する事ができる。 まるで夏を独り占めした様な贅沢なひととき。 ああ、これぞ夏休み!
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海から上がり、再びシーカヤックを漕いで海水浴場へと戻る。

荷物を運んでいると、地図を持ったカップルが近寄ってきて、男性の方が私に、 『あのう、地元の方ですか?』 私は苦笑いしながら、『いいえ、違うんです』

去年の夏もこの浜でキャンプしているとき、巡回に来た警察官に 『地元の監視員の方ですか?』 と聞かれたことがある。 しかも二人続けてである。
真っ黒に日焼けした坊主頭に漁師顔。 どうやら自然に、地元の空気に溶け込んでいるようだ。 なんだかうれしいな。
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さて、そろそろお昼ご飯にするか。 いつものように、地元のバスで出雲大社の近くまで買い出しに行くつもり。
バス停まで行き、時刻を確かめて一旦浜に戻ろうとすると、家の日陰に座っていたおばあちゃんが、『バスに乗るん?』
『ええ、出雲まで買い出しに行こうと思うて』 『じゃあ、12時8分のバスがあるよ』 『そうみたいですね。 それに乗ろうと思うてます』
『どこからきたん』 『広島の呉です。 今日は浜でキャンプなんです』

車から、キャンプツーリングの時の買い出しの必需品であるソフトクーラーバッグを取り出し、再びバス停へ。
バス停の所に立っていると、反対側に居たさっきとは別のおばあちゃんが、『バスに乗るん?』 『ええ、12時8分の出雲行きへ』 『じゃあ、こっちの日陰で待っときんさい。 バスはあっちから来てこっちに行くんじゃから、乗るのはこっち側』 『はい。 ありがとうございます』

『それにしても暑いですね』 『ほんまよ。 お盆頃にはたいがい涼しゅうなるんじゃけど、今年はほんまに暑いねえ。 私しゃあ、もう80近いけど、こんなに暑いのは珍しいよ』
『どうですか? この辺りは昔と変わりました?』 『いやあ、なにも変わらんよ。 ただ人が減っていくだけ。 そしてバスの便も減りよる』

『最近、鹿はどうですか? 前はよう出てきて、お盆の時期にはお墓に供えた菊の花を食べるいうて聞きましたが』 『いやあ、花だけじゃない。 野菜もなんもかんも食べてしまう。 でも今はねえ、山に柵を拵えたから、ほとんど出てこんようになったよ。 でも山から大きな石が落ちて柵が壊れたらまたすぐに出てくるんじゃないかねえ』

↑ 鹿の角と顎の骨。

 
そうこうしているうちにバスが到着。 狭い山道を登り、峠を越えると更に狭いクネクネ道を下って行く。 車中では、地元のおばちゃんどうしが会話をしているのだが、独特のイントネーションがある出雲弁で、私にはほとんど聞き取れない。 まるで外国語を聞いているようだ。 こんな雰囲気を楽しめるのも、地元のバスならでは。

出雲大社近くのターミナルに到着。 片道400円である。 帰りのバスは、1時間後。 買い出しの時間は充分ある。
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お昼ご飯に出雲蕎麦を食べようと思っていたのだが、いつも行くお店の前には行列が。 食べ物屋さんの行列がきらいな俺は、すぐに諦め、いつものスーパーへと向かう。

お昼ご飯用の『割り子そば』と夕食の食材、そして必需品のビール/発泡酒を購入。 特にビールは、持参したソフトクーラーに氷と共に入れて特別待遇!
 
昨年もこの『割り子そば』を食べたのだが、さすが出雲蕎麦の地元だけあって、スーパーで売っている蕎麦もレベルが高い。 B級グルメで大満足の私には、充分おいしく感じられる。

ターミナルに戻ると、猪目から一緒に乗ってきたおばあちゃんが居られた。 『え、ずっとここに居られたんですか?』
聞いてみると、出雲市内に用事があるので、このターミナルで出雲市行きのバスに乗り換えるというのだが、まだそのバスが来ていないとの事。 しばらくするとバスがやって来て、そのおばあちゃんは乗って行かれたが、バスの便数が少ないので、猪目に戻るのは夕方5時を過ぎるのだとか。

ということは、このおばあちゃんは、出雲市内に用事がある時は、昼から家を出て戻ってくるまで半日仕事。 しかもそのほとんどがバスに乗っているか待ち時間。
なんという状況であろうか。 週に何度出雲市まで出掛けるのか知らないが、俺なら耐えられないな。 高齢化が進む過疎地域における、自家用車が利用できない高齢者の移動に係る問題/課題をリアルに垣間見たような気がした。
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クーラーの効いたバスの待合室に入り、クーラーバッグから『端麗_グリーンラベル』を取り出す。 もう1時半過ぎ。 腹減ったあ!
お昼ご飯は浜に戻ってからだが、暑い中買い出しに歩いた体が、そして喉が、冷えたビールを求めている。

誰もいない待合室。 『プシュッ』 『いただきまーす』 『ゴクッ、ゴクッ、ゴクーリ』 『グビリ、グビグビ』
氷水でキンキンに冷えたビールは最高だ! まさに真夏の楽園、至福の一時。 拝みたくなるくらい美味いビールであった。
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バスに乗り、猪目海岸へと戻る。 バスから降りると、最初に声を掛けられたおばあちゃんがまだ日陰に座っていた。

『戻りました。 買い出しに行ってきたんですよ』 『そうね。 ここには店もないからねえ』
『おばあちゃん、ここでなにされよるんですか?』 『ここはねえ、日陰じゃろう。 それに海からの風が吹いてきて扇風機もいらん。 そしてこっち側は山と空の眺めがええ。 通る車のナンバーを見て、ああ、福岡から来とる、広島からじゃ、いうて思いよりゃあ飽きることもない。 じゃけえ、ここで一日涼みよるんよ』

『なるほど。 そりゃあええですね。 確かにこっちは眺めがええ』 『そうじゃろう。 それにあのV字の所の下がちょうど出雲大社になるんよ。 昔、出雲大社で火事があった時には、ちょうどあそこのV字の所から火と煙が上がりよった。 それから、ああ、あの下に出雲大社があるんじゃね、いうて分かったんよ』
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浜に戻り、コットに腰掛け、ビールを飲みながら割り子そばのお昼ご飯。
  
食事を終えると、海で体を冷やしたり、散歩をしたり、コットに寝転んで音楽を聴いたり、のんびりまったりのサマーバケーション。
***
2010年8月10日(月) 朝、テントの中で目が覚める。 さすがに朝晩は多少涼しく、メッシュテントだと寝苦しくはなかった。
iPod-nanoで落語や音楽を聴きながら、日の出を待つ。
 
5時を過ぎ、最新の天気予報を確認すると、台風の影響で今日の夜から波が高くなり、所によっては雨や雷の予報。 うん、猪目でのキャンプはこの一泊だけにしよう。 朝のうちに、ちょっぴりお散歩ツーリングを楽しみ、それから別の場所に移動する事にしようか。

夜明けとともにテントから這い出し、荷物を片付け、コットを畳み、テントをしまう。 準備完了。
シーカヤックを浜に下ろし、曇りがちの中、朝の海に独り漕ぎ出した。
 
今日は、湾を出て左手の海岸線に沿って進む。 いくつもの海蝕洞をウオッチしながら、朝ののんびりお散歩ツーリング。 1時間ほど漕いで浜に戻り、シーカヤックを水洗いしてカートップした。 シャワーを浴び、着替えて準備完了。

さて、今日はどこ行こう?

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