あるくみるきく_瀬戸内シーカヤック日記

瀬戸内を中心とした、『旅するシーカヤック』の記録

『芸予ブルー』_テーマカラー of 印象派_”瀬戸内シーカヤック日記”

瀬戸内シーカヤック日記: 広島市現代美術館_都築響一と巡る社会の窓からみたニッポン

2010年07月04日 | 旅するシーカヤック
2010年7月4日(日) 梅雨の休日は、本を読んだり、DVDを見たり、海道具を片付けたりと、普段海に出ている時には出来ないことをするチャンス。 でもたまには、もっともっと知的好奇心を刺激し、満たしてくれるものにも出会いたい。

そうは言っても、東京のような大都会と違って、地方都市の広島では美術館や博物館も少なく、また歌舞伎や寄席などの伝統文化に触れる機会も極々限られているのが実情である。
海で、そしてシーカヤックで遊ぶには、『瀬戸内海』という最高のロケーションに恵まれているのだが、こと文化面では地方都市、田舎である事を痛感させられる。
***
今日は、『広島市現代美術館』で興味深い企画展が行われているというので、朝から妻と広島へ。
 
天気予報は外れ、蒸し暑くはあるが、晴れ間も覗く良い天気。
 
『都築響一と巡る社会の窓からみたニッポン』 写真撮影もOKという、なんとも太っ腹な企画展である。
 
<以下、引用>
『珍日本紀行』
温泉、郷土料理、地酒。 これが現在の旅行メディアのすべてだ。 フロとメシ。 かつては旅することの添え物でしかなかった要素が、いつから主役にのさばるようになったのか。 有名な温泉も地酒もなく、メディアの感心からこぼれ落ちた地方はただ寂れゆくのみ。
(中略)
結局、『秘境』は遠くじゃなくて君のすぐ近くにあるってことだ。
<引用終り>
 
都築響一氏のこの文章は、とても心に響き、共感するとともに、自分のブログの旅行記を振り返ると恥ずかしくも感じてしまう。
『うんうん、実際、瀬戸内海だってある意味秘境だよなあ。 本多勝一の北海道探検記じゃあないけど、瀬戸内海探検記が書けるくらいだ。 でも、温泉、郷土料理そして地酒。。。 うーん、俺の場合はB級グルメにディープな温泉、安酒ではあるけど、やっぱりまだまだフィールドワーカーとしての修行が足らんなあ』

野にある者、フィールドワーカーが見るべきモノの本質は何なのか? 日本という国はいったいどんな国なのか? 自分達が住んでいる地方って、いったいどんな場所なのか? 今って、本当はどんな社会なのか? 日本人って、実はどんな生活をしているのか?
 
都筑氏は、日本の各地にあるB級テーマパークや賃貸アパートに住む人々、変人とも言えるくらいの超個性的な人々、デコトラ/アートトラック、暴走族の改造バイク、日本独特の文化とも言えるラブホテル、カラオケスナック、秘宝館などなど、メジャーなメディアにはなかなか取り挙げられる事のないディープな、しかしある意味実にアーティスティックな世界に光を当て、彼らから本音を聞くことでその本質を炙り出し、そして展示を見る人々に静かに問いかけをしてくる。

<以下、引用>
『そしてどこにも住まないこと』
百万円の家賃を払うよりも、十万円のアパートを世界の十都市に持つ方がクールだ。 人生をたかが一軒の家に注ぎ込むよりも、洋服を着替えるように家も住み替えるほうが楽しい。 どこかに永住しなくてはと思うから、人生は複雑になる。 定住するのではなく、移動しつづけること。 どこにも住まないために。
<引用終り>
 
企画展では、『遊行するこころ』、『巣ごもりするこころ』、『我が道を行くこころ』、『歌い踊るこころ』、『かぶくこころ』、『闇に向かうこころ』というテーマ別に写真とセットになった文章が展示されており、どれも興味深いものである。

この企画展を見て感じるのは、やはり面白いのは『人そのもの』だということ。 これこそ(都筑さんには怒られるかもしれないが)、現在の『宮本常一』、そして『あるくみるきく』じゃあないか。 本当に素晴らしいの一言である。

今回は、いきなり頭をガツーンって殴られたほどの衝撃を受け、そして感動した。 俺がやっている『あるくみるきく』なんて、やっぱりサラリーマンカヤッカーの趣味レベルに過ぎないことを痛感させられた。

思いも掛けず、ディープでダイナミック、そしてめくるめく都筑ワールドをたっぷりと堪能させていただいた梅雨の休日。 いやあ、来て良かったなあ!

*今回の写真はすべてiphone3GSで撮影した。 決して美しいとは言えないがブログ用には十分だなあ。

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