あるくみるきく_瀬戸内シーカヤック日記

瀬戸内を中心とした、『旅するシーカヤック』の記録

『芸予ブルー』_テーマカラー of 印象派_”瀬戸内シーカヤック日記”

瀬戸内シーカヤック日記: 似島日帰りツーリング_みなとや食堂と駄菓子屋さん

2009年02月28日 | 旅するシーカヤック
2009年2月28日(土) 不景気な風が吹き荒れている今年は、あまり遠出をせず、地元でこれまであまりキャンプしなかったり、ゆっくり訪れたことのなかった場所をツーリングコースとして発掘して行くことをテーマに、『あるくみるきく_旅するシーカヤック』を続けている。
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今日の目的地は『似島』 広島湾に浮かぶ、『安芸の小富士』とも称される周囲16kmほどの島。
十年ほど前、シーカヤックの日帰りソロツーリングで訪れ、一周したことがあるが、当時は『あるくみるきく』なんて世界は知らなかったので、島の南側の静かな浜でお昼ご飯を食べ、ゆっくり休憩して帰ってきたことを覚えている。

今回はキャンプ道具も積んで行く事にした。 もし集落の近くにキャンプできる浜があれば、今回はゆっくりと歩いて見たいものである。
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坂にある海水浴場から出艇。 テントやシュラフ、水も積み込み、準備完了。
 
峠島に向かって漕ぎ進む。 ここは、広島と江田島、広島と松山を結ぶフェリーや高速船などが頻繁に通る本船航路。
事前に時間をチェックしておいたので、本船が少ない時間に無事漕ぎ抜けることができた。

峠島を越えると、もう似島は目の前だ。 海は穏やか、日も差して気温も上がってきた。 広島名物の牡蠣筏の間を縫うように、快適なパドリングで漕ぎ進む。

船着き場のある集落を越え、少し南下すると広い浜があったので上陸。 近くにおられた方に、『すみません、ここにフネを置いてもいいですか?』と伺うと、『ここは、漁協があさりを育てよるけえ、掘っちゃあいけんけど、フネを置くくらいならええんじゃない』 そうか、これはキャンプは難しいかな?
『テントは張っていいんでしょうか?』 『どうかのう、漁協が管理しとるけん、分からん』 残念だが、カヤックツーリングでのトラブルだけは避けたい。 今日はキャンプは諦めよう。

『ところでここ、食堂がありますよね?』 『うん、船着き場のすぐ前にあるよ』 『ありがとうございます』
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PFDとスプレースカートを脱ぎ、海沿いの道をテクテクと歩いて集落へ向かう。

船着き場の目の前に、『みなとや食堂』はあった。 『うーん、これは私の好みの雰囲気だ。 好いかも!』

ガラリと引き戸を開け、暖簾をくぐって店に入る。 まさに、私のストライクゾーンど真ん中の食堂である。
先客は3人。 地元のおじいさんが、おでんを肴にお酒を飲んでいる。 後は女性の二人連れ。 
 
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『すみません、中華そば一つもらえますか』 そう、ここの食堂は、中華そばがおいしいと聞いていたのだ。
 
おでんも食べてみるか! 『おでん、何があります?』 『ここきて、好きなのを皿に取りんさい』 『はい』
じゃあ、スジに玉子。

中華そば。 うん、美味い。 スジ、あっさり目の味付けだが、柔らかく煮込まれていておいしい。 キャンプだったら、おでんを肴にビールを飲んで、のんびりまったりと過ごしたいものだ。
『ごちそうさまでした。 中華そば、おいしかったです』 するとおばちゃんはニコニコしながら壁に貼ってあるチラシを指差し、『ほうじゃろ。 前は、テレビが取材に来たけえねえ』 『そうですか。 おでんのスジも柔らこうて美味かったです。 また来ます』
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少し時間があるので、集落を散策。 まずは、夷神社へお参り。

港に戻る途中、ふとある店の中を覗き込むと、懐かしいものが。。。
 
そう、懐かしい『駄菓子屋さん』である。 『こんにちは』と店に入ってみた。
木の枠とガラスでできたお菓子を整理する入れ物が、なんとも良い雰囲気を醸し出している。 出て来られたおじいさんに、『これ、いいですねえ』と言うと、『もう、50年位になるかねえ。 結構長く保つもんじゃね』

『駄菓子、懐かしいですねえ。 これとこれとこれ下さい』 『はい、じゃあ170円』
お金を払いながらふと見ると、プラスチックのケースに入った長い棒のようなお菓子が。 『そこにあるのは何ですか?』 『これは、チョコの付いたパン』 『いくらですか?』 『42円』 『じゃ、それも下さい』
すると、容器の蓋を開けて『はい、自分で取って』 うーん、なんとも懐かしいこの感じ。 しばし、子供時代に戻ったような気分。
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『ここも、子供は減ってるんですか?』 『そう、若い人はみんな高校を卒業したら出て行く。 仕事もないし、人は減るばっかりじゃ』 『昔は、ガット船(石や砂利の運搬船)で賑おうた言うて聞いとりますが』 『そうよ、前はズラーッとならんどったよ。 今も、何隻かおるじゃろ』 『ええ、3、4隻停まっとりましたね』

『砂利船も、みんな千葉の方へ行ってしもうたんよ』 『この前は、メインストリートじゃけど、空き家ばっかり。 この隣も、あそこも、みんな空き家』 『ここにはフリースクールいうのがあって、それで外から子供は来よる。 ここに来たら、みんな元気になるそうな』 お店の中で、しばし島のお話を聞かせていただいた。

『どうもありがとうございました。 また遊びにきます!』 『なにもない静かな島じゃが、まあゆっくり見て行きんさい』
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集落を抜け、海沿いの道を戻り、浜へ。 さあ、出発だ。
おだやかな瀬戸内海を似島に沿って反時計回りで漕ぎ進む。 最高のツーリング日和。
 
似島の南岸から、江田島の北岸に漕ぎ渡り、岸沿いを進む。 切串港に出入りするフェリーに注意して屋形石を越えると、ここからは再び本船航路。
左右を常にワッチしながら、ピッチを上げて対岸まで一気に漕ぎ渡る。 岸に近付くとバウを左に振って岸沿いを北上。
無事に、海水浴場まで戻ってきた。
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カヤックを片付けていると、一人の方が歩いて来られた。 見ると、PFDを着けておられる。
『こんにちは』 『あっちで漕いでたんですが、カヤックが見えたんで来てみました。 なんか、ホームページで見たことがあるフネですね』 『はい、ブログやってます』
因島、白石島、島根半島、蒲刈、宮島などで、偶然出会ったカヤッカーの方々から、これまでも何度か、ブログで見たことがあると話しかけられたことがある。 嬉しいことである。
『今日は、似島でキャンプしようと思って行ったんですが、残念ながら集落の近くにテントを張れる浜がなかったんで帰ってきました』 『それは残念でしたね。 これから他に行ってキャンプですか?』 『今日は、家に帰ります』
しばし会話を交わし、『じゃあまた。 どこかでお会いできるといいですね』
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キャンプツーリングにはならなかったけれど、良い雰囲気の食堂と駄菓子屋さんを知ることができ、また様々な出合いもあって、充実した一日であった。
さあて、次はどこを開拓するかな!

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