この世界の憂鬱と気紛れ

タイトルに深い意味はありません。スガシカオの歌に似たようなフレーズがあったかな。日々の雑事と趣味と偏見のブログです。

結末が気に入らなかった『コンクリート・ユートピア』。

2024-01-11 22:39:48 | 新作映画
 オム・テファ監督、イ・ビョンホン主演、『コンクリート・ユートピア』、1/8、イオンシネマ筑紫野にて鑑賞(ハッピーマンデーにつき鑑賞料金は1100円)。2024年3本目。

 1/8は『コンクリート・ユートピア』を観に行ったのですが、前日まで何を観るか、すごく迷いました。
 候補は『コンクリート・ユートピア』と『BLOODY ESCAPE -地獄の逃走劇-』です。
 一時は「正月は重い映画を観たくない」という理由で『BLOODY ESCAPE』に傾いたのですが、『BLOODY ESCAPE』はイオンシネマ佐賀大和まで観に行かないといけなかったので、イオンシネマ筑紫野で上映されていた『コンクリート・ユートピア』を観ることにしました。
 これで『コンクリート・ユートピア』がつまらなかったら、選択にミスった!ってことになるのですが、幸いそうはなりませんでした。
 『コンクリート・ユートピア』、面白かったですよ。

 一言で言えば子どもたちが主人公ではない、そしてタイムスリップの起きていない『漂流教室』みたいな映画でした。
 『漂流教室』みたいな映画でした、と言ってる割には『漂流教室』を読んだのはずいぶん前のことなので細部に関してうろ覚えなのですが、実際そんな感じです。
 『漂流教室』はタイムスリップによって学校ごと荒廃した未来の世界に行った子供たちが極限状態の中でサバイバルをするというお話ですが、『コンクリート・ユートピア』は大災害によってたった一つのマンションを除いてすべて崩壊した世界でマンションの住人たちが極限状態の中でサバイバルをするというお話です。
 その崩壊っぷりはすさまじく、テレビやラジオといった放送網はもちろん、あらゆる通信機器が使えません(実際通信機器を使うシーンはないですが、使えるなら使っているでしょう)。
 救援隊が来る気配もなく、いったいどれだけの規模の災害が起きたんだよ、と言いたくなりました。
 そんなわけで災害自体はあまり現実味がありませんでしたが、極限状態における人間の行動にはリアリティがありました。

 最初マンションの住人たちは非住人をマンションから追い出すことにするんですよ。
 正直、これはわからないでもない選択です。
 何しろ食料も日用品も充分にはない状況ですから、どこかで線引きをしなくちゃいけません。
 マンション内にある食料はマンションの住人のものであるという理屈はある意味正しいと思います。
 しかしマンション内の食料が尽きた後、彼らは外の世界に食料を求め、倒壊した食料品店から食料を強奪し、その際店主を撲殺してしまうのです。
 マンション内にある食料がマンションの住人たちのものであるなら、食料品店の中にある食料はその店主のものでしょう。
 事ここに至って彼らに正義はありません。
 彼らはどこで間違えたのでしょうか。
 非住人をマンションから追い出すべきではなかったのか。
 考えても答えは出ません。

 途中まではすごい映画だな、と思って観ていました。
 ただ、結末がちょっと気に入らなかったかな。
 最後はマンションから命からがら逃げだしたヒロインが見知らぬ人からおにぎりを恵まれ、極限状態でも人は助け合わなくちゃいけないよね、みたいな幕引きなんですよ。
 いやいやいや、そもそも食料が絶対的に足りないからこそ奪い合いや殺し合いが起きたのに、実は食料は(見知らぬ人がおにぎりを恵んでくれる程度には)ありました、というオチは受け入れられないって!
 見渡す限り荒廃したあの世界で炊き出しが出来るほど米があるとはとても思えないのですが…。

 結末が個人的に気に入りませんでしたが、全体的には見応えのあるサバイバル映画でした。
 ただ、、、今さらながらですが、よく能登半島地震が起きた直後にこの映画を公開したなって思います。
 あまりに直後過ぎて、この映画を公開したら問題があるかもしれないとは関係者は誰も思わなかったんでしょうね。
 倒壊した建物の描写が全編に渡ってあり、能登地震の現状を想起させるので観に行くにはそれなりの覚悟が必要かもしれません。

 お気に入り度★★★☆、お薦め度★★☆(★は五つで満点、☆は★の半分)です。
コメント
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