この世界の憂鬱と気紛れ

タイトルに深い意味はありません。スガシカオの歌に似たようなフレーズがあったかな。日々の雑事と趣味と偏見のブログです。

13番目の物語。

2009-01-31 22:26:47 | 読書
 ダイアン・セッターフィールド著、『13番目の物語』、読了。市立図書館蔵書。

 ダイアン・セッターフィールドという名前に聞き覚えのある人はいないでしょう。
 それも然り、本書が彼女の処女作なのですから。
 しかし、覚えておいて損はないと思われます。いずれ彼女の名前は世に知れるはずです。
 そう思わせるだけのものが本書にはありました。

 父親の経営する古書店を手伝いながら、世間の目から隠れるようにして暮らしているマーガレットの元にある日、英国で最も著名な女流作家ヴァイダ・ウィンターから自伝の執筆を依頼する手紙が届きます。
 ヴァイダにはいくつもの偽りの生い立ちを語ってきた過去があり、マーガレットは訝りつつも彼女の住むヨークシャーへと向かいます。
 ヴァイダからすべて真実を語るという約束を取り付け、依頼を引き受けることにしたマーガレット。
 そしてヴァイダの口から語られる『13番目の物語』は驚くべきものだった・・・。

 まずは傑作といってよいと思います。
 本書には、例えばカズオ・イシグロの作品に通じる、英国文学特有の格調の高さがあります。それは同時に取っつきにくさでもありますが、実際自分はそのせいで幾度となく挫折しかけました、読み終わった今、その格調の高さはやはり特筆するに値する、そう思います。
 本書はまたミステリーの様相も呈します。
 ヴァイダが幼少のころを過ごしたエンジェルフィールド、そこに潜む邪悪と謎、そして狂気、それらは読む者の興味を捉えて離さないでしょう。
 そして本書は作者であるダイアンと登場人物であるマーガレットとヴァイダ、三人の女性の、本に対する惜しみない愛の結晶でもあります。
 本好きにはたまらない、そして羨ましくもある一冊であることは間違いありません。

 上下巻合わせて3600円するので、おいそれとは購入しかねるとは思いますが、図書館に蔵書であれば是非借りて読んでみて下さい。
 至福の読書体験が出来ること、請け合いです。
コメント (2)

FOREST GHOST。

2009-01-30 23:58:42 | UFOキャッチャー
   
   


 写真はジーンズ地のミッキーマウスのクッション。
 一つ目はワンコインでゲット。ラッキー♪どーせなら柄違いの奴も取るかと思ってコインを再投入、今度はかなりの苦戦。
 よーやくゲットした二つ目は同じ柄でした。はにゃ~。


   


 『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』のバッタもんかと思いきや、別のキャラクターものでした。
 『FOREST GHOST』、直訳すると「森の幽霊」ですね。直訳じゃなくても同じか。
 写真ではよくわからないと思いますが、頭に槍(らしきもの)が突き刺さってます。痛そうです。笑。
コメント

CSI:科学捜査班。

2009-01-29 23:50:04 | 旧作映画
 shit_headさんに薦められて、今さらながら『CSI:科学捜査班』を見ました。ゲオにてレンタル。

 ぶっちゃけいって、まーったく期待していませんでした。
 期待していなかった理由その一、製作のジェリー・ブラッカイマーにいい印象を持っていなかった、というのがあります。
 自分にとってブラッカイマーは、例えば『アルマゲドン』や『パール・ハーバー』、『パイレーツ・オブ・カリビアン』などに代表される、ド派手なだけでろくにストーリーのない、オールスターキャストのトンデモ映画の製作者でしかないんですよね。
 期待していなかった理由、その二、薦めてくれたのがshit_headさんだったから、というのもあります。笑。
 shit_headさんって、何かお薦めのDVDはありますか?と聞いたら、『マウス・ハント』を薦めるような人ですからね。信用置けないことこの上ないのです。
 などといいつつ、『マウス・ハント』は未見なのですが、どなたか傑作だと思う方はいますか?

 とはいえ、機会があったら見てみますね、といった以上は機会があれば見なければいけません。例えそれが口約束であっても、相手が約束したことを半ば忘れていようとも、一度交わした約束は可能な限り守る、それが自分のポリシーなのです。
 そんなわけで最初小説を読みながらだらだら~とテキトーにテレビを眺めていたのですが、、、いつの間にか姿勢を正して見ていました。
 
 前述の通りブラッカイマー製作の映画にはド派手なだけで中身がスカスカというイメージを持っていたので、当然このドラマも似たようなものだろう、そう思っていました。
 ド派手どころか、キャスティングは地味もいいところで、スカスカどころかストーリーは極めて緻密、かつ深く、さらに意外性のあるものでした。

 例えば第一話、地味なキャスティングの中で唯一華のあったのが配属されたばかりのルーキーの女性なんですよね。
 自分はてっきり、そうか、このドラマって彼女が一人前の捜査官になるまでを描いたお話なんだな、って思いました。
 一話目のラストで彼女、撃たれちゃいました。びっくり。
 まぁでも、二話目では奇跡的に一命を取り留め、以後、トラウマを抱えつつも彼女は一人前の捜査官を目指すのだろうな、と思いました。
 二話目のラストで彼女、死んじゃいました。びっくり×2。
 ドラマを見ていて、展開の意外性で驚かされたことって、あんまり記憶にないです。恐るべし、『CSI』。

 いやぁ、全然期待していなかったんですけど、ほんと面白かったです。
 まだ二巻までしか見てないけど、三巻以降も借りるつもりです。
 ブラッカイマーとshit_headさんには信用しなくて申し訳ない!って謝らなければいけませんね。
 でも『マウス・ハント』は見るつもりはないですけどね。笑。 
コメント (9)

最近の日課。

2009-01-28 23:57:28 | 日常
 最近日課になっていること、それはヤフオクのチェックです。

 メインは自分が欲しいと思うDVDの出品情報のチェックですが、既に購入済みのDVD、つまり『ターミネーター2 エクストリーム・エディション』をチェックすることもあります。
 自分はこのDVD(の新品)を4100円で落札したのですが、まったく同じものが10000円もの高値で取引きされることもあったりして、そういうのを見ると、ムフフフフ♪なんてほくそえんだりしちゃってます(性格、暗すぎるよ!!)。

 まぁ自分の性格が暗すぎるのはさておき、ともかく初めてのヤフオクで最高のスタートを切れた以上は、この先も出来れば妥協をしたくないな、という思いがあるのです。

 今、手に入れたいなと思っているのは『未来少年コナン』のDVDです。
 やっぱり、『未来少年コナン』は手元に置いておきたいんですよね。
 コイツ、何でもかんでも手元に置いておきたいと思ってるんじゃないか、と思っている人に一応釈明しておくと、自分はこれまで数え切れないぐらいテレビアニメを見てきましたが、DVDが欲しいと思うテレビアニメは二作品しかありません。『未来少年コナン』はそのうちの一つなのです。

 ところで、放映三十周年を記念して発売された『未来少年コナン30thMEMORIAL BOX』は今でも新品がセブンアンドワイで13230円で買えるのですが、なぜだかヤフオクで15000円以上の値をつけている出品者がいます。これで購入者が現れるようだったら、自分も即セブンアンドワイで購入、ヤフオクで転売するところですが、さすがに購入者は現われませんね。笑。

 新品が13000円なら中古では8000円ぐらいが妥当な価格ではないかと自分としては値踏みをするわけなのですが、ともかく出来るだけ安く美品を購入したいなと思いながら『未来少年コナン』の出品情報をチェックしていたところ、これは、と思うものを見つけました。
 値段は申し分ないし、状態も新品に近く満足でき、早速入札に参加しようとしたところ、、、ヤフオク、5000円以上の商品の入札は有料登録者じゃないと参加できないことに気づきました。涙。
 むぅ、、、ケチなことを言わずにさっさと有料登録をするか、それとも(有料のサービスは利用しないという)ポリシーに心中して入札を諦めるか。
 月々の会費が払えないというわけではないのですが、有料登録をすると歯止めがかからなくなりそうで、それが怖い。
 いろいろと思案しているところです。
 でも、やっぱり『未来少年コナン』は欲しいな~。悩みます。
コメント (2)

ある日どこかで。

2009-01-27 22:07:57 | 旧作映画
 本文に入る前にお詫びとお知らせがあります。
 一昨日更新した『宇宙船ペルセウス号の殺人(後編)』ですが、更新当初は最後の章を白文字で公開していました。
 後編は読んだけれど、最後の章は未読という方は、後編をもう一度最初からお読み下さい。
 紛らわしい公開をして申し訳ありませんでした。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 B級読書家の幸太郎さんが薦めていた『ある日どこかで』を鑑賞しました。ツタヤにてレンタル。

 今まで見た映画の中で最もロマンティックな一本だったと思います。
 ロマンティック、というキーワードに弱い方は必見です。

 その一言(というか二言)でレビューを終わらせてもいいのですが、さすがに短いので自分なりに気がついたことをちょっだけ書きたい思います。

 本作を鑑賞している途中で、このストーリー、どこかで見たような気がするなぁと思ったんですよね。しばらくして気づきました。
 この映画、『ターミネーター』にそっくりじゃん。
 もちろん一方はロマンティックな恋愛もの、もう一方はSFアクションであるわけですが、物語の骨子自体はまるっきり同じように思えます。
 一人の男が写真に写っている女性に恋をし、その女性に会うために時間を遡り、その結果命を落とす、というところが、です。時間を超越した男の無鉄砲ぶりも通じるものがあります。
 自分には『ターミネーター』からバイオレンス描写を一切削ぎ落としたら『ある日どこかに』になり、『ある日どこかに』にシュワルツネッガーが出演したら『ターミネーター』になるような気がします。ならないか。笑。
 ともかく時空を越えた愛、という点ではこの二作品は共通するものがあると思えるのです。
 しかし、ネットで検索してもこの二作品の共通項に言及しているサイトやブログは見当たらなかったなぁ。自分の見方が穿っているとは思わないのだけれど。

 二作品が似ているからといって、それがパクリだとか、問題があるとか、そういうことを言ってるわけではないのです(ちなみに製作年は『ある日どこかで』が1980年、『ターミネーター』がその四年後の1984年)。
 自分が言いたいのは、『ある日どこかで』というどちらかといえば地味な小作品が、その後製作された、《時間》をテーマにしたSF映画に対して多大なる影響を与えたのだろう、ということです。
 二作品が似ているかどうかは人によって判断が異なると思いますが、そのことは断言して間違いないと思います。
 そういった意味では『ターミネーター』ファンも必見の映画といえるかもしれません。
コメント (2)   トラックバック (1)

初めてのAmazon、完結編。

2009-01-26 21:11:28 | インターネット
 土曜日、雪の吹雪く中、初めてのAmazonで発注した『ジャイアント・ロボ THE ANIMATION 地球が静止する日 CUSTOM COMPOSITE BOX』を配達指定したコンビニまで引取りに行ってきました。
 自宅配送の方が都合がいいといえば都合がいいんですが、家の者に受け取りを頼むのが面倒というのがあったので、仕事の帰りにでも自分が受け取りに行った方がいいかと思い、配送先を会社近くのコンビニに指定したのです。
 配送日が休みにズレ込んだのは想定外でした。これなら自宅配送にしてもらって自分で受け取ればよかった。笑。

 まぁでも休みであることだし、買い物がてらコンビニに行って引き取ればいいかと思って、お昼過ぎ、たりらりら~んと家を出ました。
 およそ三十分後コンビニに到着、早速店内のインターネット端末であるLoppiで引換券を発券するべくメモを見ながら問い合わせ番号と認証番号を入力、、、しかし画面には無情にも「お問い合わせ番号と認証番号をご確認の上・・・」というメッセージが。何度やっても同じ。涙。
 あ~あ、認証番号を書き取り違えてもーた・・・って思いました(荷物は既に到着済みで、問い合わせ番号が合ってることはお店の人に確認してもらえたので)。

 このときの気分はどう表現すればわかってもらえるでしょうか。『ドラクエ2』で復活の呪文の書き取りミスをしたことがある人ならわかってもらえるかもしれません(今ではごく少数派?)。 
 たかだか七桁のパスワードも写し間違えるんかい!と自分に自分で激しく突っ込んで、めちゃめちゃ落ち込んだ気分で帰宅し、パソコンで認証番号を確認。
 あれ?合ってるよ。十二桁の問い合わせ番号と七桁の認証番号、どちらも合ってました。
 しかし、ただ一つ見落としていたことがありました。それは何かというと引き渡し時刻。1月24日の18:00以降になってました。涙。
 そっちかよっっっ!!

 何ですかねぇ、荷物は既に届いていて、発注した本人が引き取りに行って、お金も持っていて、問い合わせ番号と認証番号も合致していて、それでも荷物は渡せませんか。
 これだからデジタルなんて嫌いなんだよ!!(せめてLoppiで引渡し時間になっていません、って表示出来ないものでしょうか?)

 その日はそれから四時間ぐらいだらだら~と時間を潰し、六時になってから再びコンビニに出向きました。
 今度は何事もなく無事荷物を受け取り、家に帰って開封、発注したDVDと対面しました。
 受け取るのに苦労しただけあって、待ちに待ったDVDを手にしたときは感動しましたよ。
 やっぱりAmazonは便利ですね。次は何を注文しようかな♪(デジタルは嫌いじゃなかったんかい!!)
コメント (4)

宇宙船ペルセウス号の殺人(後編)。

2009-01-25 21:05:19 | ショートショート
 中編よりの続きです。

「なあ、いっそのこと真相を明らかにしちゃどうだ」
 唐突にシェナーが切り出した。シェナーは全員の視線が再び自分に集まるのを充分に待ってからそして言葉を継いだ。
「俺はマリー・ジリオンが死に到った真相を知っているぜ」
「どういう意味だ、シェナー?」と私。
 シェナーは子供が悪戯でも思いついたときのようにニヤリと笑った。
「彼女は自ら死を選んだんだ」
「どういう意味だ、シェナー?」同じ台詞を今度はクロウリーが。
「言葉どおりの意味だよ、彼女は自殺したんだ」
「馬鹿な、彼女の死が自殺だと?」
 ボリスが吐き捨てるように言った。確かにボリスの言うとおりだった。マリー・ジリオンの人となりをわずかでも知っている者であれば、誰も彼女と自殺を結びつけたりはしないだろう。
 立ち上がったクロウリーが威厳を取り戻すべく厳かに尋ねた。
「彼女の死が自殺だというなら、その動機は何だ?」
「古来から女が自ら死を選ぶ理由はただ一つ・・・」
「勿体つけた言い方をするな、シェナー!」
「急かすなよ、船長。女が自殺する理由は一つしかない、男に、そうさ、男に振られたからに決まってるだろうが」
 そしてシェナーはさもおかしそうにカカカと高笑いした。
「男に振られただと?彼女が?誰に?」
 なおも笑い続けようとするシェナーに今度はボリスが問うた。先程までとは打って変わってきわめて事務的な口調だった。
「誰に、だと?分かり切ったことを聞くなよ、ボリス!」
 唇端を笑みに歪めたまま、シェナーはボリスを威圧的に上から見下ろした。
「俺にだよ、俺に。彼女は俺に振られたことを苦にして死を選んだんだ」
 シェナーは意味もなく高笑いを交えながら話を続けた。
「ああ、そうだ。最終のメンタルチェックの時に彼女に言い寄られたんだ。アロィンに着いたら、もっと二人の関係を親密なものにしないかと彼女に誘われたのさ。だが俺は任務が第一だと彼女の誘いを断った。そうだ、俺が、この俺が拒絶した、ハハ、俺がだ」
 おそらく話は全く逆なのだろう。コールドスリープに突入する前の最終メンタルチェックで船医であるマリー・ジリオンに誘いを掛けたのはシェナーの方だった。だが彼女はシェナーに手痛く肘鉄を喰らわせた。真相はそんなところに違いない。
 たぶん誰もシェナーの話などまともには聞いてはいなかった。にもかかわらず、マリー・ジリオンの死が自殺であるという彼の仮説はその場を支配した。事無かれ主義のクロウリーにとっては彼女の死が自殺である方が都合がいい話だ。憶病者のヒラーには真実など永遠に意味はない。シェナーには彼女の死を自殺とすることで彼女の存在そのものを辱めるという目的がある。だがボリスは・・・。
 いつの間にかシェナーの高笑いもやみ、彼も含め、四人は押し黙ったままボリスを見ていた。ボリスは、この男だけは、マリー・ジリオンの死を自殺と認めることは決してないだろう。そう確信めいたものを抱いていたのは私だけではあるまい。
 誰もが次にボリスが何かを言うのを待っていた。注目されていたことを知ってか知らずか、ボリスはしばらくの間じっと考え込むように親指の爪を噛んでいた。
「マリーの死が自殺とは・・・」
 ボリスは笑った。何かを、そう、自分自身を嘲るような笑い。
「マリーが貴様をたらし込もうとしただと?」
 ボリスがシェナーを見た。笑みを浮かべつつも感情が全く伺い知れなかった。
「笑わせる話だ。仮にもう一度宇宙が開闢を迎えることがあったとしても、それはありえん話だ」
 ボリスは再び爪を噛もうとしたが、彼の右親指には噛むべき爪先が無くなっていた。指先からたらたらと血が流れ出した。
「最高だよ。今まで聞いた中で最高に笑えるジョークだ。マリーが自殺だと?おかしくって腹がねじ切れそうだ。笑わせる!笑わせる!!笑わせる!!!」
 ボリスが天を仰ぐように手を広げた。ピュッと床面に血花が咲いた。
「ふざけるな!!」
 突然ボリスがけらけらと笑い出した。本当に気が触れたのかと思った。永遠に続くかと思われたそれも不意に止んだ。
「いいだろう。マリーが自殺だと?それもいい。所詮死因が何であろうが、彼女は生き返りはしないのだからな」
 ボリスが表情を変えた。怒りでもなく、悲しみでもなく、無論喜びでもない。それを何と表してよいか私にはわからなかった。
「彼女の死を自殺と認めるには一つ条件がある。いや、提案と言い換えた方がよいか・・・」
 そしてボリスは一つの計画を我々に打ち明けた。

                  *

 マリー・ジリオンが私の足元で寝そべっている。子猫のようにじゃれつこうとしてきて、私は無下に足蹴にした。
 オリジナルと寸分変わらぬ姿だが、髪の手入れが面倒しくて私はばっさりと短く切ってしまった。
 経験が人を賢くする。知識によって知能は向上する。
 急速培養のクローンではろくにしゃべれやしない。知能レベルはそう、それこそ子猫程度だ。
 ボリスの計画とはまさにそれだった。マリー・ジリオンのクローン。生物工学はボリスの専門分野だ。奴はまさしく天才だった。アロィンに着いてわずか三ヵ月で、しかも正規の任務の合間を縫ってマリー・ジリオンを誕生させた。
 オリジナルと寸分たがわぬ五人のマリー。だが知能レベルはオリジナルと比べようもなかった。その意味ではマリー・ジリオンはこの宇宙から永遠に消えてしまったのだ。
 ただ一人ボリスだけが、少しでもオリジナルに近づけるべく、クローンの教育に熱心なようだが、それも徒労に帰すだろう。所詮クローンはクローン、せいぜい愛玩動物か、予備のボディ・パーツが関の山だ。
 私は、私のマリーの知能レベルを上げるつもりなど毛頭無かった。
 頭のよい女とつき合うのはもうご免だ。
 そう、一度だけで十分だ。

                  *

 エンダー級宇宙船ペルセウス号より本星航行センターへ緊急連絡。
『惑星アロィンより帰還途中船内にて殺人事件発生。被害者は同船一等航宙士ダニエル・デービス・ハーソン。ハーソン航宙士は腹部及び胸部など計十数箇所を鋭い刃物のようなもので刺されており出血多量にて死亡。犯人の特定未だならず。帰還航行プログラミングはハーソン航宙士により入力済みにて同号の運行に支障なし。以上、報告者、同船医療技術士マリー・セレス・ジリオン』


                                了
コメント (12)

宇宙船ペルセウス号の殺人(中編)。

2009-01-24 22:15:51 | ショートショート
 前編からの続きです。

「よぉ、何みんなで、騒いでんだよ、こんなところで」
 六番目のクルーにして一等機関士、そして最後の容疑者、ヘンリー・シェナーの登場だった。
 皆が一斉にシェナーを見た。船長以下四人が自分を出迎えたことにシェナーは少なからず戸惑っているようだった。
「どうしたんだよ、みんな、俺の顔に何かついてんのか?」
 シェナーが奇妙に思うのも無理はない。本来であればコールドスリープから目覚めれば誰だっていつまでもスリープルームになど残ったりはしない。普通は各自の個室に戻ったり、人が恋しければミーティングルームへ顔を出したり、気分が優れなければ医務室に行くこともある。だが四人が固まってスリープルームに居残ることなど考えられない。
「君が起きるのを待っていたんだ」
 代表してクロウリーが言った。そう、待っていたんだ、君が、マリー・ジリオン殺害犯の可能性もある君が、万が一にも逃亡や破壊工作など謀らないようにな、と心の中で彼の代わりに付け加える。
 クロウリーは私の時と同様に手短かに概要をシェナーに話し、同じくボリスがそれに付け加えた。ただ私の時のようないざこざはなかった。
「そうか、Drマリーが死んじまったか。いい女だったのに、残念」
 シェナーは宇宙での暮らしを、父親の事業を引き継ぐまでの退屈しのぎだと言ってはばからない男だった。このときもあくまで軽口を叩くような口調だった。
「死ぬ前に、一度抱いてやればよかったか」
 この言葉にボリスが顔を真っ赤にさせていきり立った。
「し、死者を、死者を冒涜するような言葉は控えてもらおうか」
 シェナーはそんなボリスを冷ややかに見下した。自分の態度を改めるような素振りには見えなかった。
「なに、今頃はDrマリーも天国で、俺に抱かれなかったことをひどく後悔しているはずさ」
「貴様!」
 ボリスがシェナーに掴みかかろうとした。我々が止めに入らなければ、殴り合いの喧嘩になっていただろう。いやボリスが一方的に殴られるだけか。
「ボリス、アンタがDrマリーにどれくらい入れ込んでいたか知らないが、俺に八つ当たりするのはよしてもらおうか。彼女を殺したのは俺じゃない」
 これはお笑い草だった。マリー・ジリオンに入れ込んでいたのがシェナー本人だったのは周知の事実だった。だが頭に血が昇っていたボリスは、そのことに考えが巡らなかった。殺してやる、と物騒な言葉を吐き出し、もう一度シェナーに掴みかかろうとした。
「やめるんだ、二人とも」
 クロウリーが先程と似たような台詞をくり返す。
「Drボリス、貴方らしくもない、もっと冷静に!シェナー、君もだ、Drを挑発するような言動は慎みたまえ!」
 クロウリーは深く息を吐き出してから、我々の顔をゆっくりと見回した。
「先ずは私の考えを聞いてほしい」
 クロウリーは一つ一つ言葉を選びながら、噛み締めるように話し出した。
「私は、犯人捜しをするつもりはない。無論、マリー・ジリオンを殺した者に、それ相応の罰が与えられて然るべきだとは思う。だがそれも全ては本星に帰還してからの話だ。今この状況で、犯人が見つかったところで、我々にはどうしようもない」
 そこで一旦言葉を切って、もう一度我々の顔を順に見まわした。
「任務を放棄して中途帰還するという選択は取れない。犯人だけを送り返す方法もない。これから向かう任務地、惑星アロィンで任務期間の五年もの間その犯人をどう扱う?隔離して、四六時中見張りを立てるか?それともいっそ氷付けにして宇宙に放り出すか?出来やしない。出来ない、出来ないんだ、我々には最初から選択肢なんて与えられていないんだ!」
 クロウリーは額に手を当て呻くように続けた。
「亡くなったマリー・ジリオンは幸いにして、そう言っては語弊があるが、医療技術士であり、いわば非常要員だった。彼女がいなくとも、まあ任務自体はどうにかなる。だがこれ以上誰が欠けたとしても任務遂行に支障を来す。それだけは避けなければならない」
 クロウリーは自らが吐き出した言葉を呪っているようだった。我々にもその言葉の重みはすぐに伝わった。
「任務遂行を最優先とする。それが私の考えだ」
 そう言い終わるとクロウリーはそのまま崩れるように床に座り込んだ。体の中の力を全て使い果たしてしまったかのようだった。
「さあ、船長の言葉を聞いただろう。皆、一度自分の部屋に戻ってくれ。追って指示を連絡する」
 船長代理の権限を持つ私がそう言った時、ヒラーが私の腕を掴んだ。
「待ってくれよ。ちょっと待ってくれ。任務遂行を最優先にするだって?いいだろう、わかるよ、それが世の中ってものだからな。だがやっぱり殺人鬼を野放しにして、放っておくってのは、まともじゃないぜ。一人になったところをいきなり後ろからブスリと刺されるのは俺はご免だ」
 恐慌に陥るヒラーを諭すように私は言った。
「大丈夫だ、ヒラー、おそらくそうはならない」
「何でだ、何で分かるんだよ。ハーソン、アンタが犯人だっていうのか!?」
「違う。そういう意味で言ったんじゃない。犯人の奴がその気なら、もうとっくにやってるだろうってことさ。今頃犯人が誰かなんて論じあってなどいない。目覚めてもいない。彼女と同様に揺りかごに揺られているはずだ。動機が何であれ、犯人の目的は彼女一人なんだろう」
「本当か。本当にそう思うか」
「ああ、間違いない。だから心配する必要はない」
 そう言って私はヒラーを安心させるべく彼の肩に手を置いた。


                           後編に続く。
コメント (8)

宇宙船ペルセウス号の殺人(前編)。

2009-01-23 22:28:53 | ショートショート
 深い、果てしなく深い眠りから覚め、私はゆっくりと目を二度、三度瞬かせた。
 茫漠とした意識の中、自分のいる場所がわからず恐慌に陥りかけたが、それもごく一瞬のことだった。自分が身を横たわらせているのがスリープユニットの半透明のカプセルの中だということに気づいたのだ。
 カプセルのキャノピーを手順に従って内側から押し上げ、上半身を起こしかけたとき、一人の男と目が合った。
 エンダー級宇宙船ペルセウス号船長、ゴードン・クロウリーは私の顔を見るなりおはようの挨拶もせずに言った。 
「Drマリー・ジリオンが死んだ」                
 それは彼女の死を悼むというより、厄介ごとを憂いているような言い方だった。
「マリーが死んだ?どうして・・・」
 目覚めたばかりで頭が冴えず、うまく言葉が続かなかった。クロウリーが語尾を奪った。
「マリーの死因についてはおおよそ見当がついているんだ、ハーソン。現場の鑑識の方は、私と、Drボリスの二人であらかた終えている」
 シュヴァルツ・ボリスが苦虫を潰したような面持ちでジロリと私の方を一瞥し、クロウリーの後を継いだ。
「私は、監察医ではない。検死は専門外だ。だが、マリーの死因は明らかだ」
 ボリスは、『マリー・S・ジリオン』というネームプレートの張られているカプセルを、ノックでもするかのようにコンコンと軽く叩いた。
 私は自分のカプセルから抜け出すと、彼女のカプセルの前に、今となっては柩と言うべきだろうか、立った。
 哀れなるマリー・ジリオン。
 鮮やかなブロンドの髪は密閉されたカプセルの中でもそよ風を受けて揺れているかのようであり、コールドスリープ中の規則により最低限の着衣しか許されないためグラマラスなボディラインはひどく強調され、永遠に閉ざされるままとなった瞼の奥では今も楽しげな夢でも見ているかのようだ。まるで・・・。
「まるで、眠っているだけのようだ・・・」
 私はそう感想を述べた。ボリスが皮肉めいた笑みで口端を歪めた。
「いや、ハーソン、彼女は死んでいる、間違いなく死んでいる、マリー・ジリオンは死んでいるんだ!」
 ボリスはそうしなければ私が納得しないとでも思っているのか、舞台俳優のような大げさな言い回しと手振りで三度くり返した。そしてもう一度。
「彼女は、死んだ。『揺りかご』に揺られたんだ・・・」
 揺りかご?一瞬ボリスが何を言っているのかわからなかったが、すぐにその意味に思い至った。
 『揺りかご』とはコールドスリープユニットが搭載されている、あらゆる宇宙船に備えてある一種の救済装置のことだ。例えばすべての推進装置が故障し、方向転換のすべを失って恒星に突入することが避けえないとわかった時、例えば多数の宇宙海賊に包囲されて脱出が困難であると考えられる時、その他様々な危機的状況において乗組員を苦痛から開放するためにその装置は使用される。
 つまり、『揺りかご』とは一種の自殺装置のことだ。
 無論正式名称というわけではない。ただ、誰もがそれを正式名称や四文字のアルファベットの略称で呼ぼうとせず、冗談めかして「『揺りかご』に乗る羽目には陥りたくないものだな」などと言うものだから、いつしかその装置のことを『揺りかご』と呼ぶようになったのだ。
 具体的な使用方法は通常のコールドスリープと何ら変わらない。異なるのはカプセル内に満たされるのが人工羊水ではなく、笑気ガスの一種だということだ。赤ん坊が揺りかごの中で安らかに眠りに落ちるように、心地好いまどろみの中で永遠の眠りを迎えるができる。
 上層部の連中に言わせるとそれはきわめて人道的な配慮によるものらしい。だが私には、悪趣味な冗談にしか思えない。死を迎えるに当たり、今更痛みを伴おうが、そうでなかろうが一体何が違うというのか?
 ともかくマリー・ジリオンは揺りかごの中で永遠の眠りについた。彼女自身は痛みなど全く感じる事がなかったに違いない。
「なぜ彼女だけが『揺りかご』に乗る羽目に?」
 私は当然とも言える疑問を口にした。『揺りかご』はその特殊な使用目的のために特定の誰か一人に対して使われることなどありえない。『揺りかご』が揺れる時は、その宇宙船の乗務員全員の『揺りかご』が揺れるはずだ。
「その理由はアンタが知ってんじゃないのかい、Mrハーソン?」
 どこに潜んでいたのか、二等航海技術士のオズワルド・ヒラーが横から口を出した。水面に付けていた顔をばっと上げたような勢いだった。
「ユニットの端末コンピューターに誰かが悪さしたらしいぜ。そんな事が出来んのはプログラミングの専門家である航宙士のアンタ一人だろ、ダニエル・ハーソン?」
 いきなり名指しされ、私は慌ててクロウリーの方を見た。
「コンピューターがハッキングされたというのは本当か?」
 クロウリーは小さく頷いた。
「詳しいことは解析してみないとわからないが、コールドスリープのプログラミングに外部から侵入した形跡があったのは間違いない」
 三人が、凶悪犯でも相手にする時のような目付きで私を見た。
「ちょっと待ってくれ。確かに今回のコース設定をおこなったのは私だ。私ならプログラミングを改ざんすることも可能だろう。だが私がやったのなら、わざわざ外部から侵入する必要はないぞ」
「ふん、どうだかな。自分から疑いの目を逸らすためわざと外部から侵入したのかもしれないぜ」と、ヒラー。
「じゃあ、言わせてもらうが、ヒラー、お前に私と同程度の、いやそれ以上のハッキング能力がないと、誰が保証する?」
「俺にはマリーを殺す理由はないぞ」
「私だってそれは同じだ!」
「やめろ、二人とも!」
 クロウリーが一喝した。
「宇宙船に乗務する以上、コンピューターに対して最低限の知識があるのは当然だ。マリーを殺す気なら、事前に準備さえしていれば誰だって可能ということだ。それは私も、そしてヒラー、お前も同じだ。そのことでハーソンを犯人だと限定することは出来ない」
 クロウリーは重く息を吐いた。
「疑えば切りがない。私が怖れているのは、まさにそれなんだ・・・」
 その時場違いといっていい陽気な声がした。


                            中編に続く。
コメント (7)

ちょっぴり気になる御年頃。

2009-01-22 23:49:45 | 戯言
 どーでもいいことがたまに気になります。

 例えば、マラソン中継とかでよく「出だしは快調でしたが・・・」っていうじゃないですか。
 この場合の『出だし』って、オール漢字で書くと『出出し』になるのかなーって。
 でも『出出し』と書かれてあっても誰も「でだし」とは読めないですよね。
 読めないのは自分だけなのか、それとも『出だし』をオール漢字で書いても実は『出出し』ではないのか、ちょっぴり気になる御年頃です。

 おんなじよーなことは『日にち』でも思いますね。フツーにいいますよね、『日にち』。「会議の日にちはいつだったっけ?」みたいに。
 オール漢字だと『日にち』って『日日』って書くんですかね。何か『日日』って漫画とかの架空の新聞でよくある『日日新聞』を思い起こさせますけれど。
 っていうか、『日日』と書いてあったら『日々』(ひび)としか読めねーよ、って話ですが。

 本当にだから何だよ、って思わないでもないです。

 話はまったく変わりますが、もしかしたら明日は小説を更新するかもしれません。
 んー、SF?SFでミステリでちょっぴり鬼畜なお話です。でもって、ちょっぴり長い。
 別に新作ってわけではないのですが、そういや放置してたのがあったっけ、とふと思い出しました。
 読みたい、もしくは読んでもいいよ、という人が三人以上いたら更新します。
 現われなかったら、その時は永久にゴミ箱行きだな。
 反応がなかったら超絶的に悲しいんだもん。笑。
コメント (9)