ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

山口育子著 「賢い患者」 岩波新書(2018年6月)

2019年08月23日 | 書評
花虎の尾

患者本人の意思を尊重し、患者・医療者の賢明なコミュニケーションを目指す活動 第9回

6章) 患者が参加するー医療を支える市民養成講座

COLMの故辻本理事長が厚生労働省をはじめとする審議会や検討会の委員に就任することが多くなった2005年ごろから、患者・利用者の立場で発言する委員に必要性が増え、そのための人材養成が急務となった。しかし当時は「医療不信」がピークに達していたころで、医療理解はとても受け入れられる状況ではなかった。しかし2008年には下火になったので養成の企画が始まった。「医療で活躍するボランティア養成講座」がそれです。当時は審議委員養成講座ではハードルが高すぎると思い、病院ボランティア、模擬患者、病院探検隊、電話相談も含めました。1回3時間、全5回のプログラムで具体的なボランティア活動に入った修了者もいます。2011年に辻本氏が他界して山口氏が理事長に就任すると非常な多忙な毎日となり、年間150回の講演会に加え数多くの委員会活動がメインとなった。2015年「大学附属病院等の医療安全確保に関するタスクフォース」の顧問となって、22の特定機能病院の集中立ち入り検査に同行し、そこから「大学附属病院等のガバナンスに関する検討会」となりました。2017年度より特定機能病院に設置が求められた医療安全監査委員会では8病院で委員を務めいる。監査委員に外部から委員を入れるという条項によります。2015年の「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」倫理審査委員に一般市民の参加が成立条件となった。2018年施行の臨床研究法では認定臨床研究審査委員会にも外部委員が必要です。2015年から始まった地域医療構想、独立行政法人病院は外部評価委員が必要です。委員会に出席したら、やはり一度は発言しなければなりません。いつどのタイミングでどんな内容を話すかで、下手をすると2度と発言できなくなることもあります。つまり患者・利用者を代表して意見を述べる一般委員の役割を理解し、冷静・客観的な意見を述べる訓練が必要です。そこで2017年度よりアドバンスコースとして「医療関係会議の一般委員養成講座」を始めたそうです。「医療で活躍するボランティア養成講座」も改称して「医療を支える市民養成講座」という基礎コースに位置付けた。1年に3回講座を開催し、2017年度は350名が参加した。アドバンスコースは1回3時間全7回の開催です。各種委員会(厚生労働省・文科省)の役割と種類を知り、議事録を読む会、ディベートセミナー、模擬検討会を開催します。模擬検討会には受講生だけでなく大学教授・医師会理事、研修センター理事らが参加し、事務局は厚労省の技官です。模擬検討会での合格者は「COML委員バンク」に登録する資格が与えられます。

(つづく)