ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

山口育子著 「賢い患者」 岩波新書(2018年6月)

2019年08月22日 | 書評
百日紅と柿の木

患者本人の意思を尊重し、患者・医療者の賢明なコミュニケーションを目指す活動 第8回

5章) 患者が病院を変えてゆくー病院探検隊

1995年「日本医療機能評価機構」が設立され、1997年より訪問審査による病院機能評価事業が開始された。病院の利用者である患者の立場の評価者が入っていないことに疑問を抱きCOLMで「病院探検隊」を結成したという。1994年諏訪中央病院より病院探検隊を受け入れてもらい、以来少しづつ他の病院からも実施を依頼され、2002年には16医療機関の依頼を受けた。2003年度からは交通費、宿泊料、派遣料を有料化した。2017年度末までに全国86医療機関で「病院探検隊」を実施しました。中には保険薬局、介護老人保健施設、特別養護老人ホームも含まれます。COLMスタッフ・ボランティア約10名で出向き、午前中は医療機関の主導による「案内見学」、COLMが見たい場所の「自由見学」、病院の依頼による模擬「受診」(受付から支払いまで)からなります。病院食の昼食を実費を支払って食べ、午後より2時間かけて病院幹部とディカッションとフィードバックを行います。後日レポートを纏め1か月以内にCOLM総合フィードバック報告書を送付する仕組みです。チェックポイントはある程度マニュアル化され詳細は省きますが、
①外回り・受付
②外来(トイレを含む)、診察室、検査室、採血室、リハビリ室など)、薬局、廊下・階段
③病棟 ナースステーション、病室、浴室、トイレ、臭い、ディルーム談話室、公衆電話、ベット周り、洗濯室、ゴミ箱、説明用別室 
④患者が利用する場所 売店、医療相談室、カルテ管理室、投書箱、病院食、図書コーナー、待合室
医療スタッフの言葉使い・ホスピタリティ、苦情相談室等も見て回ります。2015年慶應義塾大学病院や2016年千葉大学附属病院が「臨床研究中核病院」に名乗りを上げたが厚生労働省より病院のガバナンス(患者目線欠如)を指摘され、そこでCOLMの病院探検隊を実施し病院改革を行って認可を得たそうです。この病院探検隊は、ある意味で当時流行していたISO8001品質管理、ISO14001環境管理の認証機構と規を一にしているようです。患者目線で病院機能を評価する仕組みです。

(つづく)