アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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玉城知事・自衛隊増強に「反対する」は本当か

2024年10月05日 | 沖縄と日米安保・米軍・自衛隊
   

 玉城デニー沖縄県知事が就任(再選)から2年経過(9月11日)したのに伴い、琉球新報と沖縄タイムスがともに9月30日付で、玉城氏にインタビューするとともに任期前半の玉城県政を検証しました。

 インタビューの中で玉城氏は、「自衛隊の増強」について、「反撃能力を有する装備は攻撃対象となるリスクが高まることなどから県民の理解は到底得られない。反対の意思をしっかり示したい」と述べています。これは本当でしょうか。

 この2年間に、玉城氏が沖縄の自衛隊・基地に対して行ってきた主なことを振り返ってみましょう。

 ★自衛隊増強反対の県民集会の直後に自衛隊記念式典に出席(23・11・26)

 軍事基地化に反対する県民大集会(23年11月23日)には玉城氏も出席してあいさつしました。ところが、その3日後に行われた陸上自衛隊第15旅団「創隊13周年」・那覇駐屯地「創立51周年」記念式典に、玉城氏は副知事を派遣し、「県民の生命財産を守るために多大な貢献をいただいている」と謝意を示しました。式典会場前では市民が反対行動を行っていました(23年11月28日のブログ参照)

 ★「辺野古代執行」は「日米安保体制に影響」と発言(24・1・10)

 岸田政権が強行した辺野古新基地建設の代執行(12月28日)に対し、記者会見で「多くの県民は辺野古新基地建設反対の民意を明確に示している」と抗議するも、「それを軽んじては、日米安保体制にも大きな影響が及び続けると懸念せざるを得ない」(1月11日付琉球新報)とのべ、「代執行」を日米安保体制=軍事同盟にとって不都合という視点で捉えました(1月12日のブログ参照)。

 ★「(全国の)50%の米軍基地は認める」と表明(2・2)

 朝日新聞のインタビューで、「国土面積の約0・6%の沖縄県に全国の米軍専用施設面積の70・3%が存在することは異常」としながら、「この数字が50%以下となるよう、米国と協議してほしいと申し入れています。つまり、当面50%の米軍基地は認めざるを得ないと言っているのです」「私は日米安全保障体制を認める立場です」(2月2日付朝日新聞デジタル=写真左)と表明(2月5日付ブログ参照)。

 ★元陸自幹部を「危機管理補佐官」に任命(4・1)

 新年度の人事で、元陸上自衛官(退任時は1等陸佐)の吉田英紀氏(65)を「危機管理補佐官」に任命。同部署は知事部局の統括監級。任命にあたって玉城氏は「豊富な知識と経験を生かし、県内の災害や危機事象へ取り組んでほしい」(4月2日付沖縄タイムス)と発言。「中国有事」を想定したもので、その際は自衛隊の「知識と経験」によって対処しようとするものです(4月8日のブログ参照)。

 ★石垣市公道で自衛隊が軍事訓練した日、現地で先島での自衛隊増強に賛否示さず(4・24)

 4月24日、石垣駐屯地の陸自部隊が「災害出動」を名目に市内の公道で軍事訓練を行いました。公道での演習は初めて。

「交差点では約30人が抗議のスタンディングをした。「いのちと暮らしを守るオバーたちの会」の山里節子さん(86)は隊列に「私たちの公道だ。軍用道路ではない」と声を荒げた」(4月25日付沖縄タイムス=写真中)

 この日、行政視察で石垣市を訪れていた玉城氏は、「報道陣から先島での自衛隊増強に反対するか問われ、賛否の立場を示さなかった」(4月26日付琉球新報)(4月27日のブログ参照)

 自衛隊増強には反対しない、むしろ必要。ただし、反発を招かないように―それが玉城氏の本音です。その根底には自身が表明しているように、日米安保条約体制=軍事同盟を積極的に擁護する立場があります。

 しかし、自衛隊の増強、敵基地攻撃能力の保持は、日米安保体制の深化による米軍と自衛隊の一体化の帰結です。日米安保条約に反対しない限り沖縄戦場化の危機は避けられません。

 琉球新報、沖縄タイムスは2年間の玉城県政を検証しながら、こうした玉城氏の日米安保・自衛隊擁護には触れていません。それは玉城氏の前任の翁長雄志県政に対する報道と同じです。

 その根底には両紙自身の日米安保体制肯定があります(写真右は1月11日付沖縄タイムス)。沖縄の県紙としてそれでいいのかか。改めて自問する必要があるのではないでしょうか。
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