アリの一言 

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共産党「安保法制廃止が共闘の一貫した原点」はウソ

2024年10月04日 | 日本共産党
   

 日本共産党の田村智子委員長は9月30日開かれた第3回中央委員会総会(3中総)の幹部会報告で、「小選挙区にも最大限候補者を立てる」と表明しました。

 前回の総選挙で志位和夫委員長(当時)が「小選挙区は1人しか通らないから、ばらばらだと負ける。そうしたら自民党の政治が続くことになる」(21年10月17日の対話集会、10月24日付朝日新聞デジタル)と今の野田佳彦立民代表と同じことを言って「野党共闘」に固執していたことに比べれば、大きな方針転換であり、それは評価される転換です。

 問題は、田村氏が「市民と野党の共闘の現状と日本共産党の立場」として発言した内容です。田村氏はこう述べました。

「市民と野党の共闘は、安倍政権による集団的自衛権行使容認と安保法制の強行を、立憲主義の破壊として批判し、安保法制を廃止し立憲主義を回復することを、共闘の「一丁目一番地」に一貫してすえてきました」(1日付しんぶん赤旗)

 小池晃書記局長も「しんぶん赤旗」(9月22日付)のインタビューでこう述べています。

安保法制を直ちに廃止することを最重要の緊急課題としてこの一点で力をあわせよう―このことこそ、野党共闘の原点であり、一丁目一番地なのです」

 「安保法制を直ちに廃止」することが「野党共闘」の「一丁目一番地」であり、それを「一貫して」「原点」にすえてきた、というのです。これはウソです。証拠を2つ示します。

 ①前回総選挙(21年10月)―4野党「共通政策」は「安保法制の廃止」ではなく「違憲部分の廃止」だった

 立民、共産、社民、れいわの4党は、2021年9月8日「衆議院選挙における野党共通政策の提言」を発表しました(写真左)。それは6本柱・20項目あり、合意文書の最後には4党首のサインがあります(写真中)。

 その第1の柱の第1項目はこう明記しています。

「安保法制、特定秘密保護法、共謀罪などの法律の違憲部分を廃止し、コロナ禍に乗じた憲法改悪に反対する」

 「違憲部分を廃止」とは安保法制の部分的廃止であり、安保法制全体の廃止ではありません。
 田村氏は3中総で、野田氏が「違憲部分の検証が必要だ」と述べたことに対し「(安保法制の)存続に道を開く発言」と批判しましたが、「違憲部分を廃止」するとした自らの「共通政策」も安保法制全体の廃止でない以上、「存続に道を開く」ものではないでしょうか。

 それが、共産党が評価してやまない前回総選挙の「野党共闘」の実体だったのです(21年10月2日、11月2日のブログ参照)。

 ②先の参院選(22年7月)―3党2会派と市民連合が合意した「政策」では「違憲部分の廃止」すら削除された

 立民、共産、社民、沖縄の風、碧水会の3党2会派は参院選を前に、市民連合が提示した「2022年参議院選挙における野党に対する市民連合の政策要望書」(5月9日付)で合意しました(写真右)。

 「政策要望書」は4項目からなりますが、「安保法制の廃止」はありません。それどころか、前年総選挙の「共通政策」にあった「違憲部分も廃止」すら削除されました。

 削除した理由を市民連合の山口二郎法政大教授はこう説明しました。

「第1項目に「安保法制の廃止」が明記されていないことの疑問がだされていますが、戦争という状況に対応して課題は大きく変化していますので、その課題に対して的確に応えていく、憲法の理念を実現していくために重点化したという意味です」(22年5月9日のシンポジウム、市民連合HPより)(22年6月24日のブログ参照)

 以上のように、共産党は立民や市民連合と「共闘」するために、「安保法制廃止」という「一丁目一番地」「原点」を2度も棚上げしたのです。それが事実であり、大きな誤りでした。そしてそこに共産党の「野党共闘」の欠陥が表れていたのです。

 誤りは率直に認めて教訓を引き出さねばなりません。すぐに底が割れるウソで自らの「正しさ」を誇示しようとする「無謬主義」を捨て去らない限り、日本共産党に明るい前途は訪れないでしょう。
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