アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

パラリンピックの陰で、後退する障がい者政策

2021年09月06日 | 五輪と国家・政治・社会

    

 東京パラリンピックが5日終わりました。選手たちの感動的な姿の一方、東京五輪・パラリンピックの期間中、コロナ禍は拡大しました。そして閉会式でも、「日の丸」「君が代」「皇族」「自衛隊」が四位一体で強調され、国家主義が煽られました。

 障がい者が生きやすい社会の実現という視点から見ても、パラリンピックというイベントの陰で、本来充実すべき政策が置き去りにされ、後退している実態が、大会期間中の報道でも浮き彫りになりました。

 1つは障がい者雇用です。厚生労働省の集計では、2020年度にハローワークを通じて就職した障がい者の延べ人数は、前年度から大きく減少し、8万9840人にとどまりました。減少はリーマン・ショック時の08年度以来です。

 その主な理由は、菅政権が推奨する「リモートワーク」によって、配送物の仕分けや清掃など、出社が前提となる障がい者が大量に解雇され、再就職が困難になったことです(8月27日付中国新聞)。

 菅政権と経団連など財界団体は、「リモートワーク」が感染防止の決め手であるかのように推進していますが、それによってふるい落とされる障がい者のことは念頭にあるのでしょうか。

 障がい者雇用が減少した一方、逆に増加したものがあります。障がい児がいる家庭に支給される「特別児童扶養手当」の申請却下です。

 「特別児童扶養手当」(受給者約24万人)は、申請に対し各自治体の判断医が審査しますが、厚労省の統計によると、「障害が基準より軽い」などといって却下される件数が09年度は1410件であったのが、19年度には3950件と、10年間で2・8倍に増加しました。

 申請却下とは別に、受給更新の審査で打ち切られるケースも増加傾向にあり、16年度には09年度の2倍近い3880件にのぼりました(8月30日付中国新聞)。

 NPO法人広島自閉症協会の小野塚剛理事長は、パラリンピックのアスリートたちの姿が「大きな感動を与えていることは間違いない」としながら、「ただ、障害のある家族がいる者として、さめた気持ちも同居している。一過性となりがちな特別の場での感動を、持続力ある理解や関心につなげられるのかという疑問だ」とし、こう述べています。

「「♯We The 15」に注目したい。…これは7人に1人は何らかの障害があることを示している。…差別的言動をした人はそろって「理解不足」「不勉強」と説明する。だが、本質は「無関心」にある。障害のある隣人に気付かないのである。見えていないのである。…どれだけの人が、困難に直面している人がすぐ隣にいることに気付けるか」(9月2日付中国新聞)

 政府(国家)は一過性のスポーツイベントで、障がい者政策の貧困を隠ぺいし、逆に国家主義の高揚、政権維持に政治利用しようとします。
 それを許しているのは、政府になびくメディアと、市民の「無関心」です。

 必要なのは、一過性のイベントの「感動」ではなく、障がい者を差別し、戦争や紛争で障がい者を生み出す国家に対する関心・批判を持続させることではないでしょうか。

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