アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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木原防衛相発言はたんなる自衛隊利用ではない

2023年10月17日 | 自衛隊・日米安保
   

 長崎県佐世保市で行われた衆院長崎4区補欠選挙自民候補の集会(15日)で、木原稔防衛相が行った発言が問題になっています(16日に「撤回」)。木原氏はこう言ったのです。

「しっかり応援していただくことが自衛隊ならびにそのご家族のご苦労に報いることになる」(16日付各紙=共同)

 共同通信は「自衛隊の政治利用と取られかねない発言で、野党が行政の中立性を逸脱したと反発する可能性がある。自衛隊法は、隊員の政治的行為を制限している」と配信しました。

 「政治利用と取られかねない」ではなく紛れもない「政治利用」です。しかし留意しなければならないのは、これはたんなる「政治利用」ではないということです。

 木原氏は、自民党候補に投票することが「自衛隊のご苦労に報いることになる」、すなわち有権者は投票で「自衛隊の苦労」に応える必要があると言ったのです。戦時中、帝国日本は「兵隊さん、ありがとう」という軍国主義教育を徹底させました。木原発言は現代版「兵隊さん、ありがとう」の強要にほかなりません。

 これが一議員の発言ではなく、現職の防衛大臣の公式な場における発言であることを重視する必要があります。

 そもそも自民党内でも軍拡の急先鋒、そして沖縄県民への敵対で名をはせた木原氏を防衛相に任命したこと自体が問題です。

 2015年6月23日の「沖縄慰霊の日」、沖縄の式典に出席した安倍晋三首相(当時)は県民から「帰れ」の声を浴びました。これに対し木原氏は、「明らかに動員されていた」とウソを平気で述べ安倍氏を擁護しました。沖縄県民から厳しい批判を浴びたのは当然です。

 さらにその2日後の同年6月25日、木原氏が代表を務める自民党内の「文化芸術懇話会」で講師を務めた作家の百田尚樹氏が、「沖縄の2つの新聞(琉球新報、沖縄タイムス)は潰さなあかん」と発言。木原氏は責任を問われ党青年局長を更迭されました。

 その木原氏が、沖縄がミサイル基地化して新たな戦争の前線基地にされようとしている重大な時に、防衛相の座に就いたのです。

 木原氏は、岸田政権が昨年12月閣議決定した「安保3文書」改定の「与党実務者協議(WT)」のメンバーでした。そして今年4月から攻撃性ある武器を輸出する「武器輸出(防衛装備移転)三原則」見直しでもWTのメンバーを務めてきました。
 加えて、統一教会との関係でも、教団の会合に出席して講演したことを認めた“統一教会議員”の1人でもあります。

 その木原氏の防衛相としての“初仕事”が、ワシントンに飛んで米製中古トマホークを前倒して購入する約束をしてオースティン米国防長官を喜ばせたことだったのは記憶に新しいところです(9日のブログ参照)。

 それに続く“第2の仕事”が今回の「自衛隊のご苦労に報いる」発言。これはたんに木原氏の問題ではなく、こういう防衛族の右派議員をあえて防衛相に任命した岸田首相の責任問題であり、日米軍事同盟(安保条約)による日本の戦争国家化がきわめて危険な段階にきていることの表れに他なりません。
 
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