カルロス・ゴーン被告が保釈された翌日(7日)、同じく「人質司法」によって3カ月も不当に勾留されている事件の第1回公判が東京地裁で行われました。「ゴーン事件」以上に日本人が注目しなければならない事件ですが、「ゴーン報道」とは対照的に、公判のニュースを報じた新聞・テレビは1社もありませんでした。
この事件は、日本帝国陸軍による南京大虐殺・陥落のメモリアルデー(1937年12月13日)前日の昨年12月12日、靖国神社外苑で、「南京大虐殺を忘れるな 日本の虐殺の責任を追及する」と書かれた横断幕を掲げて抗議活動を行った香港人男性(写真)と、それを取材していた香港人女性記者が不当逮捕された事件です(1月22日のブログ参照https://blog.goo.ne.jp/satoru-kihara/d/20190122)。
事件の本質は、「今回2人に対して加えられている逮捕、起訴、長期勾留という事態は、まさにアジアの人びとが、靖国神社において公然と抗議行動をおこなったことに対する『見せしめ弾圧』であったと言わざるを得ない。この強硬な姿勢が、安倍政権においてより顕著になっている歴史修正主義、国家主義の強権的姿勢と無関係であるはずがない」(「12・12靖国抗議見せしめ弾圧を許さない会」声明=1月21日)というところにあります。
7日の第1回公判では「被告」2人が証言しました。それによって今回の事件の背景・意味がいっそう明確になりました。裁判を傍聴した「許さない会」桜井大子さんのメール報告から抜粋します。
< 男性は、日本の中国侵略・戦争責任と、それを支えた靖国神社の意味などを理路整然と述べ、香港の日本総領事館が、日中戦争や南京大虐殺の記念日に香港市民が何十年も行ってきた申し入れを、第2次安倍政権になってから、文書の受取りすら拒否するようになったこと、自分は非暴力の抗議行動として、靖国神社でこの行為を行ったものであり、無実であると主張しました。
女性は、自分は今回、男性の行動を市民メディアの記者として記録するために来た。自身がボランティアで参加しているこの市民メディアは、中国(香港)政府による自由な言論を封殺するさまざまな動きに抗して作られた自律的メディアであり、言論と報道の自由は、国際的にも大切にされるべき価値であると述べました。>
男性の抗議活動の背景には、安倍政権の「歴史修正主義、国家主義の強権的姿勢」が香港市民の抗議活動に対しても向けられている現実があるのです。
日本のメディアがこの重要な事件・裁判を無視しているのとは対照的に、右翼は裁判に大量動員をかけてきました。
< 法廷は、記者席を除くと30席ほどの小さな法廷(警備法廷)です。当然、傍聴抽選となります。そこに、ただ、2人に対して罵声を浴びせるためだけに、右翼が大量に動員をかけて10人ほど入りこんでいたと思います。その彼らは、法廷の終了が宣告されるや否や、被告に対して差別的な暴言を繰り返しました。その中には、私たちの集会などにも日常的に「カウンター」をかけてくるレイシストも含まれていました。>(桜井さんのメール報告)
2人を不当逮捕・勾留しているのは安倍政権と日本の司法の国際的な罪です。それを報道しないのは日本のメディアの恥です。そして、この問題に注目し、安倍政権に抗議して2人を救援しないのは、私たち「日本市民」の責任放棄ではないでしょうか。
次回公判は3月19日午前10時開廷です。