「裏金問題」の元凶である企業・団体献金の禁止は完全に棚上げした自民党の政治資金規正法「改正」案が6日、日本維新の会の賛成で衆院を通過しました。自民党を助ける日本維新の役割が改めて鮮明になりました(写真左は岸田首相と日本維新の馬場伸幸代表=5月31日)。
自民と維新が組んで悪政を強行する。このパターンで準備が進行しているのが大阪・関西万博です。これがいかに時代錯誤であり民主主義に反しているか。2人の識者の指摘であらためて確認します。
「歴史の流れとずれた遺物 やるべきは能登被災地復興」 吉見俊哉氏(社会学者)
<21世紀にもなって、万国博覧会を開催するのは時代錯誤です。グローバリゼーションやデジタル化が進む現代、人口面で収縮と衰退に向かう日本が万博を開催するのは、歴史の大きな流れとあまりにずれている。
日本は90年代から経済成長が停滞し、成長から成熟へと社会のフェーズが変わっていく中で、五輪や万博というビッグイベントをいくらやっても、うまくいくはずはない。
なのになぜ、そうしたイベントをやり続けてきたのか。いまだに高度成長期と同じように国家予算を投じて、都市部の開発を続けたいからでしょう。国の予算の投じ方や文化政策の進め方の重点を、大都市から地方へとシフトしなければいけない。
まず何よりもやるべきは能登半島地震の被災地復興でしょう。万博なんて、やめてしまうほうがいい。>(5月8日付沖縄タイムス=共同、抜粋)
「時代に徹底的に合わない」 高村 薫氏(作家)
<現代の情報化社会は消化しきれないほどの情報を誰でも入手できる。万博はそんな時代に徹底的に合っていない。
関心がないものに対して、市民が積極的に賛成や反対の声を上げるのは難しいかもしれない。それでも、自分たちの税金がつぎ込まれていることをもう一度考えてみてほしい。
この万博には最高責任者がどこにもいない。市民が実施や中止を判断するためにも、運営側は目に見える形で誰が最終的な責任者なのか示す必要がある。その人物が進捗状況をとにかく正確に伝えるべきだ。
政治家から企業まで日本全体が、「責任の主体」がどこにあるのか分からない社会になっている。責任も取らず、総括もしない。一度走り出したものは最終的に失敗するまで止まらない。
個人的には今回の万博は中止でもいいと思っている。もう万博の時代は終わった。>(5月24日付京都新聞夕刊=共同、抜粋)
いずれも重要な指摘です。
とくに高村氏の太線部分の指摘は、万博に限らず日本の政治・社会全体への警鐘であり、「裏金問題」にも、大軍拡・戦争国家づくりにも通底します。「責任の主体」を明らかにして責任を取らせる―追及しなければならない中心問題です。