カスハラ(カスタマーハラスメント)が取り上げられることが多くなった。
サービス業などの産業別労働組合の調査(今年)によれば、「直近の2年以内にカスハラ被害にあった」人は47%に上る。最も多いのは「暴言」(40%)だという(5月14日付京都新聞=共同)。
コンビニのバイトを始めて20年以上になるが、カスハラを受けたことは何度もある。深夜勤(1人体制)のとき、“その筋”の人間と思われる男性から暴言を吐かれた時は恐怖を感じた。
一方、いかにも「普通の市民」と思える人からの暴言や粗暴な態度は、別の意味で怖い。
体験上、カスハラをする側は男女を問わないが、はやり男性の方が多いようだ。カスハラを受ける側は逆に、女性従業員や学生、外国人従業員が比較的多いように感じる。「強い男」から「弱い女性・学生・外国人」へ。ハラスメントの共通した特徴だろう。
カスハラを条例や法律で止めようという動きがある。いちがいに否定しないが、その前に考えること、やることがあるだろう。
僧侶で歌手の柱本めぐみさんが新聞のコラムにこう書いていた。
「小さな駅に降り立ちますと、改札口には駅員さんの姿がありました。乗車券を受け取りながら「ありがとうございました」とひとりひとりに言っておられましたので、思わず私も「ありがとう」と言ってしまいました。(略)
先日、コンビニの店員さんが「いってらっしゃい」と元気な声で見送ってくださったとき、小さな駅で感じたあたたかさを思い出し、ことばをかけることの大切さに改めて気付かされました」(4月29日付京都新聞)
私が今勤めているコンビニは学校の近くなので、なるべく「いってらっしゃい」と声をかけるようにしている。
コンビニやスーパーの接客業のバイトを始めて、得たものはいろいろある。その1つは、自分が客としてレジを通る時は「お願いします」と言うようになったことだ。そのわずか7文字の言葉が、レジの店員にとってどんなにうれしいか身をもって知っているからだ。
相手の立場に立って考える、とはよく言われる心構えだが、実行はなかなか難しい。だが自分が実際にその立場になってみるとそれが実感できる。とはいえ、そうした体験をすることはまれだ。だからはやり想像力を駆使して相手の立場を思いやらねばならない。
もちろんカスハラだけではない。セクハラ、パワハラ、すべてのハラスメント、すべての差別、人権侵害について言えることだろう。
条例や法律で規制する前に、人間性の力でハラスメント・差別・人権侵害をなくしたい。その努力が国家権力の強大化を食い止めることにもつながるだろう。