アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

汚染水放出・最初も最後も“金目”なのか

2023年09月06日 | 原発・放射能と政治・社会
   

 内外で批判が強い東電福島原発汚染水の海洋放出。岸田政権は4日、対策として「新たな支援策」を発表しました。従来の基金800億円に、予備費から207億円を積みますというものです。

 「対策」の1つに、これまで中国で行ってきた水産物加工を国内に移すというものがあります。これに対し、現場の水産業者は―。

「北海道網走市で水産加工会社を営む根田俊昭さんは…「人手がないのに、『カネを出すからすぐ作れ』と言われて、できるのか。国はもっと現実を知ってほしい」と話す」(4日付朝日新聞デジタル)

 カネを出せばいいんだろ、カネでなんとかなる。そういう政府に対する現場からの痛烈な批判です。

 かつて、安倍晋三政権下で石原伸晃環境相(当時)は、福島原発事故に伴う除染廃棄物の中間貯蔵施設建設を巡り、候補地の福島県との交渉が難航したときにこう言い放ちました(2014年6月16日)。
最後は金目でしょ

 自民党政権のやり方はこの時からまったく変わっていません。むしろ何の恥じらいもなくカネを積むことで反対論を抑えようとする思惑が露骨になっています。

 琉球新報の社説(8月29日付)がこう指摘しています(抜粋)。

「海洋放出は、日本だけの問題ではない。…韓国国民の反発は強い。日本政府は国内でも、漁業団体の理解を得るという約束をほごにした。国内、国外とも、理解を得ずに強行する日本政府の姿勢が今回の事態を招いた。放出を停止し、代替策の検討も含めて、国内も周辺各国とも真摯に協議をやり直すべきだ

 政府は、希釈しての海洋放出による影響は「科学的に」ないと主張している。…しかし、30年以上も放出が続けば長い半減期の放射性物質の総量は増え続けることにならないか。微量でも人体に入れば内部被ばくが起きる可能性がある。

 代替策は十分検討されたのか。…政府・東電にとって最も都合のいい方法として、海洋放出という結論が初めからあったのではないか。

 原発事故は周辺国も震撼させた。日本政府は、その反省と責任を認識しているのか。それが問われている」

 汚染水放出は、海洋汚染・内部被ばくの危険性があるうえ、市民や識者が提案している代替案をまともに検討もせず、地元漁業者との約束を公然と踏みにじって強行されたものです。

 それは、2011・3・11の原発事故からの、否、それ以前からの「原発は安全」というウソと、カネで反対論を抑える政府のファッショ的原発推進政策の帰結です。内外の反対の根源はここにあります。


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