アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

日曜日記267・山田洋次監督、いつまでも

2023年09月17日 | 日記・エッセイ・コラム
  山田洋次監督の最新作「こんにちは、母さん」(吉永小百合、大泉洋主演)は、近年の山田作品の中で、私はトップクラスの評価だ。

 特別な「事件」があるわけではない。家庭、職場、地域の日常が誇張なく描かれている。そこで起こる出来事は当事者には「事件」かもしれないが、それが日常の生活だ。時間が人の歩行速度で流れて行く。

 そう、近年のデジタルを駆使したアクション、スペクタルもの、早口のセリフが飛び交う映画・ドラマとは対極なのだ。

 それが心地よかった。「高齢者の恋愛」というテーマも興味深かった。「離婚」や「娘との関係」もひとごとではなかった。70代に足を踏み入れた自分がそこにいても不思議でない映画なのだ。

 この映画は山田監督の実母への想いが背景にあるといわれている。
 山田洋次監督と双璧といえる宮崎駿監督の最新作「君たちはどう生きるか」も監督の実母の回想によるものとの映画評がある。

 同じ「母への想い」でも、描き方は対照的。どちらもいいが、山田作品はとにかく分かりやすい。それが嬉しい。
 分かりやすいことは内容は浅いということではもちろんない。「難しいことを易しく、易しいことを深く、深いことを面白く」という井上ひさしの言葉を思い出す。

 観たのは土曜の昼間だったが、観客は高齢者が多かったように思えた。独りの人も結構いた。数人の女性グループ(私と同年代か少し上)が出てきて言葉を交わしていた。「よかったね」

 山田作品は高齢者の味方なのだ。分かりやすくて、身につまされて、笑って、泣いて、見終わって「人間って、いいもんだな」と思う。「寅さん」がそうだった。「黄色いハンカチ」も。それが山田洋次監督の世界だ。

 9月13日で92歳になった山田監督。いつまでも創り続けてほしい。病気やこの先のことで気が滅入りがちな高齢者に、笑いと涙を届け続けてほしい。山田映画を見ることができるだけでも、生きていることは楽しい。

<今週のことば>

 藤目ゆき氏(大阪大教授)

 「慰安婦」問題で日本人の問題意識が欠如しているのは…

<大阪大の藤目ゆき教授は、日本が戦後、見舞金制度で片付け、慰安婦に国家賠償をしてこなかったことが、国民の問題意識の欠如につながったと指摘。「日本人の被爆者や戦災者に対しては国家補償を実現しようと努力してきたが、慰安婦問題ではそれを怠った」と語った。>(9日、沖縄大学で行われたシンポ「沖縄から考える『慰安婦』問題」で=10日付沖縄タイムス)

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