日本政府は7月の第3月曜日を「海の日」として「祝日」にしています(1996年)。海にちなんだ国独自の祝日を決めているのは日本だけだといわれています。それは世界には国連が決めた「世界海洋デー」(6月8日)があるからです。
それなのに日本はなぜ、独自の「海の日」を決め「祝日」にしているのでしょうか。
そこには近代史における日本の侵略の歴史が何重にも投影しています。
第1に、「海の日」の前身は「海の記念日」で、制定されたのは1941年です。この年8月8日に「戦艦大和」が進水し(就役は12月16日)、12月8日、天皇裕仁が宣戦布告しました。海軍力を誇示したアジア・太平洋戦争の開始と「海の記念日」は一体です。
第2に、「海の記念日」(もとは7月20日)の由来は、1876年のこの日、天皇睦仁(明治天皇)が北海道・東北巡幸から「明治丸」(写真左)で横浜港に帰着したことです。
北海道は明治天皇制政府が真っ先に植民地化した土地です。
さらに、この年の2月27日、日本は朝鮮に江華島条約(不平等条約)を締結させ、朝鮮半島の侵略・植民地化の足掛かりにしました。
第3に、あまり知られていませんが、日本による琉球(沖縄)侵略・植民地化とも深い関係があります。
1879年3月、明治天皇制政府は、処分官・松田道之を兵士300~400人、警察官160人とともに琉球に派遣し、武力を背景に琉球国王に日本への服従を強要しました。いわゆる「琉球処分」です(写真中)。
この時、松田が乗って琉球へ向かった船が、天皇睦仁が乗った「明治丸」でした。なお、「明治丸」の名付け親は伊藤博文だとされています。
この武力侵略が、「国体(天皇制)護持」のための「捨て石」となった沖縄戦、天皇裕仁の「沖縄メッセージ」(1947年)を経て今日の沖縄の軍事植民地化・構造的差別につながっています。
「海の日」の由来の「明治丸」と琉球・沖縄の侵略・植民地化・差別との関係はもっと注目される必要があるでしょう。
そして今、「海の日」に第4の侵略・加害の歴史が加わろうとしています。東電福島原発汚染水放出です。
今年の「世界海洋デー」で、韓国の市民・環境団体などが「国際共同声明」を発表し、日本政府に汚染水の放出やめるよう要求しました(6月8日のブログ参照)。
「海はすべての生命の源です。放射能汚染水の海洋投棄は、命を奪う行為であり、地球市民として許せません」(共同声明)
「世界海洋デー」の由来は、「海洋汚染の防止・資源保護」を宣言した「地球サミット」(1992年)です。
こうした反対の声を無視して日本の都合・利益のために放射能汚染水を放出することは、近隣諸国に対する、否、海でつながっているすべての国々に対する、そして海産物を食料とする全ての人々に対する侵略的行為と言っても過言ではないでしょう。