ロシアが穀物輸出合意の継続に反対した17日、もう1つ大きな出来事がウクライナでありました。クリミア大橋での爆発です。市民家族の両親が死亡し、娘が負傷しました。
同橋が攻撃を受けたのは、昨年10月8日に続いて2度目です。この時はトラック運転手など少なくとも3人が死亡しました(写真右)。当初ウクライナ政府は関与を否定していましたが、今月になって認めました(13日のブログ参照)。
今回もウクライナ政府は関与を認めていません。
しかし、「ウクライナメディアの「RBCウクライナ」は17日、情報筋の話として、ウクライナ保安局などが関与した無人艇による攻撃だと伝えた。同紙によると、情報筋は「橋は水上ドローン(無人機)で攻撃された。橋に近づくのは難しかったが、最終的に成功した」と話したという」(17日付朝日新聞デジタル)。
「ウクライナ治安当局者は同国メディアに、攻撃が海軍と保安局による特別作戦だったと明かし「橋に到達するのは困難だった」と戦果を誇った」(19日付京都新聞=共同)
2回のクリミア橋攻撃に共通しているのは、一般市民が犠牲になっていることです。にもかかわらず、ウクライナ政府からはそれに対する遺憾・謝罪の表明は一切行われていません。
それどころか、「同局(ウクライナ保安局)のマリック長官は「クリミア橋は極めて正当な(攻撃)目標だ。勝利の後、特別作戦の詳細を話す」と約束」(17日付朝日新聞デジタル)するなど、まさに「戦果」を誇っています。戦争当事国の非人間性がここにも表れています。
問題は、そうした戦争当事国の非人間性と一体となったメディアの偏向報道です。
NHKはじめ日本メディアの「クリミア大橋攻撃」に関する報道は、「ロシアの穀物合意離脱」に比べきわめて小さいものです。ロシアのウクライナ攻撃で市民に犠牲がでたときは繰り返し詳細に報道しますが、それとは極めて対照的なダブルスタンダード(二重基準)です。
さらに、ウクライナに対する批判の論調は皆無です。それどころか、「(ロシア軍の)補給ルートにあるクリミア橋の破壊は今年6月に始まったウクライナの反転攻勢の行く先を左右する」(19日付共同配信)など、「橋破壊作戦」への期待すら示唆しています。
NHKに至っては、ウクライナ保安局が認めているにもかかわらず、「“ウクライナによる”とロシアが主張」(19日夜のNHKニュース=写真中)と、ウクライナによる攻撃だということに触れようとしません。
これは明らかな偏向報道です。
戦闘行為はどちらの攻撃であろうと肯定することはできません。そこには人(もちろん兵士も人間)の犠牲、自然の破壊が必ず伴うからです。まして、一般市民に対する攻撃・犠牲は絶対に許されません。
ロシアによるウクライナ市街地攻撃が許されないのと同様、ウクライナによる橋の攻撃も許されません。メディアは「ロシア悪」に立脚した偏向報道・ダブルスタンダードが「停戦・和平」を遠ざけていることを自覚すべきです。
※明日も更新します。