アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

NHKに受診料強制徴収を図る資格があるのか

2020年11月14日 | 人権・民主主義

    
 NHKは一般家庭や事業所からテレビ設置の届け出を義務化し、届け出ないと「罰金」を科す新制度の導入を政府に要望、総務省が検討しています。受信料を事実上強制的に徴収しようとするものです。

 しかし、そもそも受信料の支払いは強制されるものではありません。NHK自身、かつてはこう言っていました。「罰則規定なり強制的手段ではなくて、視聴者との信頼関係、つまり質のいい番組を多く出すことによって、受信契約率を高めていきたい」(2014年当時のNHK会長の国会答弁。10月30日付中国新聞・原貢共同編集委員論評より)

 受信料制度自体についてはかつて最高裁が「合憲」としましたが(2017年)、その判決でも「(業務内容などの説明によって)契約締結に理解が得られるよう努めること」をNHKに課しています。

 つまり受信料は、公共放送としてのNHKに対する「視聴者との信頼関係」「理解」があってこそのものです。ところがNHKの現状はどうでしょうか。

 中国新聞の社説(4日付)はこう指摘しています。
 「受信契約を結ぶことに十分な理解が得られないのは、NHKの経営や報道の姿勢などに、疑問や不信感が抱かれているからではないのか。「強制」の前に、まずは自らの問題点を洗い出し、改めるべきだ

 「では、NHKの何が問われているのか」として同社説は、①「政府が右と言うものを、左とは言えない」(2014年の籾井勝人会長発言)に典型的に表れた「政権との距離」②「民放と変わらぬ番組内容事業肥大化―を挙げています。

 これに加えて指摘しなければならないのは、NHK広島(写真中)の在日ヘイトツイート(8月)や、「これでわかった世界のいま」の黒人差別(6月)に現れた差別体質です。後者については一応削除・謝罪しましたが、前者については被害者への謝罪も訂正・削除もしていません。

 市民団体「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」(代表・醍醐聡東大名誉教授)は5日、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会に対し、「NHK「1945ひろしまタイムライン」の民族差別的ツイートに関する検証と審議を求める要望書」を提出しました。

 この中で、「根本的な問題は未解決のまま残っている」として、次の3点を要望しています。
 1、差別と偏見を助長したツイートが制作された原因を是正するための検証と審議、意見・勧告
 2、NHKが手掛けるインターネットコンテンツの品質管理の瑕疵を是正するよう促す意見・勧告
 3、取材・制作協力者との信頼が損なわれた原因の究明と見解表明

 差別・偏見を助長する番組の制作、さらにその指摘を受けてからの不誠実なNHKの対応は、報道機関にとって致命的な欠陥です。「公共放送」であればなおさらです。ここに「権力との距離」と並ぶNHKの根本的病巣があります。

 この欠陥の抜本的是正なくして、「視聴者の信頼・理解」は得られません。それにほおかむりし放置したまま受信料の強制徴収を図るなどもってのほかです。NHKはそのことを肝に銘じなければなりません。


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