アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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「日本は永遠に戦犯国家」―元「慰安婦」証言と「主権免除」論

2020年11月16日 | 日本軍「慰安婦」・性奴隷・性暴力問題

    

 帝国日本軍の性奴隷(「慰安婦」)被害者と遺族20人が日本政府に総額30億㌆(約2億8千万円)の損害賠償を求めた訴訟(2016年提訴)が11日、ソウル中央地裁で結審しました(判決は来年1月13日)。

 14歳のときに台湾に駐屯していた日本軍に強制動員された李容沫(イ・ヨンス)さん(写真左。ハンギョレ新聞より)は、この日証人として出廷し、こう述べました。

 「軍人に助けてくれとお願いしたが、“朝鮮人”を殺すと脅された。許してくれと懇願し、何度も『お母さん』と言ったことを覚えている」
 「光もなく、真っ暗で(そこが)どこなのかも分からない(状況だった)」
 解放(日本敗戦)後、故郷の大邱(テグ)に戻ってからも、自分の身に起きたことを誰にも話せなかった。

 「慰安婦ではありません。私は朝鮮の女の子でした。そのような子が大韓民国の老人になって(法廷に)来ました。国対国で解決すると言われてずっと待ちましたし、法を信じて期待していました。なのに、どうして4年経っても何もしてもらえないのですか?」

 最後に李さんはこう訴えました。

 「切実な気持ちで韓国の裁判所に訴えます。日本は私たち被害者が生きているときに謝罪・賠償しなければ、永遠に戦犯国家として残るでしょう
 (以上、12日付ハンギョレ新聞日本語電子版より)。

 この法廷に日本政府の姿はありませんでした。「日本政府は国家に対して他国の裁判権は及ばないとする国際法上の原則「主権免除」などを理由に、訴状の受け取りを拒否」(12日付朝日新聞)しているからです。元「慰安婦」の訴えに耳をかそうともしない。これが日本政府の態度です。

 国際法には「客観性・中立性の外見を装いながら、特定の政治価値(欧米中心主義や男性中心主義)を再生産する制度」(阿部浩己氏、『歴史と責任』青弓社2008年所収の西野瑠美子氏の論稿より)という側面があります。「主権免除」論はその1つです。

 弁護団は結審前日の10日、「主権免除」論に対する反論の意見書を同地裁に提出しました。意見書を書いたのは、2000年12月に東京で行われた「女性国際戦犯法廷」で裁判長を務めたクリスティーヌ・チンキン教授。こう述べています。

 「日本の性奴隷制と強制性売買は主権行為に分類され得ない」「慰安婦は武力行使や脅迫などによって『募集』され、搾取や性奴隷の対象となった。軍事活動は主権行為に当たるが、性搾取や労働はこれに当たらない」「(慰安婦問題は)女性と少女に対するジェンダーにもとづく犯罪であり、性暴力事件だ」「国際法上、性平等と性犯罪の法理が発展してきたことを考慮して、国家(主権)免除の法理を再評価しなければならない」「日本に司法的責任を問わなければならない」(11日付ハンギョレ新聞)

 国際法の旧態依然とした恣意的解釈による「主権免除」論をタテに法廷にも出てこない。言語道断です。日本政府は司法的責任を負わねばなりません。
 被害者が存命中に「謝罪・賠償」しなければ、まさに、日本は「永遠に戦犯国家として残」ります。日本人は「永遠の戦犯国家」の「国民」となるのです。
 (写真中は、日本政府が撤去させようとしているソウルの「平和の少女」像。右は同じくベルリンの少女像)


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