アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

沖縄戦トラウマと福島型震災トラウマ

2013年06月16日 | 日記・エッセイ・コラム

PhotoPhoto_2 「沖縄戦とそのトラウマによるストレス症候群」という講演会が15日沖縄キリスト教学院大学でありました。講師は精神科医の蟻塚亮二さん。今年3月まで沖縄、4月からは福島県相馬市で治療にあたっています。
 沖縄戦のトラウマについては体験者の約4割がPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症していることが當山富士子さんらの調査で明らかになっています。68年たった今も、と思いがちですが、蟻塚さんは逆に、年を経るほど症状は出やすいと言います。「晩発型PTSD」です。加齢とともに「言語化されない外傷性記憶」が広がるからです。さらに統合失調症などが子や孫に伝わる「戦争記憶の世代間伝達」も沖縄戦の特徴です。バスで一緒になった男性(68)は自分の統合失調症が沖縄戦と関係があるのか知りたくて参加したと言っていましたが、確かに関係があるのです。蟻塚さんは、「戦争体験者の記憶はけっして風化しない。戦争記憶の”風化”とは『慰安婦』や南京虐殺を否定する勢力による人為的・政治的産物にほかならない」と強調しました。
 蟻塚さんは現在治療にあたっている福島の状況について、「うつ病とはちがう不眠などは震災トラウマととらえることが必要」だと指摘。原発避難者の「なにもかも宙ぶらりんな状態」「先が見えない」という「あいまいな喪失」、さらに健常者が「死んだほうがいい」と思う「希死念慮」の広がりは、「うつ病という防衛反応に直結しないだけに逆に怖い」と警告。「福島でも60年後には必ず沖縄と同じ現象(トラウマによるストレス症候群)が出てくる。だからこそ沖縄戦の研究をもっと行わなければならない」と強調しました。
 日本政府は戦後、各都道府県の戦争被害調査を実施しましたが、沖縄だけは行っていません。しかし、沖縄戦のトラウマによる諸症状を調べ対策を講じることは、沖縄だけでなく、福島や他の被災地の救済、さらにはこれからの被災者救済にも直結する課題です。差別されている沖縄が全国の先駆け・灯台になる。ここにも沖縄の歴史的位置を感じます。

 <今日の注目記事>(16日付沖縄タイムス2面から。琉球新報も2面)

 ☆<沖縄単独洲 実現探る 識者ら提言「経済発展・緊張緩和に」>

 「他の道州よりも高い次元の自治権を目指す『特例型・沖縄単独洲を実現する県議会議員経験者の会』(外間盛善会長)は15日、吉元政矩元副知事や仲地博沖縄大学副学長らを招き、那覇市内でシンポジウムを開いた。自民党が今国会で道州制推進基本法案の提出を目指すのを前に、規制緩和を進めアジアの中心として経済発展を図り、地域の緊張緩和へ寄与する沖縄単独洲像について議論を深めた。・・・宮城弘岩アジア沖縄経済研究所所長は『台湾や香港、北九州との連携を想定しなければならない。基地問題や尖閣問題は日米政府や日中政府間だけでは解決しない』と述べ、経済的な発展とともに沖縄の役割を高め、軍事的緊張の緩和を模索すべきだと訴えた」
 参加したかったシンポです。「独立」とは別に、こうした「沖縄の自治・自立」を目指す動きも強まっています。


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