アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

「所有者不明土地」に見る沖縄の戦禍

2013年06月23日 | 日記・エッセイ・コラム

PhotoPhoto_2 22日夜放送されたNHK・ETV特集「”所有者不明”の土地から見た沖縄の戦後史」は衝撃的な内容でした。以下、その要点です(写真も)。
 沖縄には所有者が分からない土地(写真左)が2663筆、805,490㎡(東京ドーム20個分)もあります。メインストリート国際通りのすぐ裏手にある墓地などもそうです。県が管理していますが、管理費の累計は6億3000万円にものぼっています。開発などの障害になっていますが、その実態調査は昨年やっと初めて行われました。
 なぜこれほど膨大な所有者不明土地があるのか。原因は言うまでもなく沖縄戦です。2つの意味があります。1つは戦争で1300世帯以上が一家全滅したこと。もう1つは戦後残された3000人以上の戦災孤児。その多くは学校にも行けず、文字の読み書きができない人もいて、戦後直後に行われた土地所有申請書に記入できず、その後も申請手続きができなかったことです。番組ではいずれもその実例が紹介されました。今、県に所有申請しても「裁判原則」の名のもとに突き返され、訴訟を起こすように言われます。しかし高齢化している所有者が(とくに離島では)訴訟を起こすのはほぼ不可能です。
 ところが同じ不明地でも、「復帰」後速やかに「解決」した土地があります。「位置境界不明地」といわれるものです。1977年に位置境界明確化法が成立。なぜこちらは迅速に処理されたのか。米軍基地使用のためです。米軍が強制的に貸借関係を成立させる必要から強行的に境界線を画定したのです。その一方、米軍基地によって所有地が海に沈められながら、所有権が証明できないため涙をのまざるをえない人もいます。こうして何重にも戦争のために土地の権利を奪われている沖縄を、仲地博沖縄大副学長は「放置の沖縄」だと言います。
 「所有者不明土地」解決のめどは、今もまったく立っていません。
 沖縄の戦禍は計り知れません。関係者の高齢化によって、知られないまま歴史に埋没していこうとしている事実がまだまだたくさんあるのではないでしょうか。

 <今日の注目記事>(23日付沖縄タイムス2、3面見開き)

 ☆<閣僚の参列「なぜ今」 慰霊の意義失う恐れ 辺野古推進への「宣撫工作」 「目的達成      の手段 死者冒涜」>
 

 「本土復帰41年目にして初めて防衛大臣、外務大臣が出席して沖縄全戦没者追悼式が23日、開催される。日米安全保障体制を支える閣僚の参列は、米軍普天間飛行場の辺野古移設を進める政府の説得作業の一環にも映る。・・・大田昌秀さん=元県知事『慰霊に込められた人々の悲しさ、怒り、苦しみ、嘆き。それが、みんな失われてしまう恐れがある』・・・『形式的に、ただ式典に参加すればいい、ましてや式典に参加して何かを得ようとか、大きな目的があって、それを達成する手段に使われたら、死者たちを冒涜することになる』」


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