角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

目立たない努力。

2014年05月29日 | 実演日記




今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き[四阡六百円]
緑が爽やかなこの時季に合わせ、緑尽くしで編んでみました。桜が散った直後の明るい若葉も、ここにきて緑が深まった気がします。そんな意味でも今の時季にピッタリじゃないでしょうか。
「今日の草履」は東京からお越しのおばさまが、『どうしても緑が好きなのよね~』とお選びくださいました。

関心高く草履実演をご覧のうえ、角館草履を気に入ってくださるお客様からときに言われる言葉が、『こんな奥じゃなく、もっと外から見えるとこにいればいいのに~』。それはきっと、「珍しい草履なのだから、もっと多くの人たちに紹介すればいい」という意味なんでしょう。なんともありがたいお言葉であります。

一昨日静岡県からお越しのおばさま二人旅にも、ちょうど同じことを言われました。それぞれお気に入りの配色をお選びになり、ご帰宅してからご主人も欲しいとなったらお電話をくださるそうです。こちらのおばさまたちが、『歩いている人から見えるところで編んだら?』。
『元来恥ずかしがり屋なもんで…』と大笑いしましたが、そう言ってくださるのはとても嬉しかったです。

通りに面した場所で草履を編むのになんの抵抗もありません。西宮家の奥まで入るつもりのないお客様にも、おそらく告知される効果はあるでしょう。けれども、奥まで入ったからこその「出会い」が、実は面白いとも思っているんです。すべては「ご縁」ですから、西宮家で草履を編む生活が続くうちは今の位置を動こうとは思いませんね。「珍しいもの」があまり目立ってもマズいでしょ。

5月12日のブログでご紹介した横浜市のご夫婦のご主人から、今日お手紙が届きました。旅の思い出を綴る中で嬉しかったのは、『マスコミで紹介する角館と自分の目で見る角館は、やはり差があるようです。歩いて散策すると、なんとも言えない良さがありました。そこで吹いた尺八は、思い出しても良かったです』。
こちらのご主人が尺八を演奏する話は先のブログにも書いていますが、実は武家屋敷通りでも尺八を吹いて、『ほかのお客様のご迷惑になりますから…』とやめさせられたんだそうです。翌日二度目のご訪問で教えられたのですが、ご夫婦はそれさえも笑いに変えてしまうんですね。

さすがに武家屋敷通りで尺八は私も少々無理があったと思いますが、こうしたタイプの「変わり者」が私は大好きなんですよ。「珍しいもの」や「変わり者」は、少しばかり目立たない努力をするくらいがちょうど良いのかもしれません。
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