角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

よく見てくれれば…。

2008年04月29日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズMグループ23cm土踏まず付き〔4000円〕
黄色の無地をベースに、合わせは夜桜です。ベースの明るさに夜桜がよく映えますね、綺麗な配色と思います。

今日は朝から気持ちの良い青空です。気温も上々、私たちも気持ちがイイですが、散策のお客様はなおさらそうお感じでしょう。でもやっぱり今日も言われました、『これで桜があったらねぇ…』。

ビニールロープと布だけで編む「布草履」。これを編んでいる人や履いている人が多いのは、しばらくまえからこのブログでもお伝えしています。そうした方は私の実演にも関心が高く、お買い上げの比率も高いように感じます。

「布草履」の認知度が高くなるに連れて、「知人が編んでいる」あるいは「知人が履いている」という方が実に多くなりました。その程度の認識ですと、角館草履も布草履と思い込むようです。足を止めて実演をご覧くだされば違いが分かるのですが、パネルに並んだ草履だけを眺めて、『あぁ布草履ね、○○さんが履いてたわ、今流行ってんのよ』と言いながら通過する方が結構います。

そうした方々ひとりひとりにお声を掛けるわけにも行きませんから、それはそれで仕方のないことと理解しています。ただ出来るものであれば、せっかく角館へ、まして西宮家までお越しなんですから、角館草履を見て欲しいとは思うんですね。
草履を編みながら『あぁ布草履ね』の言葉を聞くと、「よく見てくれればなぁ…」と思うわけです。

実演席のすぐ近くに「トイレ」があります。入り口の戸には「お手洗い」の紙札が貼られてあるのですが、よく訊かれるのが『トイレはありませんか?』。目の前の戸を指差して『ここですよぉ』とお応えすると、あまりの目の前にお客様のほうが照れくさそうにするんですね。
これもまた、「よく見てくれれば…」ですね。

実演席側の出入り口から米蔵へ入ると、蔵内へ上るには赤いジュータンを渡ります。ここは車椅子でも上がれるようにスロープになっていて、車輪が落ちないよう僅かの立ち上がりがついています。
この立ち上がりにつまづく方がときどきいるのですが、子どもやお年寄りに多いかというとそうではなくて、おしゃべりに夢中になって歩いているおばさまなんですね。旅の有頂天は分かりますが、足元も「よく見てくれれば…」と思う瞬間です。

草履を編みながらでもおしゃべりが出来る、これが私の信条のひとつです。ただし草履の部分によって、目が話せない箇所がいくつかあります。ちょうどそこへ差し掛かったとき、少し遠めで見ていたおばさまが『あっ、そうかぁ、イ草に巻いてるんだぁ』。
編んでいる草履から目を離さないまま、『そうなんですよ、このイ草が体重をしっかり支えるんですね』とお応えしました。するとおばさま、『あらやだっ、私も大丈夫!?はっはっはっ』。その言葉で顔を上げると、そこには少々メタボなおばさまがお立ちでした。

一番よく見なければならないのは、どうやら草履職人のようですなぁ。

コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 人はひとりでは…。 | トップ | 草履とケータイ。 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

実演日記」カテゴリの最新記事