角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

幸せな家庭。

2010年11月02日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き〔四阡円〕
グレー基調の桜花プリントをベースに、合わせはこげ茶の花柄プリントです。
「地味」とは違う、落ち着いた大人の配色とでも言いましょうか。グレーや茶色を使った草履は、私が最も好きな配色のひとつです。平生地はこちらになります。




仙台市からお越しのおばさまひとり旅。秋田市で大学生生活を送っている娘さんの元を訪ねるそうですから、純粋な「旅」とは少し違いますね。でも角館に着いてからひとりでお買い物やら食事を楽しまれたそうですから、やっぱり「旅気分」は間違いないでしょう。

角館草履も気に入ってくださり、ご自身用と娘さん用をお買い上げです。するとどちらかへメールを送っていました。ほどなく届いた返信におばさまは、『息子なんですけどね、いつもはこんなに早く返信なんか来ないのに、草履を訊いたら“欲しい”ですって』。
いたずらっぽく笑うおばさまに、幸せなご家庭を垣間見た気がしましたね。

昨日のこと、ツアーでお越しのご夫婦がお立ち寄りでした。ご主人がひとり丸太椅子に腰を下ろし、実演を眺めながらおしゃべりです。角館草履の特徴を知ると、次第に欲しくなったんですね。『今日の財布はみんなおかあちゃんだから、ちょっと頼んでみるよ』と奥様の元へ。

米蔵の中では奥様が、藍染めのバッグを買うかあきらめるか思案中でした。悩みぬいている奥様に対してご主人は、『それだけ欲しいんなら買わなきゃダメだよ。オレの草履はあきらめるからさぁ』。
ご主人に背中を押された奥様は、いそいそとバッグをお買い上げです。そしてお帰りの際独り言のように、『お父さん、草履はいいのかしら?』。

ご主人は一足先に米蔵を出て行かれましたから、『今日はお母さんが最優先らしいですよっ』と私が言うと、奥様は満面の笑顔でご主人の後を追いました。
草履の売上がひとつ減ったにしても、幸せなご夫婦を見せていただいた満足感は充分味わえましたね。

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