角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

「モノ」への感謝。

2007年12月28日 | 製作日記


今日の草履は、彩シリーズMグループ21cm土踏まず付き〔4000円〕
茶色基調の花柄をベースに、合わせは緑のグラデーションです。濃い色合わせながら、お洒落に仕上がりました。やはり中高年のおばさま向きでしょうか。

カミさんの妹夫婦が三人の子どもを連れて遊びに来ています。今年八月に法事で帰省したとき、中学二年の長男に『将来やりたい仕事はあるおご?』と訊いてみたところ、『ん~、設計士かなぁ』。
私も一度は目指した職業、なんとなく嬉しくなったものです。

昨晩みんなで晩御飯を食べながら、『設計士になる夢は変わってねぇが?』と訊いてみると、『ん、んん~、変わったわけじゃないんだけどぉ…』とやや歯切れの悪い返答。すかさずカミさんが甥っこに助け舟を出すが如く、『やりたいことなんかいくつも変わるんだよ、一番知ってるの自分でねおごっ』。
返す言葉もございません、はい。

どちらからお越しの方か聞き漏らしましたが、今年の春だったと思います。中年の女性に、『私には無理、いろんな人がいるわよねぇ』としみじみ言われたことがあります。しばし実演をご覧の後、おしゃべりがはじまったと同時に言われましたから、言葉の真意を図りかねていました。
その後のおしゃべりで分かったのは、「一日座りっぱなしでひたすらものづくりに励む生活」、これが女性には「無理」という意味で、さらに付け加えるならばそんな仕事が「暗い」という印象をお持ちのようでした。

もちろんこれには反論があります。お客様を相手に「口論」はしませんが、お考えに極度な偏りがあるときは、率直に申し上げるのが私流の「親切」です。
まず「ものづくり」という仕事に偏見を持ってはいけませんね。どこかの誰かが作ってくれたモノを使用しあるいは食用し、人は生きています。人が生活するのに、すべて自分の手作りだけで賄うなんていうのは無理も甚だしいでしょう。

職業というものは、人それぞれ適材適所で働くのがなにより幸せです。こちらの女性がものづくりに適さないのは、それはそれでなんの不思議もありません。おそらくそうした環境とは違う世界で生きて来たんでしょうし、これからも生きて行くんでしょう。それでイイわけです。
少なくとも、自分には無理というだけでその道の人間を偏って見るのは誉められませんね。第一私の実演席に半日でもいたら、「暗い」なんて思わなくなりますよ。

『出来上がったモノだげ見だってダメだ。そのモノの中には、いろんな人たちの手が入ってる。そごへ想いが行がねばなっ』。
昨晩じーじがホロ酔い加減で、中学二年の外孫に話して聞かせた言葉です。ひとつのおとなの役目と思いますね。

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2 コメント

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Unknown (さんさん)
2007-12-28 17:10:21
お店に 見た事のある顔の初対面の女性と息子さんと娘さんが見えました。
初対面なのに見た事のある・・・!?
妹さんはそっくりでした。

この日記を見る前だったので、わからなかったけど
この日記見てたら すぐ、妹さんねって声かけたのにね~
沢山お買い上げいただきました。ありがとうございます。
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紹介記事 (草履職人)
2007-12-29 10:17:53
昨晩早速教えられだったよ~、『可愛い店だっけぇ』って。

八月に来たときに、『寄ってみればイイね』って言ってて、そのときは時間がなくて帰ったものな。
昨日、農業関係の広報誌で「さんさん」の紹介記事見つけて、思い出したように行ってみたんだど。

あの紹介記事は良く書けでらっけよ!
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