角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

チョコの想い出。

2008年02月17日 | 製作日記


今日の草履は、彩シリーズLグループ25cm土踏まず付き〔4500円〕
グレー基調の歌舞伎プリントをベースに、合わせは紺です。初登場のベース生地、巻かれてしまうと分からないのですが、歌舞伎の場面がプリントされているんですね。
在庫作りはLグループに入りました。25cmから順に大きなサイズへと移行していきます。今日の生地は最初に見たときからLグループに使おうと思っていて、ようやく第一号が作れました。と言ってもこの生地を使った草履は、3足限りの限定となります。

先日は「バレンタインデー」、三人娘それぞれが少しずつくれました。カミさんからはビスケットの袋菓子、元来菓子類を特に好むことはないのですが、このビスケットはなにげに食べるんです。さすがはカミさん、無駄なものは買いません。

今どきは「友チョコ」と言うんですか、わが家の娘たちもそれぞれにともだちと交換して来ます。中にはあんまり好みでないチョコが含まれるのでしょう、昨日になっても“おすそわけ”と称して私の手元へ届いています。
チョコレート業界はこのバレンタインデーで、年間売り上げの3~4割を稼ぐとのこと。そりゃそうでしょう、どう見ても似合わない私の作業場にこれだけのチョコがあるんですから。

私がチョコで想い出すのは、バレンタインデーとまったく関係ありません。それは32年前、中学一年生までさかのぼります。
私は山口百恵さんが大好きでした。秋田県出身の桜田淳子さんも可愛い人でしたが、どこか影のある大人びた百恵さんが好きだったんですね。そういう年頃だったんでしょう。
部屋の壁にはポスターやシングルレコードのジャケットが所狭しと貼られ、一年生のときの担任が家庭訪問でそれを見て、翌日クラスのみんなに紹介したほどです。

その年、当時の大曲市でコンサートが開かれるのを知り、しばらくのあいだはそればかりを楽しみにしていました。ちょうど「湖の決心」という曲が発売されたばかりで、この曲がまた好きだったんですよ。
こうしたコンサートや芸能人の舞台を見るのは、小学校低学年のときに当時の角館中学校体育館で開かれた「五木ひろしショー」が最初です。でもそのときは「連れて行かれた」が正直なところですから、自ら「行きたい」と思ったのはこれが初めてでした。ましてそれが大好きな百恵さんですから、待ちかねるその歓びというのはひとしおだったですね。

やがてコンサートがはじまり、数曲を歌い終わるとトークタイムがあるんです。しばらくおしゃべりを聴くと、ファンの人たちが用意した花束なんかを渡すためにステージ前まで行くんですよ。慣れている人はそういうのが常識なんでしょうが、田舎の中学一年坊主にそんな知識はありません。
『なんだ、なんだっ』とばかりに見つめていると、プレゼントを渡した人たちは握手までしてもらえるんです。それを見た思春期の草履職人は燃えましたねぇ、一目散に売店へ走り、買ったのが「苺のチョコレート」です。そのチョコを握り締めて、ステージ前へ辿り着いた私に司会者からかけられた言葉は、『はいっ、それじゃあプレゼントはこれくらいにして、次の曲へ参りましょー』。当時は司会者がいて進行を仕切っていました。

今年のバレンタインデーでも、想いを遂げられなかった女の子がきっといるでしょう。草履職人にはその気持ちが痛いほど分かるんですね。

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