今日の草履は、彩シリーズ25cm土踏まず付き〔四阡五百円〕
25cm草履のご注文に「赤系おまかせ」というのは少ないのですが、そんなご注文にはうってつけですね。ケバい赤とは違う「和」の赤は、男性用でもとてもお洒落に見えます。
大阪からお越しの男性ひとり旅。お歳の頃は三十歳代前半とお見受けしました。展示してある角館草履がなんとなく気になったのでしょう、お勧めするままに試し履きをされました。すると、『気になったということは、やっぱり体が要求しているんでしょうね』と、心のおもむくままの如くお買い上げを決められました。
男性はこの旅で秋田県内数ヶ所を回っているとのことですが、そのひとつが旧雄勝町。現在湯沢市に編入されているこの町は、秋田県内陸部の最南端に位置し、山形県と接しています。「小野小町の里」を名乗る以外は「院内銀山」が観光資源ですが、全国から大勢の人が立ち寄るという土地ではありません。そんな雄勝町に男性はどんな目的で訪れたのか、それは「ルーツを知る」ためなんですね。
男性のご両親はもう二十年も前に離婚し、お母上と生活を伴にした男性はそのままお父上との音信が断たれました。旧雄勝町はお父上のふるさとで、何人かいる親類縁者も日常にお父上との音信はないとのこと。
それほど縁が希薄になった雄勝町をどうして訪ねたくなったのか、それは幼き日に見た光景があまりに鮮烈だったからと言います。
実演席のおしゃべりでときにテーマとなるのが、「ふるさと」なんですね。特に首都圏で生まれ育ち、両親や祖父母も首都圏生まれだと、いわゆる身近に「田舎」というものがないわけです。そうした人たちはそのことをとても残念がるんですよ。別に旅行で行けさえすれば、自身に田舎があってもなくても構わない気がするのですが、どうもそうは割り切れないものがあるようです。
人というのは、裏山や原っぱ、田んぼや畑、沼や小川といったものに、脳の深いところで「ふるさと」を感じているのかも知れません。やがて還る場所がふるさととすれば、それがコンクリートジャングルでは脳が認めないのでしょう。
先の男性が雄勝町を訪ねたいと思ったのも、父のふるさとに自身のふるさとを重ねたためじゃないですかね。
こちらの男性とは、小一時間おしゃべりしました。人様のこうした話を聞いて、私自身も普段何気に暮らすふるさとを考えてしまいましたよ。
ふるさと角館はお祭りの準備、「ヤマこしゃ」がはじまりました。もう秋の香りです。
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