角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

イ草香る季節。

2011年07月08日 | 製作日記




今日の草履は、彩シリーズ26cm土踏まず付き〔四阡五百円〕
明るい二種を組み合わせたことで、賑やかな楽しい草履になりました。お若い男性はもちろんのこと、中高年の男性にもぜひお勧めしたい一品です。
組み合わせの「辛子色」なんですが、私はこの色がかなり好きですね。それも草履を編むようになって知りました。

『あらっ、畳の匂いじゃないっ!?』。実演席でよく言われる言葉のひとつです。草履や草履作りになにほどの関心がなくとも、実演席前を通過する際にふと気づくのでしょう。一般に日本人は畳の匂いが好きですから、角館草履はその点にも話題性があると思っています。

イ草が強く匂いを発するのはちょうど今くらいの季節、湿度が高い梅雨時や雨模様のときです。大気中の水分を吸収したイ草は、とても元気に匂いを出しますね。草履を編む際一旦水かぬるま湯に浸すのですが、これを乾かすため新聞紙の上に広げると、わが家の小さな作業場は隅々までイ草の香りが立ち込めます。

イ草の刈り取り時期も、ちょうど今くらいらしいですね。熊本県八代市が梅雨明けし、真夏の太陽が照りつける中での刈り取りなんだそうです。あまりの過酷さに、「イ草を刈る」→「イを切る」→「生きる」、「生きるためにやらねばならない」と云われるほどだと、八代からの旅人に教わったことがありました。

角館草履はイ草がなければ始まりません。イ草農家の過酷な作業の上に収穫されると想えば、たとえ僅かでもムダに出来ないと思いますよ。
古き良き時代、懐かしいふるさと、大の字になって昼寝した畳。イ草の匂いには、まさに「日本」が感じられますね。

そしてどうやら、こいつも「日本」が分かるようです。
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