角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

ちいさん記念日。

2013年09月01日 | 実演日記





今日の草履は、彩シリーズ足半タイプ〔四阡円〕
足半タイプを発売して三年になりますが、一定の需要があるのは間違いなさそうです。毎年の売り上げ数で、21cm草履とほぼ同じなんですね。主力にはならなくとも、バリエーションの中に是非欲しいタイプとでも言いますか。角館草履の中で“名脇役”になっています。

今日9月1日は「ちいさん記念日」。ちい散歩角館ロケが行われたのは、三年前2010年9月1日のことでした。今日の天気とはずいぶん違って、30℃を超える厳しい残暑だったのを憶えています。そしてその日から一年九ヶ月後の2012年6月29日、ちいさんは還らぬ人となりました。

草履の展示パネルに、ロケの写真を一枚飾ってあります。その写真を見つけたお客様とよくちいさんの話になるのですが、そんなときも地井武男さんという人の人気が分かりますね。中にはほんとに大ファンだったという人もいて、草履よりちいさんの話で盛り上がることもしばしばですよ。

七月のことでした。ご夫婦と思うのですが、20代半ばと思しき女性のほうが、かつてちいさんとご近所さんだったといいます。『よく玄関先で会ってたんですけど、ほんとに気さくなフツーの人なんですよ。いつだったかロケ先からいただいたというお土産を、量がたくさんだからっておすそ分けしてもらったことがありました~』。

思い出話をしている女性のお顔を見ていると、その場面が目に浮かぶようでした。私が角館ロケの様子を話すと、やはり同じように目に浮かぶのでしょう。女性は何度も「うん、うん」とうなずいていましたね。そして角館草履のご愛用者となってくださいました。

お盆の少し前に出会ったのは、川崎市からお越しの女性ふたり旅。24歳で共に看護師さんといいます。わが家の次女が看護師学校の学生のため、どうしても話を聞きたくなるんですね。『看護実習はずいぶん泣いてるみたい』と言うと、お二人もその手の思い出はずいぶんありそうで、『今も泣いてますけどね』と苦笑いしていました。

うちのおひとりが、やはりちいさんのファンということです。『亡くなったと知ったときは泣きましたねぇ』という女性は、話をしていてもどこか“古風さ”のある人でした。
ちいさんの命日に発売された「ちい散歩写真集」は自宅へ置いてあったため、残念ながら彼女たちにお見せすることはできませんでした。すると女性は、『戻ったら本屋さんへ行ってみますぅ』。

それから数日経って、手書きの可愛らしい手紙が一通届きました。差出人のお名前に覚えはありません。でもその送り主が誰なのかは一瞬で分かりました。そこに書かれてあった文字は「想 創 奏」、ちい散歩メモリアルフォトブックのタイトルなんですね。数日前に出会った“古風な女性”、その人でありました。

手紙には無事に写真集を買い求めたことと、角館を訪ねた旅の思い出が綴られています。女性の初角館の思い出に、草履職人が少しは役立ったことを文面で知ると、ことのほか嬉しくなりました。
そして彼女も角館草履のご愛用者となっています。

地井武男さんという人は、常に主役を張るスターではなかったと思います。それでもこれだけの人気を得ていたということは、他の人にはない「何か」を持っていたからと思うんですね。
角館草履も角館の草履職人も、目指すところは“名脇役”じゃないかと感じています。
コメント
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