あを雲の涯

「 二、二六事件て何や 」
親友・長野が問う
「 世直しや 」
私はそう答えた

中橋基明 『 義を見てせざるは勇無きなり 』

2021年08月26日 12時13分28秒 | 中橋基明

「諸君!チャムスの荒野の未開地には内地から武装農民が鳴り物入りで入植しています。
冬は零下三〇度にまで下がる大地です。
食うや食わずでゲリラの襲撃に怯えている一方で、
新京の料亭では幹部が芸者を侍らせて毎晩、豪勢な宴会を繰り広げている。
もっと下の将校たちも、ゲリラの討伐に出るとしばらく酒が飲めないと云って、
市中に出て酒を飲み、酩酊して酒席で秘密を漏らしてしまう。
果ては討伐に一週間出て、功績を上げれば勲章が貰えるというので、
必要もないのにむやみに部隊を出す将校もいる。
ですがゲリラにも遭遇しません。
これが軍の統計上、一日に平均二回、討伐に出ていると称していることの実態です。
皇軍は腐敗し切っているのです。
こんなことで満蒙の生命線は守れますか?
日清日露を戦った貧しい兵士一〇万人の血で贖われた土地ですよ!
みなさん!
必要なのは粛軍!
それゆえ我々は蹶起したのです!」

・・・中橋中尉 ・ 幸楽での演説 「 明朝決戦 やむなし ! 」 

万民に
一視同仁であらせられるべき英邁な大御心が
我々を暴徒と退けられた。
君側の奸を討つことで大御心に副う国内改革を断行する。
これらを大義とした蹶起が、なんと陛下ご自身から拒絶を受ける。
一命を賭した直接行動は、単に大元帥陛下に弓を引くだけに終わったのか。
オレの蹶起行動になんの意味があったのか。
・・・万民に 一視同仁であらせられるべき英邁な大御心が 我々を暴徒と退けられた


中橋基明  ナカハシ モトアキ
『 義を見てせざるは勇無きなり 』
参加の動機は如何との法務官の問に、そう答えた

目次
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・ 昭和維新 ・中橋基明中尉
・ 中橋基明中尉の四日間 

中橋中尉は抜刀して号令をかけた
「 気を付け 前列三歩前へ 番号 右向け右 前へ進め 」

こうして前列の者が第一小隊となって出発した
途中シャム公使館のくらがりで停止、
第一小隊だけに実包が配られた

中橋中尉は実包を私ながら小さな声で
「 国賊高橋是清を倒せ 」 と号令した
・・・近衛歩兵第三聯隊七中 隊龍前新也二等兵

  雪未だ降りやまず(続二・二六事件と郷土兵)から

中橋基明中尉 「 吾、宮城を占據す 」 
・ 朝日新聞社襲撃 『 國賊 朝日新聞を叩き壊すのだ 』 
・ 朝日新聞社襲撃 ・緒方竹虎 
中橋中尉 ・ 幸楽での演説 「 明朝決戦 やむなし ! 」 
・ 最期の陳述 ・ 中橋基明 「 大義のために法を破ったものであります 」 

吾人は決して社会民主革命を行ひしに非ず。
国体叛逆を行ひしに非ず。
国の御稜威を犯せし者を払ひしのみ。
事件間、維新の詔勅の原稿を見たる将校あり、
明らかに維新にならんとして反転せるなり、
奸臣の為に汚名を着せられ且つ清算せれるるなり。
正しく残念なり。
我々を民主革命者と称し、我々を清算せる幕僚共は昭和維新と称するなり。
秩父宮殿下、歩三に居られし当時、
国家改造法案も良く御研究になり、改造に関しては良く理解せられ、
此度蹶起せる坂井中尉に対しては御殿において
「 蹶起の際は一中隊を引率して迎へに来い 」 と仰せられしなり。
之を以てしても民主革命ならざる事を知り得るなり。
国体擁護の為に蹶起せるものを惨殺して後に何が残るや、
来るべきは共産革命に非ざるやを心配するものなり。
日蘇会戦の場合果して勝算ありや、内外に敵を受けて如何となす。
吾人が成仏せんが為には昭和維新あるのみ。
「日本国家改造法案」は共産革命ならず。
真意を読取るを要す。
吾人は北、西田に引きづられしに非ず、
現在の弊風を目視し之を改革せんとするには、
軍人の外非ざるを以て行ひしなり。
« 註 » 
文中、維新の詔勅の原稿を見たる将校あり、というのは安藤輝三大尉のことである。
また、秩父宮殿下が坂井直中尉に対して 「 蹶起の際は一中隊引率して迎へに来い 」 と謂われたとあるが、
坂井中尉は これについて何も書く残していないので、確める術はない。
殿下との連絡将校であった坂井中尉がふと話したことが、おそらく中橋中尉に強く印象づけられたのであろう。


・ 
中橋基明 『 感想 』 
・ 
中橋基明 『 随筆 』 
あを雲の涯 (十一) 中橋基明 
・ 昭和11年7月12日 (十一) 中橋基明中尉 


昭和一一年七月一二日(日)早朝 死刑が執行される
中橋基明中尉のみは
一発、二発で落命せず、三発目にして落命した、
全身血達磨であったと謂う 
笑ひ声もきこえる。
その声たるや誠にいん惨である。
悪鬼がゲラゲラと笑う声にも比較できぬ声だ。
澄み切った非常なる怒りと恨みと憤激とから来る涙のはての笑声だ。
カラカラしたちっともウルオイのない澄み切った笑声だ。
うれしくてたまらぬ時の涙よりもっともっとひどい、形容の出来ぬ悲しみの極の笑だ
・・・磯部浅一 ・  獄中日記 (三) 八月十二日 「 先月十二日は日本の悲劇であつた 」 


栗原安秀中尉達の寄書き

2021年08月26日 05時03分53秒 | あを雲の涯 (獄中手記、遺書)

自衛論
一、自然ノ法則
萬物ノ生存スルヤ絶ヘス四周ヨリ侵碍セラルヽヲ以テ自ラコレカ防衛ノ術を有ス
自然界ニ於テ常ニ現象セラルヽ自營本能ハコレニシテ生物ノ天賦ノ權利トス、
故ニ一朝コレヲ失ハンカ忽チニシテ強敵ヨリ殘賊セラレ衰滅スルモノトス
人類モ亦コノ法則ヲ有スルハ當然ナリ
二、私人ノ權利
人ノ社會を形成スルヤ一定ノ規範ニヨリソノ生命名譽權利ヲ保證セラル、
サレトコノ保證ノ突差ノ間實施セラレサル時ハ自ラ防衛セラルヘカラス、
コレ法律ニ於テ正當防衛ノ認メラルヽトコロナリ
三、國家ノ權利
國家ハ常ニ外周ノ他國ト内部ヨリスル自潰作用ヨリ脅威セラル、
即チ内部ニ對シテハ法律ヲ以テ外部ニ對シテハ開戰ノ權利ヲ以テ防衛ノ手段トス、
而シテコレ行使ノ骨幹ハ國家ノ威力軍人ノ任務ノ國家ヲ保護スルニアリトナス所以ハコヽニアリ
四、國體擁護ノ爲ノ軍人ノ公人トシテノ任務
公人トシテノ軍人ハ國體ヲ破丯シ又ハ破壞セントシ者ニ對し當然の權利トシテコレヲ斃サヽルヘカラス、
コレ國家ノ爲正當ナル手段ナレハナリ、
即チカクノ如キ場合ヲ正當防衛ナリト主張スル所以ナリ


栗原安秀中尉達の寄書

國  國體論  建國ノ歷史顯現  國體論
獨斷蹶起  歷史的  安  國體論
破壞  護  栗原 
立證  自衛的
壓迫

顯  否定
惡素質
特殊性

五、余等ノ蹶起ノ大ナル獨斷ナリト主張スル理由、
若シ統帥權干犯者  天皇機關説論者等ノ國體破
壊者ノ法律ニヨリ罰セラルヽコトナク 寧ロソノ法律ニヨリ保
護セラレアル時ハ國内的ニ法律ノ權力ナキ□故最終ノ
手段トシテハ軍隊アルノミナリ、   即チコレカ攻撃ハ大ナル
獨斷専行トナストコロナリ、要ハ國體破壊ノ事實ヲ
立證セハ可ナルヘシ、
六  維新ニ於ケル自衛的内容
人間社會ニ於テモ下層者ノ上層者ヨリ絶ヘス各種ノ壓
迫ヲ受ケツヽアルハ現實的事實トス、  而シテコリカ累□積
ノ遂ニ下層者ノ自衛的爆發トナルハ革命ノ原則ニシテ
民族自體ノ一種ノ自衛作用ナリ、
日本ニオケル維新ノコノ種意義内容ヲ包持シアルハ否

定シ難キモ、顯者ナル事實トシテ維新ノ主因ヲナスハ即チ
國體破壊者ニ對スル國家ノ淨化作用ニシテ維新ハ
又國家ノ自衛ナリトモ云フ得ヘシ、
カクノ如ク國家自體カ時勢ノ進運ニ伴ヒ逐次生シキタル
矛盾、惡質素ヲ否定排除シツヽ進化スル點ニ日本ノ
國體ノ特殊性アリ、    而シテコレカ作用ノ主タル原動力
ヲナス者ハ即チ軍人 ( 正シキ力 ) トナス。

國體論、
神代ノ意義、   考古學的  人種學的  人間の常識  民族理想ノ集約
建國ノ歴史、    神武創業ノ□□
國家ノ進化、    社會進化ノ法則、世界民族ノ原則  氏□□  ローマ法皇權  國民□□ノ進化
萬世一系ノ天皇、    萬世一系ノ理想  明治維新  帝と絶對者  □□□□□
日本臣民、    克ク忠  克ク孝  先賢□□
維新ノ意義、    大化ノ改新  建武ノ中興  明治維新  昭和維新
國家ノ理想、    一君萬民  君臣一體  義ハ君臣  情ハ父子
皇道ノ世界宣布    日本ノ皇化ニウルホス、

河野司 著  二 ・二六事件秘話  から