あを雲の涯

「 二、二六事件て何や 」
親友・長野が問う
「 世直しや 」
私はそう答えた

後に殘りし者

2020年12月31日 14時33分33秒 | 後に殘りし者

「 事件の処理は私がやった 」
との 陛下のお言葉のように、
この段階で進めらていた陸軍首脳の方針に、
待った、を かけられた陛下のご意志のまえに、軍当局は絶対的な苦悩に陥ることになった。
朝令暮改というが、陛下の激怒によって軍首脳は、今や施す術がなかった。
百八十度の変転である。

「 陸軍大臣告示 」 はどうして消えたか
昭和四十六年十一月の、外国記者団との会見における天皇の発言によれば、
二・二六事件の収拾処置は自分が命令した、
それは憲法の規制を逸脱した専断であった。

と 認められている。
憲法によれば、
国政を預る政府責任当局の決定に対しては、天皇といえどもそれを否認する拒否権はない。
その憲法無視を敢て強行された天皇の意志が、二・二六事件蹶起完敗のすべてであった。
事件は陸軍軍隊によって起された暴発であり、この収拾は軍当局の責任である。
その責任下に決定、告示された 「 陸軍大臣告示 」 が、
わずか半日にして姿を消したことは、一に 天皇の意志であり 激怒 であった。
いかに憲法上は正しい大臣告示でも、
神厳にしておかすべからずの天皇の意志の前には、軍人として一も 二もなく 為す術はなかったろう。
天皇の意志に反した告示など、存在する運命はなかった。
天皇の鎮圧すべしとする意思決定の段階で、「 陸軍大臣告示 」 の存在理由はなくなったのである。



後に殘りし者

目次
クリック して頁を読む

昭和天皇
・ 
二・二六事件の収拾処置は自分が命令した 

・ 末松太平 『 二 ・二六をぶっつぶしたのは天皇ですよ 』

林八郎 『 不惜身命 』 
・ 鈴木貫太郎 ・ 自伝で語る安藤輝三 
・ 
栗原中尉の仇討計画 
尾島健次郎曹長 「 たしかに岡田は、あの下にいたんですよ 」 

池田俊彦少尉、常盤稔少尉、鈴木金次郎少尉、清原康平少尉、今泉義道少尉
・ 
生き殘りし者 1 首相官邸 「 人違いじゃないですか ?」 
・ 生き殘りし者 2 宮城占據計畫 「 陛下に叱られて本庄さんが動けなくなった 」 
・ 
生き殘りし者 3 麹町地區警備隊 「 師團長はこれで昭和維新になると思った 」 

池田俊彦少尉、鈴木金次郎少尉
・ 生き殘りし者 ・ 我々はなぜ蹶起したのか 1 
・ 生き殘りし者 ・ 我々はなぜ蹶起したのか 2 

岡田啓介、安井藤治、大蔵栄一 他
・ 
殘った者 ・ それぞれの想い (一) 「 指揮したのは村中 」 
・ 
殘った者 ・ それぞれの想い (二) 「 昭和維新に賛成して下さい 」 

齋藤史
・ 
齋藤史の二 ・二六事件 1 「 ねこまた 」 
・ 齋藤史の二 ・二六事件 2 「 二 ・二六事件 」 
齋藤史の二 ・二六事件 3 「 天皇陛下萬歳 」 
・ 
ある日より 現神は人間となりたまひ 
・ 
野の中に すがたゆたけき 一樹あり  風も月日も 枝に抱きて 

・ 
眞崎甚三郎 ・ 暗黒裁判 二 ・二六事件 
・ 傍聴者 ・ 憲兵 金子桂伍長 

・ 
拵えられた裁判記録
・ 
匂坂春平檢察官 『 きょうは四人の方々の命日だね 』


然レドモ朕ハ爾等國民ト共ニ有リ、
常ニ利害ヲ同ジウシ休戚ヲ分タント欲ス。

朕 ト 爾等國民トノ間ノ紐帯ハ、
終始相互ノ信頼ト敬愛トニ依リテ結バレ、

単ナル神話ト伝説トニ依リテ生ゼルモノニ非ズ。
天皇 ヲ以テ
現御神トシ、
且 日本國民を以テ
他ノ民族ニ優越セル民族ニシテ、
延テ世界ヲ支配スベキ運命ヲ有ス
トノ 架空ナル観念ニ基クモノニ非ズ
史 はさっそく池田町にいる父に手紙を認めた。
「 天皇は国民と共にあって、利害を同じくするのだそうです。
お互いは信頼と敬愛の絆で結ばれていて、
それは神話や伝説に基づくものではないと仰せられています。
天皇のことを神と考えたり、
日本民族が多民族より優秀だと考えて
世界を支配する運命を持っている
といったことは 架空の観念だとおっしゃっております
父上様、
陛下は現御神、つまり現人神、であられることさえも否定されたのです。
史 には到底理解が及びません。」
・・・
瀏は何も答えなかった。

白きうさぎ 雪の山より出て来て
           殺されたれば 眼を開き居り 
・・・斉藤史