掲載写真はモット・ザ・フープルのドキュメンタリー映画「THE BALLAD OF
MOTT THE HOOPLE」の日本盤DVD。「すべての若き野郎ども」という邦題が
ついているが、この邦題は個人的には余計な感じがする。
11年に既に海外ではDVD化されていたが、ドキュメンタリーということもあって
字幕の付いた日本版の発売を期待して待っていたのだが、遅れること1年で
ようやく日本版が登場、満を持しての購入と相成った。
生存するメンバーや当時のローディーにファンクラブ会長、更にはモットの前座を務めた
クイーンのロジャー・テイラーや、ほとんどファン代表状態のクラッシュのミック・ジョーンズらが
バンドの想い出や内実を語り、バンド結成から解散までを時系列で追う。
映画の中で使用される演奏シーンで、1曲まるまる完奏する曲は皆無であるが、
元々モット・ザ・フープルの映像自体が少ないことと、ドキュメンタリー映画であることを
了解しているので、そこに関しての不満は無い。ボーナス映像で別個にテレビ出演シーンの
完全演奏版でも入れてくれれば、それに越したことは無いが。
ここで語られることの半分位は、いままでにも紙媒体やネットで見知っていたことではあるが
直接メンバー達によってそれらが語られると、当たり前ながらリアリティーの度合いが違う。
最初の解散決意後ボウイの援助を受けることも語られているが、アイランドから
CBSに移籍した理由を述べるのは難しかったようだ。当然そこには様々なしがらみが
絡んでいるのだろうが。
モットの歴史はアイランド・レーベル時代と、CBSに移籍した時代で分けることが
できるが、前半のアイランド時代はモットの歴史とほぼ同等にプロデューサーの
ガイ・スティーブンスにもスポットが当たる。モットを世に送り出しただけでなく、奇行でも
有名な変わり者プロデューサーが、如何にバンドに影響を与えた重要人物であったかが
浮き彫りにされる。
ガイはクラッシュのファンにとっては、あの「LONDON CALLING」をプロデュースした人
としても知られ、その「LONDON CALLING」25周年記念盤に添付されたDVDで、
レコーディング・スタジオにおけるガイの狂気を確認することができる。
個人的な嗜好を踏まえての物言いになるが、アイランド期のモットの迷走は、すなわち
イアン・ハンターの手になる曲と、他のメンバー作の曲の出来の違いが余りにも
乖離しすぎている点にあると思うのだ。バンド解散の危機を乗り越えCBS移籍以降の
アルバムのまとまりの良さは、すなわちバンドの主導権をほぼイアンが担ったおかげである。
そこに成功とはうらはらの軋轢が生じる。曲をつくる(採用される)メンバーとそうでない
メンバーとの間の音楽的見解の相違が生まれ、それ以上に金銭的揉め事が大きくなる。
ある者はバンドを去り、ある者は不満を抱きつつもバンドに残る。
レコード会社は更に売れるシングルやアルバムを求め、その結果バンドのメンバーは
必然的であれ消去法であれ、売れるレコードをつくるためにイアンを頼ることになる。
ほとんどバンド唯一のコンポーザーとなってしまったイアン・ハンターにのしかかる重圧という
新たな問題が生じ、バンドは解散の道を選ぶことになる。
実働6年ほどの儚くも短いバンドの歴史であるが、そこにはロック・ビジネスが抱える
多くの今も何ら変わることのない問題が詰め込まれていたことがよくわかる。
そんな中、モット・ザ・フープルがどれほどファンに愛され素晴らしい曲を残したかを
改めて再認識する優れたドキュメンタリーだと感じる映像であった。
映像と音声がシンクロしないが、ボウイ様とモットのステージでの共演を捉えた8ミリ映像には
驚いたし、穏やかな表情で多くのコメントを残すミック・ジョーンズの姿を多く見ることが
できるのも嬉しかった。
ボーナス映像で09年の再結成時の演奏が3曲収録されていて、その3曲はフルで見ることが
できる。オリジナル・メンバー全員参加の再結成であったが、闘病中のドラマーのバフィンは
数曲に参加したのみで、ほとんどの曲ではプリテンダーズのマーティン・チェンバースがドラムを
叩いていた。この再結成は09年にロンドンで5回行われたコンサートのためだけに実現し、
そのうちの3日めの演奏がCD化されている。映像が残っているのなら、いつかそれの完全版が
出ることも気長に待ちたい。
本編約100分、インタビュー中心のボーナス映像70分。3時間の長丁場であるが
モット・ザ・フープルの簡略化した歴史を知るにはこれくらいの尺は必要なのだ。
見終わった後、私はイアン・ハンターの、モット・ザ・フープルのファンで良かったと思った。
例え、ロックンロールが敗者のゲームだとしても・・・。
友達はミックジョーンズが何かにつけモットのことを話すので興味もったそうです。
ガイ、あのDVDかなりイッてましたね。
ミック・ジョーンズ、すっかり柔和ないいおじさんに
なっているのですが、その姿さえ微笑ましく感じるのは
贔屓の引き倒し(笑)なのでしょうね。
ガイは、あの2年後に亡くなるのですが、まるでキース・ムーンのような不思議な魅力のあった人なんだろうなと
思います。
>ようやく日本版が登場、満を持しての購入と相成った。
いずれご紹介があるかと思っていましたが、満を持しての登場と相成りました。
昔、アイランドがフィリップスやキングで日本盤としてでていたころ、なにかモコモコとしたバンドやなあ、と思っていたところ、グラムロック(笑)となってCBSソニーからえらくすっきりとして登場して、「えーーーっ!」と感じたのがほとんど40年前でしょうか。
しかし、それ以降通して聴いたことはありませんが、ずっとイアン・ハンターのカーリーヘアは気に入っております。 どの時代もサングラス付きで映っており、いわゆる「ロックスターやなあ(もちろん、感動の意味で)として認識しており、ファンでございます。
アイランド時代の「WILD LIFE」とか「MAD SHADOWS」と
いったアルバムは、今でもピンとこないところがあるのですが、CBS時代は全てO.K.であります。(笑)
リアルタイムで変貌ぶりを感じることはできませんでしたが、さぞ驚いたことだと思います。
1枚だけ83年の「ALL OF THE GOOD ONES ARE
TAKEN」でサングラスを外しているのが、今となっては
レアですね。