HARRY’S ROCK AND ROLL VILLAGE

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IF HE WAS ONLY A SONGWRITER~カバー・ソング100選への道・その14

2011-05-23 19:12:23 | THIS SONG

バッドフィンガー、いやピート・ハムの悲劇について想いを巡らすと、いつも到達するところは
同じだ。それはピートがバンドの一員でなく、職業作家だったら・・・ということである。
勿論、バッドフィンガーは素晴らしいバンドで、私もバッドフィンガー名義のアルバムは
「HEAD FIRST」は勿論、ピートのいない「AIR WAVES」や「SAY NO MORE」も所持している。
だが、バンドの一員であったことがピートの悲劇に大きく影を落としていると思うのだ。

バッドフィンガーの悲劇はアップル在籍中に、新しいマネージャーであるスタン・ポリーと契約したことから始まる。
財政困難なアップルを見捨て、新たな会社との契約を模索したスタンについていかざるを得ないバンドは
アルバムを作っても、あのアラン・クラインの妨害で新契約先のワーナーからは出せず、結局アップルから出した
ものの適当な扱いをうける。スタンはバンドに不利な支払条件ををメンバーの承諾なしに契約事項に織り込み
(こういうことには、当時のバンドマンは疎かったのだろう)、尚且つ勝手にワーナーの金を使い込む。
メンバー間の摩擦が大きくなる中で、それでも他のメンバーの誰よりもスタンを信じていたのはピートであったが
ワーナーとスタンの関係が破綻し、レコードは出せなくなりバンドへの支払いも履行されなくなる中、
悲劇が起ったというわけだ。

バンドというものは、自作の曲を採用されるかどうかでメンバー間で問題が起こり、マネージメント会社とは
バンド単位で契約している関係で、個人の身動きはとりにくい。そういう意味で、先に書いたようなことを
想ってしまうのだ。もし、ピート・ハムがバンドの一員でなくソングライターなら、もう少し身軽に動けたのでは
ないだろうか、と。

掲載写真は70年のアルバム「NO DICE」。ここに収録された『WITHOUT YOU』はニルスンにカバーされ
一躍有名な曲になった。
 その後も様々な歌手にカバーされ、最早スタンダードと言っても
いいだろう。しかし、そんな『WITHOUT YOU』も永遠の印税をもたらすであろう曲であるからこそ、後に
トム・エヴァンスとジョーイ・モーランドの間で揉め事が起こる。この曲の作者はピートとトムだが、曲が完成する
までの何らかの過程での貢献を理由にクレジットを要求すれば、バンドの人間関係が上手くいくはずもない。

 バッドフィンガーのアルバム「NO DICE」収録曲『MIDNIGHT
CALLER』はティム・ハーディンによって取り上げられ、72年のアルバム「PAINTED HEAD」に収録された。
ティムのこのアルバムは、自身がソングライターであるにも関わらず歌手としての自分を前面に出し、他人の曲ばかり
取り上げた盤である。バッドフィンガー・カバーはもう1曲『PERFECTION』をとりあげていることから、ティムは
ピートのことを高く評価していたことが伺える。他にもジェシ・ウィンチェスターの『YANKEE LADY』のカバーや、自身の
ルーツであるブルーズのカバーも聴きごたえがある。

ニルスンにしてもティム・ハーディンにしても、自身が作家として優れた曲を書くことが出来るにも関わらず
ピート・ハムの曲を取り上げた、ということが更に私の中でこの記事の冒頭で書いた想いを強くさせる。

『MIDNIGHT CALLER』の最後のバースでは「NOBODY THERE , NOBODY」と歌われる。
思えばティム・ハーディンの人生も悲劇の連続だった。
それでも、心あるロック者にとってピート・ハムのこともティム・ハーディンのことも「誰も知らない、誰も知らない」
なんてことは無いのだから。
カバー・ロック100選にはティム・ハーディンの歌う『MIDNIGHT CALLER』を選ぶことにしよう。

さあ、そろそろ私も家に帰る時間だ。

I'LL BE HOME・・・・


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