デヴィッド・ボウイの訃報に肩を落とす私に活力を取り戻してくれたのが、掲載写真の
遠藤賢司実況録音大全第四巻1992-1994であった。くしくも共に1月生まれの69歳。
ボウイは素晴らしい新譜を残して去り、エンケンは濃密な3年間を振り返るボックスを
出して更に前進する。
思えば私が一番熱心にエンケンを聴いたのが90年代であった。過去のカタログが
CD化されて一通り揃ったというのが大きかった。それと91年に出た2枚組の
ライブ盤「不滅の男遠藤賢司バンド大実況録音盤」に感動した、というのもある。
大して音のよくないライブ盤であったが、「何でこんな音質の悪い盤を出すの?」という
疑問を遥かに超える演奏の熱量にヤられたのだ。
過去盤のカタログが揃い、ディスコグラフィーを振り返って10年ほどスタジオ録音の
アルバムが出ていないことを知り、「これはライブに行くしかない」と思い私にしては
珍しく何度か演奏を見に行った時期でもある。
今回も過去の3つのボックスと同じく9枚のCDと1枚のDVDで構成される。前回の
ボックスにも同趣向のCDがあったが今回もエンケンが一人で数々の曲を録音した
盤がある。4年後に名盤「夢よ叫べ」に結実する名曲の数々を聴くことができるのが
嬉しい。他にも21世紀になってからリリースされるアルバムに収録される曲の数々が
この時期にできていたことを知り、エンケンの時間の流れの大きく緩やかな様に
感心することしきり。
ライブ盤の破壊力は今更書くまでもないが、個人的思い入れを差し引いてもトシ、
トーベンと組んだエンケンバンドは素晴らしい。地を這うように太くそれでいて
メロディアスなトーベンと、リズムキープがあまりにも人間的で(機械的でないという
意味である)フィルインを含めて前のめりにつんのめる様がロックであるトシの
ドラムスと一体となったエンケンのギターと歌は本当に素敵だ。
以前も書いたが、若手バンドに交じって轟音を出すことと、テレビの懐メロ番組に
出ることに何の違和感を感じさせることなく、期待することが違うであろう双方を
満足させるというのは凄いことである。
DVDには3曲が収録されている。そのうちの2曲は94年の代々木で撮影された
ものだが、当日私はそこにいた。『踊ろよベイビー』ではエンケンバンドの3人が
客席に降りてきてひとしきり歌うのだが、エンケンのすぐ傍にいた私が長時間
映っているのに驚いた。客席後方の高いところからの撮影をしているのは知っていたが
まさか、こんな形で当日の映像を見ることができるとは。なんだか嬉しい。(笑)
パフィーのテレビ撮影のコンサートの客席にいてテレビに映ったのもエンケンの
ライブでの映像がDVDで残されたというのも、どちらも私にとっては相応しい場に
いたことの証明であるのだなぁ。実のところ、ストーンズのブートレグ(笑)には
しっかり映っているのだが、残念(でもないか)ながらオフィシャル盤ではカット(笑)
されている。
話がそれた。この箱が網羅する3年の間にエンケンはアルバムを出していない。
そして、この3年後に「夢よ叫べ」をリリースし、以降はコンスタントにアルバムが
出続けることになる。アルバムが出ない分、全てが濃密だったということは後付け
上等で言えることができるのだが、たった3年でこの破壊力であることに驚くべき
だろう。
次のボックスも楽しみであるのは言うまでもない。
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