HARRY’S ROCK AND ROLL VILLAGE

お気に入り音楽の紹介と戯言

IT'S HARD

2015-06-19 19:57:50 | ROCK

掲載写真はザ・フーが82年に敢行した解散コンサート・ツアーから、10月13日に
シェイ・スタジアムで行われた演奏を完全収録したDVD「LIVE AT SHEA STADIUM
1982」。当日は25曲が演奏され、その全曲と前日の演奏から5曲がボーナス・
トラックとして収録されている。

この時期の演奏としては解散コンサート当日(つまりはツアー最終日)を収録した
12月17日のトロントでの演奏が「ROCKS AMERICA」としてリリースされている
他に、前日の12月16日や10月20日のシアトルでの演奏のプロショットが広く
知られている。

82年10月13日の演奏は、09年に出たDVD「MAXIMUM R&B」に2曲が
収録されていたが、今回のDVDは映像はより鮮明に、音はよりクリアになっていて
「たった6年でこんなに綺麗に生まれ変わるのか」と驚く。尤も映像の後半では
マスターに基づく「揺れ」が幾つかあるが、些細なことだ。

ケニー・ジョーンズをドラマーとして擁した時期のザ・フーは、あまり高い評価を
得ているとは言い難いのが通り相場であるが、それは前任者とどうしても比べられる
ということが最大の要因であるのは間違いないだろう。ただ、それ以外にもバンドを
取り巻く状況は極めてタフなものであったのも事実なので、ここは「あれから30数年」
ということを鑑みて暖かい目で振り返るのがファンというものだろう。

82年の解散ツアーの音源がオフィシャル商品で最初にリリースされたのは、2枚組の
ライブ盤「WHO'S LAST」であったが、アレを聴いて違和感を覚えた人は多かったのでは
ないだろうか。何故ならケニーが参加して製作された「FACE DANCES」「IT'S HARD」の
2枚のアルバムからの演奏が1曲も収録されていなかったからである。

当時のコンサートをセット・リストに忠実な形でリリースしていたら、もっと良い物が
出来たのにとは常々思っていたが、ここにまたそんな当時の状況を穴埋めする映像が
登場したというわけだ。

ロジャーの声が連日の公演のせいか少々荒れているが、それでも演奏が進むに連れて
調子を上げてくるし、厳しい表情のピートも徐々にノってくるのが如実にわかる。
今回のライブではレア曲である『TATTO』を聴くことができるのがポイントが高い処か。
それと同時にこのツアーにあって『MY GENERATION』が演奏されない日であることも
レアではある。

中盤で演奏される『DROWNED』でバンドは最初のピークに達する。この曲は
演奏の密度の高さから、ストーンズでいうところの『MIDNIGHT RAMBLER』と
同じように位置づけることができるだろう。

それにしても『WHO ARE YOU』での溌剌としたロジャーは実に素晴らしい。
この「その場でランニング」しながら歌う様こそ、これぞ「ランニング・マン」なのだが
それはまあいいか。(笑)

この日(82年10月13日)のオープニング・アクトはデヴィッド・ヨハンセンと
クラッシュ。クラッシュの演奏は08年に「LIVE AT SHEA STADIUM」として
リリースされている。クラッシュの持ち時間は50分で、CDにはオープニングのMCを
含めて当日の全てである49分の演奏が収録されていた。たった30分の持ち時間
だったとはいえ、デヴィッド・ヨハンセンの音源も世に出て欲しいものだ。

和気藹々としていればいいというものでもない。結成時から常に「バンド内競争」が
あったバンドが、更に張りつめた人間関係の中で演奏する様を多くの人に確認して
ほしいと思う。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ルーポケット | トップ | BOM DIA , ROCK N ROLL »

コメントを投稿