ギル・スコット・ヘロンが5月27日亡くなった。死因は不明で享年62歳。
ギルを取り上げるのは当ブログで3度目となるが、これが追悼記事になってしまった。
掲載写真左は70年の1ST「SMALL TALK AT 125TH AND LENOX」。
ギルは「ラップの元祖」と言われる。これは初期のフライング・ダッチマンから出た一連のアルバム、特に
デビュー・アルバムは、パーカッションをバックに言葉を乗せたものをレコードにしていた
ことからもわかる。しかし、そう呼ばれる最大の要因は、ギルが黒人であったということだ。
ブルーズを根底に持ち、裕福でなく差別の対象であった黒人が紡ぐ言葉はジャズと結びついても、
年代がずれるとは言え、白人層からなる「ビート・ジェネレーション」達が行っていた「ポエトリー・リーディング」
の後に続いたとは言い難い。
掲載写真右はブライアン・ジャクスンとの連名で76年に出した「IT'S YOUR WORLD」。
ピアニストであるブライアン・ジャクスンとの出会いは、より音楽的な方向にギルを導き、2枚組の傑作に
その魅力は結実した。この頃のギルは「黒いボブ・ディラン」と呼ばれていた。
これはアリスタを作ったクライヴ・デイヴィスのギルを売る為の戦略で、このようなキャッチ・コピーが
黒人の側から出るわけが無いということは、理解すべきだろう。
カバー・ソング100選にはポール・ウェラーが
ギルをカバーした『THE BOTTLE』を取り上げることは、構想を練り始めた早い段階で決まっていて、
いずれ記事にしようと思っていたが、思わぬ形でそれが早まってしまった。ウェラーの演奏するバージョンは
尺こそ短いが、アレンジは「IT'S YOUR WORD」にライヴ収録されたバージョンを参考にしているのだろう。
73年の「WINTER IN AMRICA」収録のオリジナル・スタジオ・バージョンは、ライブより幾分テンポは
遅いが、そちらも十分に格好良い。
THE REVOLUTION WILL NOT BE TELEVISED と、かつてギルは言った。
あの「9.11」の首謀者とされる男の殺害はテレビで大々的に報じられたのだが、まだまだ真実の
多くは闇の中なのだろう。革命は生だが、良きにつけ悪しきにつけ革命を阻止するための動きも
生だ。
現場感覚に溢れ現状の問題点を鋭く告発した、ギル・スコット・ヘロンの冥福を心から祈りたい。
らもん氏のセレクションは、個人的にも「その2枚!」という感じですね。『PIECES OF A MAN』の
ジャケは最初にギルを取り上げた際に使用したので
今回は1STにしました。
私も全作品制覇までは至っていないのですが、
ゆっくりと聴いていこうと思います。
廉価で完全対訳付きの再発を望みます。
無礼者達らもん氏が聴かせてくれたのが『Pieces of A Man』と『It's Your World』なんですよ。
『Pieces~』はリズム隊が魅力ですね。
いつか全作品を聴きたいと思ってました。
『PIECES OF A MAN』はリズム隊がロン・カーターと
バーナード・パーティーというのも魅力で、
私も好きなアルバムです。熱心なジャズのファンには相手にされていないかもしれませんが。
ストリート・パンクの女王は、ジム・モリスンの
影響が大きいとは思いますが、立ち位置は同じだと
思います。
イケダさんがギルを聴いていて、なんだか嬉しいですよ。
追悼の意を込めて聴いた『Pieces of a Man』の冒頭が、
まさに「革命はテレビで放送されない」でした。
俺がハマった切っ掛けの曲でもあります。
ピアノとギターを従えて詩の朗読をした、“ストリート・パンクの女王”も、少なからず彼の影響があるのかもしれませんね。