前々から、ほんの少しではあるものの気になっていたビリー・ブラッグとウィルコによる
「マーメイド・アベニュー」が、3枚のCDと1枚のDVDを収録したコンプリート・セッションズとして
リリースされた。
ウディー・ガスリーが39年から死去する67年までの間に書きためた膨大な歌詞の数々の中で、
曲がついていないものに新たな命を吹きこむべく、ウディーの娘のノラがビリー・ブラッグに依頼したのが
「マーメイド・アベニュー」誕生のきっかけ。ウィルコも依頼を承諾し、最初の「マーメイド・アベニュー」は
98年に、続編が00年にそれぞれリリースされた。
今回のコンプリート・セッションズは、未発表だった17曲を「VOL.Ⅲ」として1枚のCDにまとめ、
先の2枚と99年に映像で発表されたドキュメンタリー「MAN IN THE SAND」をあわせたもので
既発盤を購入した人に配慮してか、4枚組にしては低価格での発売である。
何れの過去盤も所持していなかった私は、有り難く購入したというわけである。
ビリーはギター1本でメッセージ・ソングを紡げる人なのであるが、正直なところエレキの弾き語りが
続くと辛いところもあるので、ふくよかに音を膨らますことが出来るウィルコとの録音は
今更ながら大当たりというか、よく両者が結び付いたと思わずにはいられない。
どれも単純に「フォーク」とか「カントリー」という言葉から想起するイメージとは、必ずしも一致せず
もっと重厚で尚且つバラエティーに富んだ音を楽しむことが出来る。
残念なのは、これが輸入盤えあるということだ。国内盤で4枚組とかになるとバカ高い価格設定に
なるのだろうが、歌詞が重要と言われるウディーの世界に深く踏みいるためには、対訳が
あったほうが良いのは当然だろう。幸い、読みやすいデザインのブックレットに全歌詞は掲載されているので
後は自分の努力次第なのだが。
この企画の発案者であるノラ・ガスリーはアルバムこそ
残していないが、1枚だけシングル盤を残している。父が亡くなった年である67年に出したそれは
甘美なサイケデリック・フォークというか、ソフト・ロックというか、穏やかな歌唱と絶妙のアレンジが
素晴らしい1枚。『EMILY'S ILLNESS c/w HOME BEFORE DARK』という2曲のタイトルからも
その一筋縄ではいかなさ加減(笑)が伺える。もし、この2曲と同レベルの曲が10曲そろって1枚の
アルバムになっていたら、とんでもない名盤になっていただろうと思うのは私だけではあるまい。
ウディー・ガスリーのアルバムも、そろそろ本腰を入れて
聴かなければと思う今日この頃である。
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