湯川潮音のことを最初に知ったのは映画「リンダ リンダ リンダ」を見たことによる。
タイトルになった曲もバンドも全く興味が無いのだが、高校生のバンドを描いた
「青春デンデケデケデケ」のような甘酸っぱい感覚も嫌いでない私にとっては、なんとなく
見ておくべきかなと思ったので。
「あんまりピンとこないなあ。」とか思いながらダラダラ見ていたら、『風来坊』を一人で
歌う女子高生が映って「おおっ。」と思わず身を乗り出した。それが湯川潮音であった。
私が高校生の時には細野晴臣はYMOの人という認識しかなかったし、はっぴいえんどなんて
名前は知っていたが聴いたこともなかった。それでも、もし学園祭とか文化祭のような場で
『風来坊』を歌う女子高生を実際に見たら、きっとぶっ飛んだだろうななんて想像しただけで
嬉しくなってしまった。
遠藤賢司の新作でも声を聴くことができたが、そういえばエンケンの06年のアルバム
「にゃあ」で彼女を知った人もいるかもしれない。
左の盤は08年の「灰色と私」。ロンドンでクマ原田とレコーディングしたという話も興味を
惹いたが、それ以上に自身の手になる自画像ジャケットに惹かれた。
この絵を見て、なんとなく2枚のアルバムを思い浮かべた私は「これは外さないだろう。」との
心算で手にしたのだが、全く正解であった。
暖かな声と音は私に、「いつまでも「み空」を有難がっているんじゃないよ時代は進んでいるんだよ」
と話しかけているようでもあった。因みに先の話で私が思い浮かべたアルバムはこの2枚。
趣の違うワンピース姿が眩しい10年の「クレッシェンド」のジャケットも好きだ。
洋楽好きが手にして驚くのが頭に掲載した09年の「SWEET CHILDREN O'MINE」だろう。
オアシス、ミスター・ビッグ、レディオヘッドからガンズ&ローゼズ、果てはエアロスミスなんて
ところまでカバーされているのだから。彼女のイメージからは、ちょっと遠い位置にあるような
曲が湯川潮音のスタイルでカバーされている。収録された数々の曲は、例え原曲を知らなくても
十分満足できるクオリティーのアレンジが施され、「いい曲だなあ。」と思わせてしまう
ところが素晴らしい。
ガンズ&ローゼズの『SWEET CHILD O'MINE』なんてメリー・ホプキンが歌っているかの
ようだ。
表現は悪いが間抜けな言葉で一括りに表現すると、彼女は所謂二世タレントである。
大物ミュージシャンの娘たちが何人もデビューしてはいるものの、実際のところどれだけの
才能があるのかは疑問なところもある。湯川潮音は、そういった雑音とは無関係な
ところで自身の才能とセンスの趣くがままに、活動を続けてほしいと思う。