ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

05/08/15 『覚悟~戦場ジャーナリスト橋田信介物語』から想う

2005-08-15 23:53:48 | テレビ

TBSの終戦の日スペシャルドラマということで標記のドラマをこれはと思って見る。甥ごさんとともにイラクでの取材活動中、銃撃されて亡くなったフリージャーナリストの橋田信介さんの妻幸子さんが同名の本を出版され、それを原作にして少々フィクションを入れたドラマだった。
私もこの事件の時はショックを受けた。なぜ戦闘の中で目を怪我した少年モハメドくんの目を治そうと奔走していた橋田さんが銃撃されたのか理解できなかった。しかし、その後、真面目に追っかけていたわけではないし、報道も日々に疎しとなるのがマスコミというものだから、真相を知らないままずっときていたのだった。
その後、犯人グループに接触できて真相が明らかになっていたのだ。同じ黒い車で移動していたCIAの要人たちのグループと間違われて待ち伏せされて襲撃されたのだという。襲撃後にマチガイに気づいた犯人たちは、まだ息があった甥ごさんを助けようと自分たちの車に乗せていったが、途中で亡くなったので遺体を置き去りにしたらしい。そして遺族に対して謝罪したのだというのだ。
ようやっと胸のつかえが降りた気がした。事件直後も橋田さんの信念=「人は自分たちを愛している者には銃口を向けない」というようなことを幸子さんが口にしていらしていたが、それが立証されたのだ。

それとドラマの最後、荷物を片付けていた幸子さんが夫の遺書を見つけ、遺書の最後の言葉=「月は満月になり、私の人生も円になった」に、夫は幸せな人生を送ったのだと知ることができ、その夫の遺志を引き継ぎ、モハメドくんの目を治す活動を全うしたというエンディングになっていた。
事件の直後から遺族を取材する記者で、「危険な地域に勝手に出かけてこういう騒ぎを起こした。自己責任ではないか」と避難を続ける象徴的な記者をひとり強調して配置していたが、これは当時の御用マスコミの論調を代表させていて興味深かった。人質になっていた人に対しても同様の非難が多く注がれていたことに、私はあきれはてていたのだが、このドラマの中でその論調の不気味さを描いていてよかった。

終戦の日のからみでのTV報道の中で、太平洋戦争の評価についての世論調査で「間違った戦争だった」という人が4割を越していたが、「やむをえない戦争だった」という人も3割、残りが「よくわからない」と答えたという。これはドイツの戦後の歴史教育と日本の歴史教育の違いである。ドイツは周辺諸国と相談しながら歴史の教科書を作り、ナチスの評価などかなりきちんと教えてきているのである。南京大虐殺はなかったという教科書が採用される日本となんという違いだろうか。日本でもようやく韓国や中国と共同研究が始まるという。遅きに失したとはいえ、まあこれから認識をすりあわせていく中でいろいろと見えてくるだろう。
とにかく、過去の歴史をきちんと学ばない限り、未来を正しくつくることはできないと私は考えている。

追記
1.キャストについてふれるのを忘れた。
橋田信介=柳葉敏郎 その妻幸子=財前直見 息子大介=小栗旬
3人ともなかなかよかったと思う。財前直見は北条政子できりっとしたところを好演しているし、芯の強い女性の役は適役。主役も堂々としていた。小栗旬が黒い髪で普通っぽい青年を演じていて最初気がつかなかったが、きちんと骨のある息子を演じていてよかった。
2.続けて放送された「NEWS23」の特集は良かった。
ドイツへの取材した内容もいい。先日も書いたが「ホロコースト記念碑」が今年作られたことの意義は大きい。自分たちのしたことを忘れない努力をいまだに続けているのだ。周辺国との歴史認識の違いを埋めていく共同研究所が1951年に作られ、教科書の内容是正の勧告が1976年から出されているという。戦後処理に成功したドイツと成功しているとはいえない日本。このくらいの地道な努力が必要なのだ。さあ日本でこれだけのことができるだろうか。政府にそれだけのことをさせる国民の意識の高まりが必要なのだ。今度の選挙の争点は「郵政の民営化」だけではないはずなのだが...。

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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
み・・、見逃してしまった(涙 (くーみん)
2005-08-16 13:15:46
これ、楽しみにしていたのに、見逃してしまいました(涙)。いい作品だったようで、いずれ再放送あるでしょうね(期待)。

ケーブルでも、戦争をテーマにした映画、ゾクゾク放映されています。昔の白黒の「戦艦大和」なんて、よかったです、とても。

実際、戦争にいった人たち、経験した人たちが作っているからなんでしょうね。



また昨日見た、「エンド・オブ・オール・ウオーズ」、いい映画だなあと思いながら見ていたら、これ、実話だったんですね~~~(驚)。

英軍と日本軍のふたりが共に牧師と僧侶となり、55年後に再会した映像が最後に流れました。



今年「大和」がまた制作されるとのことですが、しっかりとした反戦の気持ちがないと、ただ雰囲気に流されるだけの作品になってしまいます。

戦争を知らないスタッフや俳優が作るのだから、どうなることやら・・・・・。

しっかり腰をすえて、作っていただきたいと思うのですが。

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「戦艦大和」の惨めな最後 (ぴかちゅう)
2005-08-16 20:27:52
父のすぐ上の兄が海軍に徴兵され、「戦艦大和」の護衛の巡洋船に乗っていて沖縄沖に沈んでいます。父の実家には水平姿のその伯父の遺影が飾ってあったし、その話をきいて育った私は「戦争は嫌だ」と思うようになったんですよ。

「戦艦大和」の乗組員の士官さんたちの記録はだいぶ美化されているようです。生き残った二等兵の方の話をききとって語りきかせをされている方がいて、その話をきくと、本当に惨めな最後だったようです。どうも前者の美化された話をもとにした映画化ではないかと危惧しています。

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見逃しました(悔)! (こやま)
2005-08-16 20:46:07
事前には、ぜったい見るぞ!と思っていたのに・・・。

ぴかちゅうさんのところへきて、見逃したことに気付きました(←遅すぎる)



この事件は、報道番組を片っ端から録画するくらい追いかけていました。

終わりは、いつものことながら大きいニュースに掻き消されていきました。



こういう当事者が語るドラマって、とても大事だと思います。

そして、それを理解した上で、きちんと演じてくださる役者さんも。

・・・再放送してくれないかなぁ。
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