再演の『モーツァルト』を帝劇で昼の部、井上芳雄ヴォルフバージョンで観てきた。プログラムを買わなかったのが失敗。7~8月公演だが、すでに舞台写真も入ってる。見本を見たのに前回買ったはずだからとケチ根性を出したのがいけなかった。家に帰ったら初演のそれも最初の月の日生劇場で舞台写真なしの分を買ってしまって後悔したのを思い出した。翌月の帝劇で買った友人に借りてカラーコピーしたのだった。海外の舞台の写真も載っているし、よし今回は買うぞ。
コロレド大司教の歌う歌に♪「この私を笑い見下した男(=ヴォルフガングのこと)が今、完璧に進化を遂げた」♪というくだりがあるが、まさにプリンシパルだけでなくアンサンブルキャストまで力をつけて進化を遂げていた(小藤田千栄子氏の評論でも同様の指摘をしていたが)。まあ、完璧とまではいかないと思うけど(笑)
ストーリーは広く知られているので、今回は省略。キャスト評を中心に書く。
ヴォルフガング・モーツァルト=井上芳雄
前回の公演以降、レイアティーズ役で蜷川幸雄に絞られた『ハムレット』、『ミス・サイゴン』、亜門版『ファンタスティックス』を観ているが、彼の成長ぶりをずっと見守ってきた。もともと『エリザベート』のルドルフ皇太子でデビューした時のプリンスイメージの殻を壊して幅を広げて欲しいと思ってきたが、今回のヴォルフは一皮剥けた感じだ。芝居も歌もぐっとワイルドさが増し、役を自分のものにした感じがした。しかし「残酷な人生」などシャウトで終わる2曲は最後、声が割れてしまった。ここはやはり中川くんの本領発揮になるだろう。
コンスタンツェ=木村佳乃(8月キャストで初役)
昨年11月の『幻に心もそぞろ狂おしのわれら将門』の桔梗役の時も思ったが芝居はけっこういい。その目が見開かれる時など顔の表情も豊か。芝居の延長部分の歌もまあいい。初役とはいえ、歌い上げていくところはまだまだミュージカル女優のレベルではない。ボイストレーニングの如何で今後が決まると思う。
ヴァルトシュテッテン男爵夫人=香寿たつき(8月キャストで初役)
初役だが歌は久世星佳よりもうまくて安心して聞くことができた。「星から降る金」などは声をころがしてくれるところもあり余裕を感じた。この役は持ち役にしていってほしい。
ナンネール(ヴォルフガングの姉)=高橋由美子
『SHIROH』の寿庵が一番のはまり役だと思うが、次にはこのナンネール役がいいと思う。弟と一緒にはしゃぐシーンがいい。ヴォルフの子ども時代、若者時代を一緒にいる場面で弟に劣らず活発な少女らしさ、娘らしさが出ている。だから後半の♪「もし私が男なら音楽を続けた」♪という歌詞がこの時代の女性への束縛から受ける悲しみがくっきりと対比されていいのだ。弟との場面、父との場面、三人の場面のハモリを女声は彼女ひとりで支えきる歌唱力は素晴らしい。
レオポルト(ヴォルフガングの父)=市村正親
もみあげも追加して厳格な父親風をより強調しているようだ。初演で父親役を初体験したようだが、続くテヴィエ役でも父親役をつとめ、父親役が板についている。「心を鉄に閉じ込めて」などのソロもいいし、娘とのデュエットなどはしみじみしてしまう。一方、息子の鼻をつまみあげたり、小芝居部分での遊びも出てきて私のようなファンは嬉しい。
コロレド大司教=山口祐一郎
登場からびっくりした。ダイエットしたようだ。頬に少し影ができていた。来月の『エリザベート』のトート役に向けてしぼっているのだろう。馬車からトイレ休憩の場面のコメディの芝居がまた念が入ってきて、おかしさを増した。傲慢な場面とのメリハリがよい。歌い上げる場面はもう迫力だし!これはまずい、山口トートの日のチケットとっていないのをちと後悔。
シカネーダー=吉野圭吾
劇場支配人らしく?、華やかな場の支配力がある。居酒屋の歌って踊ってのシーンもいいが、フランス革命の影響を受けてウィーンの民衆が声を上げる場面で先導して歌うところがもっといい。「大衆のためのオペラを、ドイツ語で」と『魔笛』の作曲をヴォルフに依頼し、あの名作が生まれる。初演でこの場面を見て「次、アンジョルラス役がくるぞ」と思ったら案の定だった。ところがアンジョの声域は合わないみたいで次はなかった。やはり低い地声の声域を活かした役の方がいい。『SHIROH』の板倉重昌も絶品だったし。
次は8/21の昼の部でいよいよ中川晃教バージョンを観劇予定。
写真は、東宝のHPの舞台写真より。
コロレド大司教の歌う歌に♪「この私を笑い見下した男(=ヴォルフガングのこと)が今、完璧に進化を遂げた」♪というくだりがあるが、まさにプリンシパルだけでなくアンサンブルキャストまで力をつけて進化を遂げていた(小藤田千栄子氏の評論でも同様の指摘をしていたが)。まあ、完璧とまではいかないと思うけど(笑)
ストーリーは広く知られているので、今回は省略。キャスト評を中心に書く。
ヴォルフガング・モーツァルト=井上芳雄
前回の公演以降、レイアティーズ役で蜷川幸雄に絞られた『ハムレット』、『ミス・サイゴン』、亜門版『ファンタスティックス』を観ているが、彼の成長ぶりをずっと見守ってきた。もともと『エリザベート』のルドルフ皇太子でデビューした時のプリンスイメージの殻を壊して幅を広げて欲しいと思ってきたが、今回のヴォルフは一皮剥けた感じだ。芝居も歌もぐっとワイルドさが増し、役を自分のものにした感じがした。しかし「残酷な人生」などシャウトで終わる2曲は最後、声が割れてしまった。ここはやはり中川くんの本領発揮になるだろう。
コンスタンツェ=木村佳乃(8月キャストで初役)
昨年11月の『幻に心もそぞろ狂おしのわれら将門』の桔梗役の時も思ったが芝居はけっこういい。その目が見開かれる時など顔の表情も豊か。芝居の延長部分の歌もまあいい。初役とはいえ、歌い上げていくところはまだまだミュージカル女優のレベルではない。ボイストレーニングの如何で今後が決まると思う。
ヴァルトシュテッテン男爵夫人=香寿たつき(8月キャストで初役)
初役だが歌は久世星佳よりもうまくて安心して聞くことができた。「星から降る金」などは声をころがしてくれるところもあり余裕を感じた。この役は持ち役にしていってほしい。
ナンネール(ヴォルフガングの姉)=高橋由美子
『SHIROH』の寿庵が一番のはまり役だと思うが、次にはこのナンネール役がいいと思う。弟と一緒にはしゃぐシーンがいい。ヴォルフの子ども時代、若者時代を一緒にいる場面で弟に劣らず活発な少女らしさ、娘らしさが出ている。だから後半の♪「もし私が男なら音楽を続けた」♪という歌詞がこの時代の女性への束縛から受ける悲しみがくっきりと対比されていいのだ。弟との場面、父との場面、三人の場面のハモリを女声は彼女ひとりで支えきる歌唱力は素晴らしい。
レオポルト(ヴォルフガングの父)=市村正親
もみあげも追加して厳格な父親風をより強調しているようだ。初演で父親役を初体験したようだが、続くテヴィエ役でも父親役をつとめ、父親役が板についている。「心を鉄に閉じ込めて」などのソロもいいし、娘とのデュエットなどはしみじみしてしまう。一方、息子の鼻をつまみあげたり、小芝居部分での遊びも出てきて私のようなファンは嬉しい。
コロレド大司教=山口祐一郎
登場からびっくりした。ダイエットしたようだ。頬に少し影ができていた。来月の『エリザベート』のトート役に向けてしぼっているのだろう。馬車からトイレ休憩の場面のコメディの芝居がまた念が入ってきて、おかしさを増した。傲慢な場面とのメリハリがよい。歌い上げる場面はもう迫力だし!これはまずい、山口トートの日のチケットとっていないのをちと後悔。
シカネーダー=吉野圭吾
劇場支配人らしく?、華やかな場の支配力がある。居酒屋の歌って踊ってのシーンもいいが、フランス革命の影響を受けてウィーンの民衆が声を上げる場面で先導して歌うところがもっといい。「大衆のためのオペラを、ドイツ語で」と『魔笛』の作曲をヴォルフに依頼し、あの名作が生まれる。初演でこの場面を見て「次、アンジョルラス役がくるぞ」と思ったら案の定だった。ところがアンジョの声域は合わないみたいで次はなかった。やはり低い地声の声域を活かした役の方がいい。『SHIROH』の板倉重昌も絶品だったし。
次は8/21の昼の部でいよいよ中川晃教バージョンを観劇予定。
写真は、東宝のHPの舞台写真より。
ところで明日から韓国です。
ブログで知り合った人も一緒に参加ということがわかったとこの間おしえましたが、実は通訳の人だったのです。お母さんが歌っているので歌の方も一緒に歌うようです。
それでは行ってきます。
なんか役者さんの成長をついつい見守ってしまう母のような心境なんですよ(もっと自分の子を見守る方にエネルギーを使えって??)。8/21の中川バージョンは娘を連れて観にいきます。
★ゆき様
帝劇では本当に時間もなくて残念でした。9月の山口トートとれてないんですよ。もしも誰か行けなくなるようなことがあればピンチヒッターつとめますので、声かけてください。日曜日、はしごになっても頑張ります。
★「好きなことはやめられない」のmidori様
はじめまして。たくさんの記事にTBいただきまして、どうもありがとうございましたm(_ _)m
私もここ2~3年で歌舞伎を真面目に観るようになった初心者です。勘三郎襲名披露公演以降、歌舞伎座は毎月観てしまっていて、本家のミュージカルをおしております。NHKの「日本の伝統芸能入門」のテキストも買い込んで文楽もいいなとか思い始めて9月にデビューします。こういう広がりも人生を豊かにしてくれそうです。
また、遊びにきてください(^O^)/
以前にアップされた内容も含め、楽しく&興味深く拝見してます。
一気にTBもさせていただいちゃいました。
(^^;
歌舞伎作品のボリュームに感動しています。
これからアップを、楽しみにしています!
山口トート 私もあきらめていたのですが、朝日友の会経由でなんとか1枚GETしました(往復はがきの先着順なので 電話で問い合わせしたあと速達で出したら プロデュースセンターから「取れましたよ」と電話がきました。
エリザのチケットは私にとって 勘三郎襲名に続く激戦区でした。
私も7日が今期初で最後のM!でした。
井上くん、初演よりパワーアップしてたのは感動しました。男前になったというか、大人の男の色気を感じました。ちょっと惚れた。
山口さんのコロ司教様、飛ばしてましたねー。馬車のシーン、場面転換されたとたんに、私の周りで既に笑い声が起きてました。
しっかりみなさんに、定着してるようです。
さて、9月に向けて体調を整えねば!
エリザおたっきーの名誉に掛けて、通います!
と井上さんのヴォルフバージョン感想読ませていただき、ありがとうございました。
井上さんの歌声は、何度かライブできいているものの、舞台は「モーツァルト」がはじめてたった私。
やはりプリンスというイメージがありますが、
成長を見守るぴかちゅうさん。
なんだかとってもあったかい!!
21日のあとの中川バージョンも楽しみにしています。
★yonet35さま
>この人程「かっこいい⇔面白い」のギャップが激しくて、尚且つ楽しめる人もいないんじゃないかと…
同感です。私の説ですが、山祐さんは「人間離れした役」がはまるタイプだと思ってます。四季時代の怪人しかり、トートしかり。大司教もまあちょっと奇人ですよね。人間くさい役はなかなか自分のものにするまでに時間がかかる方のようでバルジャンも今年やっと合格を出しました。歌はいいんだけど、芝居が。それとまだ緊張している時は舞台の上での表情が硬い。目のところに力が入って薄目状態です。バルジャンも初演時はずっと薄目状態。レット・バトラーもそうだったなあ。でも歌はすごいです。麻薬声です。
★あいらぶけろちゃん様
初めてのトラックバック、光栄です。私がそそのかしたのでしたっけ、中川バージョンの観劇。「半日お子さんを捨てて」って(笑)、でも捨てられなかったのね。
9月は初の文楽、『エリザベート』、歌舞伎座、『天保十二年のシェイクスピア』。でも山口トートがとれていないんですよ。まあいいやって思ってたけど、スリムになった山祐さんにぐっときてしまい、悩み始めました。中川くんも『SHIROH』よかったんですよ。ゲキシネも全席指定で売り切れ出ているらしいので、こっちもあせってますが、DVDは買うつもりなので我慢するかもしれません。
詳細は トラックバックさせていただきました(初めてのトラックバック、やりかたがわかるまでにも2~3日要してます)
7月も山口祐一郎さんのトイレ休憩の場面が最高でした。この人程「かっこいい⇔面白い」のギャップが激しくて、尚且つ楽しめる人もいないんじゃないかと…最近思っています。
エリザベートは山口トートしか観たことはないのですが…観ると「最後のダンスは俺のもの~」の歌声が1週間くらい耳にこびりついて離れませんでした。