ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

05/08/07 『モーツァルト』井上芳雄ヴォルフバージョンの感想

2005-08-10 02:32:00 | 観劇
再演の『モーツァルト』を帝劇で昼の部、井上芳雄ヴォルフバージョンで観てきた。プログラムを買わなかったのが失敗。7~8月公演だが、すでに舞台写真も入ってる。見本を見たのに前回買ったはずだからとケチ根性を出したのがいけなかった。家に帰ったら初演のそれも最初の月の日生劇場で舞台写真なしの分を買ってしまって後悔したのを思い出した。翌月の帝劇で買った友人に借りてカラーコピーしたのだった。海外の舞台の写真も載っているし、よし今回は買うぞ。

コロレド大司教の歌う歌に♪「この私を笑い見下した男(=ヴォルフガングのこと)が今、完璧に進化を遂げた」♪というくだりがあるが、まさにプリンシパルだけでなくアンサンブルキャストまで力をつけて進化を遂げていた(小藤田千栄子氏の評論でも同様の指摘をしていたが)。まあ、完璧とまではいかないと思うけど(笑)

ストーリーは広く知られているので、今回は省略。キャスト評を中心に書く。

ヴォルフガング・モーツァルト=井上芳雄
前回の公演以降、レイアティーズ役で蜷川幸雄に絞られた『ハムレット』、『ミス・サイゴン』、亜門版『ファンタスティックス』を観ているが、彼の成長ぶりをずっと見守ってきた。もともと『エリザベート』のルドルフ皇太子でデビューした時のプリンスイメージの殻を壊して幅を広げて欲しいと思ってきたが、今回のヴォルフは一皮剥けた感じだ。芝居も歌もぐっとワイルドさが増し、役を自分のものにした感じがした。しかし「残酷な人生」などシャウトで終わる2曲は最後、声が割れてしまった。ここはやはり中川くんの本領発揮になるだろう。

コンスタンツェ=木村佳乃(8月キャストで初役)
昨年11月の『幻に心もそぞろ狂おしのわれら将門』の桔梗役の時も思ったが芝居はけっこういい。その目が見開かれる時など顔の表情も豊か。芝居の延長部分の歌もまあいい。初役とはいえ、歌い上げていくところはまだまだミュージカル女優のレベルではない。ボイストレーニングの如何で今後が決まると思う。

ヴァルトシュテッテン男爵夫人=香寿たつき(8月キャストで初役)
初役だが歌は久世星佳よりもうまくて安心して聞くことができた。「星から降る金」などは声をころがしてくれるところもあり余裕を感じた。この役は持ち役にしていってほしい。

ナンネール(ヴォルフガングの姉)=高橋由美子
『SHIROH』の寿庵が一番のはまり役だと思うが、次にはこのナンネール役がいいと思う。弟と一緒にはしゃぐシーンがいい。ヴォルフの子ども時代、若者時代を一緒にいる場面で弟に劣らず活発な少女らしさ、娘らしさが出ている。だから後半の♪「もし私が男なら音楽を続けた」♪という歌詞がこの時代の女性への束縛から受ける悲しみがくっきりと対比されていいのだ。弟との場面、父との場面、三人の場面のハモリを女声は彼女ひとりで支えきる歌唱力は素晴らしい。

レオポルト(ヴォルフガングの父)=市村正親
もみあげも追加して厳格な父親風をより強調しているようだ。初演で父親役を初体験したようだが、続くテヴィエ役でも父親役をつとめ、父親役が板についている。「心を鉄に閉じ込めて」などのソロもいいし、娘とのデュエットなどはしみじみしてしまう。一方、息子の鼻をつまみあげたり、小芝居部分での遊びも出てきて私のようなファンは嬉しい。

コロレド大司教=山口祐一郎
登場からびっくりした。ダイエットしたようだ。頬に少し影ができていた。来月の『エリザベート』のトート役に向けてしぼっているのだろう。馬車からトイレ休憩の場面のコメディの芝居がまた念が入ってきて、おかしさを増した。傲慢な場面とのメリハリがよい。歌い上げる場面はもう迫力だし!これはまずい、山口トートの日のチケットとっていないのをちと後悔。

シカネーダー=吉野圭吾
劇場支配人らしく?、華やかな場の支配力がある。居酒屋の歌って踊ってのシーンもいいが、フランス革命の影響を受けてウィーンの民衆が声を上げる場面で先導して歌うところがもっといい。「大衆のためのオペラを、ドイツ語で」と『魔笛』の作曲をヴォルフに依頼し、あの名作が生まれる。初演でこの場面を見て「次、アンジョルラス役がくるぞ」と思ったら案の定だった。ところがアンジョの声域は合わないみたいで次はなかった。やはり低い地声の声域を活かした役の方がいい。『SHIROH』の板倉重昌も絶品だったし。

次は8/21の昼の部でいよいよ中川晃教バージョンを観劇予定。

写真は、東宝のHPの舞台写真より。