ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

05/05/24『レ・ミゼラブル』2000回記念公演--感想その2

2005-05-27 23:58:50 | 観劇
今日は、アンジョルラス=岡幸二郎の感想を書く。
ジャベールでの千秋楽前の木曜日に体調をくずしてカテコにも出られずに救急車で入院。金曜土曜はもともと休みで日曜日に無事出演、ファンを安心させた。並行してスペシャルバージョンの稽古があったのだろうから大変だったと思う。しかし、やはり声が出ているうちは出演するのがプロというものだろう。5月22日のNHKスペシャル「森光子『放浪記』大いなる旅路」で、森光子が肺炎で代役を立てられそうになった時の話が出てきた。ドクターが「この人は降板させると病気が悪くなる」と言ってくれて、入院しながら毎日舞台に立っていたとのこと。役を放したくなかったし、もし代役の人がやるならやってみたんさいと思ったという。舞台人たる者、体調が不調で舞台がつとめられるかどうかは最終的に自分で判断するべきだろう。
『月刊ミュージカル』で岡はインタビューで印象に残ったエピソードで鹿賀丈史がバルジャンで出ていた時の公演で体調が悪かった時に「客席にはわからないように上手い具合にお芝居に持っていかれた」と答えていた。そこで私は同じようにかなり前の『月刊ミュージカル』で鹿賀丈史が劇団四季時代に体調が悪かった大先輩に体調が悪い時は無理をしない発声方法に切り替えるなどしてでもきちんと舞台をつとめるうちに声が出てくるものだと教わったと、やはりインタビューで答えていたのを思い出した。やはり私が観た日で鹿賀丈史が風邪声で、普段の迫力はないけれどソフトに歌って全く声が出ていないという場面はなくて感心した舞台があったことも記憶している。

さて、2000回記念公演ではアンジョルラスの最初の場面の♪「築け今バリケード」♪がまずキマる。今回は短めの茶髪で登場(その前の裁判官役の時にまずチェック済み)。「ABCカフェ」のシーンでも学生たちの中で飛びぬけて長身で細身の岡アンジョルラスが♪「今こそ時近づく 血潮がわきたつ~」♪と歌うカリスマリーダー姿に惚れ惚れしてしまう。仲間たちへの指示も堂々としていて、マリウスの初恋の話には眉をひそめ、それに共感してからかうグランテールを睨む時はちょっとコワイくらいだ。♪「マリウスわかるけれど僕らにゃ大きな使命があるのだ 自分のことより民衆のために前進する時だ」♪と説得し、ラマルク将軍の死を知ると葬式の日の蜂起を決め、街に宣伝に繰り出す。♪「戦う者の歌がきこえるか~」♪その街の人々に笑いかける笑顔が絶品だった。コワイ顔と笑顔の両方が魅力的なのだ。
そして1幕ラストの「ワン・デイ・モア」で赤いチョッキ姿で銃を掲げて♪「嵐の日まで あともう一日~」♪で登場。彼を先頭にした隊列が行進のステップを踏む。ここまでカッコよくキマるのが岡幸二郎なのだ。同性でもカッコよさにしびれて思想はどうあれ、ついていってしまう者が少なくないと思わせる(グランテールなどはその代表だ)。
二幕冒頭も同じ隊列の行進のスローモーションから始まるが、その先頭がアンジョルラス。砦の上で赤い旗を振ってたてこもり開始。そこでのリーダーぶりもいいし、エポニーヌの死を皆と見守ってから、精神的ダメージが大きいマリウスを気遣って休ませたり、グランテールがこの蜂起に意味があるのかと歌うとここでもこわく睨むし、学生仲間との関係もくっきりさせている。♪「死のう僕らは 敵などおそれはしない 立つのだ仲間よ 自由を世界に」♪と最後にまた赤い旗を振って先頭を切って撃たれて死んでいく。その姿に戦闘に参加せずにいたグランテールが砦に駆け上がり、旗の代わりに酒瓶を振って撃たれて死んでいく。ホント、後追い自殺のようだ。

1994年から2001年の公演までアンジョルラスを演じ、本当に好きな役でこの役と出会わなかったら今の自分はないという。2000回公演の前日には降板を迫られたと彼のブログに書いてあった。それを断っての出演。だから最後の特別カーテンコールでは涙で声をつまらせて短めのコメント。「改めてこの作品が好きなんだな、と実感しました」に観ているこちらもじーんとくる。もし今回のスペシャル公演で岡アンジョルラスの姿がなかったら、これほどの満足感はなかっただろう。
ありがとう、岡アンジョルラス!

そうそう、最後の「結婚式」場面でのウェイターも気合が入っていた。森久美子とのにらめっこも花束キャッチも楽しかった。というかご本人が一番楽しんでいそうだった。シリアスとコメディの両方がいけるところも魅力的なのだ。