埼玉の視覚障碍者の盲導犬、オスカーが電車の中で刺される事件が起きた。盲導犬は、何が起きてもご主人への奉仕を怠らないように訓練さ
れてる。
今回犬の服を剥いで鋭利なもので数度刺しているので、かなり意識的であると思われる。これに耐えた、というより人への服従を訓練されている盲導犬は、一層哀れである。大量の出血しながらも、声もたてず使命を全うしている。
事件が7月28日であるから、一月経っての公表である。公開された傷跡は、痛々しいが既に治癒の経過をたどっている。極めて卑劣な許しがたい犯行である。
盲導犬や介助犬などの、公共機関など国民の対応を規定した、「身体障害者補助犬法」が2年前に成立している。
然しそこには、犬への規定はない。障害者にとって、盲導犬などは目であり伴侶であるが、実際は同体のように思われている障害者が少なくはない。今回の方も、全盲でオスカーとは7年も一緒である。
盲導犬や介助犬を、動物虐待という方も少なくはない。自分の意思や欲望などを押し殺して、障害者に服従するのである。補助犬への異論も一理あるが、今回の事件はそんな思慮があるとは思えない。犬嫌いの衝動的な事件と思われる。むしろ動物虐待とみるべきである。あるいは傷害事件としたいところでもある。
この事件がなぜ、一月も経って公表されたかわからない。が、もう一つの問題が、事件は「器物損壊」として扱われることである。日本の法律では、動物は物である。
例えば、4人乗りの車に大型犬10匹乗せても、重量制限にかからなければ違法ではない。最愛のペットを誘拐し身代金を請求しても、盗難であって誘拐事件とはならない。
補助犬法でも、施設利用などで犬は障害者の一部と扱われてはいるが、犬が刺されても人の一部が刺されたとはならない。法律はそこまで規定はしていない。
今回の障害者もやりきれない思いであろう。
今回の事件は、大きく扱われたが、盲導犬に対する無理解や、犬嫌い人たちによる、タバコの押しつけやしっぽを踏むや焼けるなどの蹴るなどの、嫌がらせや傷害事件は絶えず発生している。
繋がれたままの犬、炎天下に晒されたままの犬、毛を梳いてもくれない汚れた犬、畜主の都合で暴行対象となる犬など、程度の差はあれ日常的に犬への虐待は起きている。盲導犬はペットと異なり、より一層人に近い動物である。こうした事件は人の心がすさんでいるから起きるのである。残念でならない。