パソコン画面上でドラマが展開するという新機軸で注目を集めたサスペンススリラー「search サーチ」のアニーシュ・チャガンティ監督が、母親の娘への歪んだ愛情の暴走を描いたサイコスリラー。郊外の一軒家で暮らすクロエは、生まれつきの慢性の病気により、車椅子生活を余儀なくされていた。しかし、前向きで好奇心旺盛な彼女は地元の大学への進学を望み、自立しようとしていた。ある日、クロエは自分の体調や食事を管理し、進学の夢も後押ししてくれている母親ダイアンに不信感を抱き始める。そして、クロエの懸命な調査により、ダイアンが新しい薬と称して差し出す緑色のカプセルが、けっして人間が服用してはならない薬であるということが判明してしまう。クロエ役をオーディションで抜擢された新人女優キーラ・アレン、母ダイアン役をドラマシリーズの「アメリカン・ホラー・ストーリー」のサラ・ポールソンがそれぞれ演じる。(映画.comより)
<2021年6月20日 劇場鑑賞>
「search」は見てないんです。つい機会を逃してしまって。しかし、今回の「母の狂気」は、題材としては目新しいものではないと思います。過去にも「いい母親と言われたい症候群」の母親を描いたものはいくつもあるし、とにかく”自分だけのものを得たくて自由を奪う”というのは定番で、愛する女性の手足を奪ってしまった「ボクシング・ヘレナ」(古すぎ)など、優位に立つ人物が相手を支配しようとするのは世の常だから、話の展開自体に驚きはありませんでした。まだそんなに前ではない「ルイ 9番目の人生」とか、思い出しました。サラ・ガドンが可憐できれいだったなぁ。ちょっと霊感が入るこの映画は、”被害者であるはずの子供が、そのうち母親の期待に応えようとして自らを傷つけようとする”という事実に衝撃を受けたのでした。冷静に考えると、自分だって親の期待に応えようと顔色を見てがんばったし、子供ってみんなそうなんだと気づくのですが。
体の弱い娘のため、庭でオーガニックの野菜まで作って料理してくれる理想の母親。勉強だってみてくれます。大学に入ろうかというこの歳まで、何の疑いもなく母を信じてきた娘。スマホは与えられていません(パソコンはある)。勉学優秀な娘は(母もとてもお勉強のできる人なのだ)すぐに調べ物ができるスマホを欲しがっていますが、母は与えません。
でもまぁ、いつまでも世の中をごまかせるわけはないですよね、大人になってくるのですから。ましてやこんなに頭のいい子。で、徐々に「おかしいな」と思い始めた娘と、なんとしても娘を手放したくない母親との攻防が始まります。娘は足が動かないから車椅子が手放せないし、心臓も悪くてよく呼吸困難になる。しかも、世間は”よくできた母親”と思っているから、あんまり騒ぐと自分が悪者になってしまう。ここが難しい。下手をすると、娘に精神科の病名がつけられ、精神科病棟に半監禁なんてことにもなりかねない。つい心の中で必死に娘を応援してしまいました。
しかしながら、予想外の反撃にうろたえた母親は、少しづつボロを出し始めます。こうなるとアセった方が負けですね。映画として妥当な結末となります。
母親役がサラ・ポールソン。私は「オーシャンズ8」で気が付いたのですが、その後は「mr.ガラス」にも出ていましたね。後で気づいたのですが、「キャロル」でケイト・ブランシェットの女友達をやってたのが彼女だったのですね。今回の映画では熱演でした。娘役は全然知らない若手でしたが、キエラ・アレンというそうで、これからが楽しみです。