田舎に住んでる映画ヲタク

「映画大好き」の女性です。一人で見ることも多いけれど、たくさんの映画ファンと意見交換できればいいなぁと思っています。

アイヒマン・ショー 歴史を映した男たち(The Eichmann Show)

2016年06月18日 18時29分42秒 | 日記

The Eichmann Show movie poster image

 ナチスドイツによるホロコーストの実態を全世界に伝えるために奔走したテレビマンたちの実話を、テレビドラマ「SHERLOCK シャーロック」のワトソン役で知られるマーティン・フリーマン主演により映画化。1961年に開廷した、元ナチス親衛隊将校アドルフ・アイヒマンの裁判。ナチスのユダヤ人たちに対する蛮行の数々とはどういうものだったのか、法廷で生存者たちから語られる証言は、ホロコーストの実態を明らかにする絶好の機会だった。テレビプロデューサーのミルトン・フルックマンとドキュメンタリー監督レオ・フルビッツは、真実を全世界に知らせるために、この「世紀の裁判」を撮影し、その映像を世界へ届けるという一大プロジェクトを計画する。プロデューサー役をフリーマン、ドキュメンタリー監督役をテレビシリーズ「WITHOUT A TRACE FBI 失踪者を追え!」のアンソニー・ラパリアがそれぞれ演じる。監督は「アンコール!!」のポール・アンドリュー・ウィリアムズ。(映画.comより)

 

 

 

 最近マーティン・フリーマンががんばってますねぇ。なんかよく見かけると言うか。ついこの前も「シビルウォー」でふいに見かけたような気がする(笑)。

さて、この作品はかのハンナ・アーレントも傍聴したという、世紀の「アイヒマン裁判」をなんとか世界中に配信するために奔走したテレビプロデューサーたちの奮闘を描いたものです。もちろん、1960年代初頭ですから、今のような素早い配信はあり得ません。いちいち録画・編集し、世界中に郵便で送るのです。もちろん時間差は生じますが、そこを少しでも短く、なるべく素早く世界中の人々に真実を伝えようとしたテレビの裏側の人たち。お国はイスラエルですから(どこでもそうだったのかもしれませんが)、撮影許可などなかなか下りません。カメラが見えるとダメだとかね。それで、マーティンたちはカメラを壁に埋め込むのです。「裁判所の壁をぶち抜いてもいいのか」と、少し怪訝には思いましたけれど、よかったのでしょうね(笑)。

映画自体は「スポットライト」と同じくらい地味です。また彼の裁判が長いんです。最初こそ物珍しさで視聴率は取れますが、延々と続く読み上げなどが何日も続き、人々は見なくなります。当たり前ですよね、きっと私でもそうなります。それが、俄然視聴率が上がるようになったのは、やはり生き残った人々の生々しい証言が始まったからです。悲惨すぎて聞いていられません。映画なのに、気分が悪くなりそうでした。証言の後、失神する人まで現れます。本当に、本当に、同じ人間どうしで、これだけのことをできるのだろうか、今の時代に生きる私には信じられません。でも、歴史は現実ですものね。

アンソニー・ラパリアは、「いくらアイヒマンでも表情くらいは変わるはず」と信じて顔のアップを映し続けます。マーティンが「全体を」と言っても聞きません。衝突する二人。しかし、アイヒマンの表情はほとんど変わらずじまいだったのです。そういえばそうでしたね。少し前に「ハンナ・アーレント」を見たときは、ハンナの人生は主軸だったためにそこに気づかなかったけれど、そういえば「スペシャリスト」で実録を見たときも淡々としていましたね。まぁ言ってみれば、本人は「命令に従っただけで、私がやらなかったら他の誰かがやっていただろう」くらいに思っているのですから、当たり前かもしれません。

歴史的事実は皆が知っているので書きますが、結果的には「命令に従っただけ」と罪を認めようとしなかったアイヒマンも、ある証言で「助言した」(提案した、だったかも)と発してしまうのです。自発的な関与を認めてしまったアイヒマンはお縄となるのですが、だからといって何が後味がいいものでもありません。地味だけど、なんともつらい映画でした。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする