「シュリ」のハン・ソッキュと「哀しき獣」のハ・ジョンウが共演し、韓国で700万人を動員する大ヒットとなったスパイアクション。「相棒 シティ・オブ・バイオレンス」「生き残るための3つの取引」などアクション作品で人気のリュ・スンワン監督がメガホンをとった。北朝鮮諜報員ジョンソンは、アラブ組織との武器取引現場を韓国情報院のエージェント、ジンスにかぎつけられ、からくもその場から脱出。なぜ取引の情報が南側に漏れたのか疑問を抱くが、ほどなくしてジョンソンの妻ジョンヒに二重スパイ疑惑が浮上する。やがてジョンソン自身も巨大な陰謀に巻き込まれていき、CIAや中東諸国、ドイツの諜報機関までが事態に介入し、さまざまな思惑がベルリンで交錯する。(映画.comより)
リュ・スンワン監督と言ってもピンと来ず、なるほど「相棒」や「生き残るための・・・」は見逃してました。「生き残る・・・」は、紹介文は読みました。でも「まぁええわ」と思ったのを覚えています。
それより、久しぶりのハン・ソッキュと、「チェイサー」で戦慄さえ覚えたハ・ジョンウの共演ということに惹かれました。私なんかはもろハン・ソッキュ世代。引退後復帰したのかしら?のシム・ウナなどと共に、ありとあらゆる映画を見ました。それこそ自殺者を出した「スカーレット・レター」までね。そういう意味ではアン・ソンギよりたくさん見てるかも。
さて、映画です。舞台はベルリン。私は行ったことないのですが、いまだに分裂の面影を色濃く残す、独特の街らしいですね。冒頭、北朝鮮のスパイ、ハ・ジョンウが暗号を読み解きながら取引現場に向かいます。そしてそれをハイテクを駆使して追う南のスパイ、ハン・ソッキュ。これをあらゆる角度からシャープに、しかしぶつ切りに、スタイリッシュな音楽と共にパッ、パッと映し出します。これは若い人にはウケるのかもしれませんが、私は「勘弁してよ~」と思いました。カッコよく見えて実はわかりづらい。それに技術としては見飽きたものです。「年寄りが」という批判を承知で書かせてもらうと、ここでいったん萎えました(笑)。
しかし、物語は思ったより複雑で、北朝鮮がロシア人ブローカーを介してアラブ系組織に武器を売ろうとしていて、それを南のハンが監視していたわけですが、もう少しのところでイスラエルのモサドが現れ、その取引をブチ壊す・・・そんな展開になります。ややこしいですね。
ハン・ソッキュはハ・ジョンウを取り逃がし、ハ・ジョンウはジョンウで「なんでバレてるんだ」と、内通者の存在を疑います。
ジョンウには大使である上司がいて、彼には秘書兼通訳の若い美人女性部下がいます。彼女が「猟奇的な彼女」のチョン・ジヒョンですね。彼女はジョンウの妻で、夫婦で「Mr. and Mrs.Smith」してるわけです(味方同士ですが)。上司も、彼女が既婚であることを知りながら、性の接待を命じもし、北のスパイの怖さを思い知らされます。
さて、ジョンウは今まで立派な功績を残しているので、母国ではヒーローです。しかし、今回どこかに裏切り者がいると言うことで、母国から後輩が送られて来ます。彼はヒーローであるジョンウを「兄貴」と慕ってはいますが、どうにも胡散臭そうです。
ハン・ソッキュはソッキュで、「やり方が古い」だの何だのと言って、これまたよくある話ですが、若いエリート(には見えなかったけど・笑)に疎んじられています。
そんなこんなで、あらゆる人が入り乱れて、もう誰が誰なのか、誰が信用できるのか(妻でさえ怪しい)、まったく見当がつかないまま、主人公ジョンウは追い詰められていきます。そして、それはハン・ソッキュも同様です。
この話、結局はどうなるのか、妻は?後輩は?
後半は、もう体力勝負です。やられてもやられても起き上がるジョンウの強靭さ。さすがに鍛え上げられたスパイですね。見ているこちらが疲れてしまうほどです。
そして、すべてが明らかになっても・・・物事は、なるようにしかなりません。必ず悪が裁かれ、誠意が報われるわけではないのです。現実はそうだろうけれど、やっぱりあんまり度が過ぎると、見ているこちらも愕然としてしまいます。それは「チェイサー」でもそうだったけれど。
ラストは微妙ですね。一体どういう意味なのか。
<ここからネタバレかも>
このラストは、どういう意味なのか。単に「続編を作る予定ですよ~」という布告なのか。あるいは、主人公は、すべてのことを最初からわかっていて、2時間も見せられたあの顛末は、予定調和だったってことなのか。
個人的にはよくわからないラストでした。考えすぎかもしれません。でも、あれではハン・ソッキュの善意は・・・。すべては最初から彼(ジョンウ)に踊らされていたのか。単に、他に生きるすべを知らないからか。
よくわからないです。これも、韓国映画の特徴なのかもしれませんね。