オスカー俳優ダスティン・ホフマンが、『戦場のピアニスト』などの脚本家ロナルド・ハーウッドによる戯曲を映画化した初監督作。老人ホームで暮らす元音楽家たちが、ホームの存続のために復活コンサートに挑む姿を描く。出演には、2度のオスカー受賞を誇るマギー・スミスをはじめ、トム・コートネイ、ビリー・コノリー、ポーリーン・コリンズらイギリスを代表する名優が集結。ジュゼッペ・ヴェルディ、ヨハン・セバスチャン・バッハなどの名曲に乗せてつづられる笑いと涙の人生賛歌に心温まる。(yahoo.映画より)
私、クラシック音楽には全然詳しくないので、こんな良作を見ても感動は半減していると思うのですが、それでも感動しました。こんなに年輩者ばかりのお話なのに、最後は涙が・・・。
舞台は、音楽家、それも名声を手にしていた人のみが入居できるという、美しい老人ホーム。田園風景が広がる、のどかで閑静なホーム。なんとも素晴らしい。うらやましさにため息が出そうでした。
しかしその実、この「ビーチャム・ハウス」は、財政難に直面していて、ヴェルディ生誕200周年を祝うガラ公演で収益を上げないと、存続の危機に!
年老いた音楽家たちは、マイケル・ガンボン演じるチーフ(?)に叱咤激励されながら、日々練習に励んでいます。
そこには、過去「リゴレット」の「美しい恋の乙女よ」で美しい四重唱を演じた仲間も3人、入居しています。生真面目なトム・コートネイ、いくつになっても女たらしなビリー・コノリー、ちょっと痴呆が入っちゃってるポーリーン・コリンズです。彼らはなんだかんだ言いながらも、平和に暮らしていたのですが、ある日もう一人の「カルテット」、つまり四重唱の最後の一人が入居してきます。これがマギー・スミス。
マギーとトムは、過去「9時間」(!)だけ夫婦だったことがあり、トムは未だ彼女を許せないでいます。気位の高いマギーも、最初は「悪かったわ。傷つけるつもりはなかったの」と言ってやりなおそうとしますが、なかなかそううまくはいきません。
ましてや、公演の目玉としての四重唱など、今は声も割れてしまうマギーにとっては考えられないこと。たちまち自分の殻に閉じこもってしまいます。
しかし、彼女を元気づけようと、お花を摘んできたポーリーンをその花束で叩いてしまったマギー、そのままポーリーンが、逃げた拍子にワゴンに当たって転んでしまう事態になったため、深く反省。結局参加することに。
そしてクライマックスへ。その楽屋で(ポーリーンに)さらりと元夫への思いを語るマギー、つい立ち聞きしてしまったトム。
同じホームの仲間が次々とオペラやアリアを披露してゆき、ついに彼らの出番。さて・・・。
<ここからネタバレ>
「結婚してください」---トムは、そっとそうつぶやいて、マギーの手を取るのでした。そして、本番の四重唱は、ホームの外からの俯瞰。美しい歌声だけが、この建物の俯瞰に重なり、ジ・エンド。うまいですねぇ、本当に。我々観客も、これほどの名優たちとなると、口パクなど見たくないもの。私も密かにそう思っていました。こんな演出があったとは!
<ネタバレここまで>
ところで、この映画は、主役の4人とマイケル・ガンボン以外は、すべて本物の音楽家たちです。軽やかに歌う風景や、楽しそうに演奏する風景などが随所に織り込まれ、さりげなく素晴らしい。もちろん、四重唱の前に出演しているお仲間も、本物たち。彼ら・彼女らは本当に楽しそうで、「人って、なにか一つ秀でていれば、老後もこんなに楽しく過ごせるのね」って感じでした。もちろん、今までの努力と苦労のたまものなんでしょうけど。
そして、本編はなんと99分。見やすい長さ。さすがにダスティン、うまくやりましたね!お勧めです。